三菱一号館美術館で「浮世絵Floating World」第2期を観てきました。
第2期の特徴、というか、圧巻なのは、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」と、歌川広重の「東海道五十三次之内」に尽きる、といっても言い過ぎではないでしょう。それまでの浮世絵では背景でしかなかった風景表現が、ここへきて浮世絵の主要なジャンルとして確立されました。
この背景には、名所図絵によって各地の風物が盛んに紹介されたことで、庶民の間に旅や行楽に対する関心が高まったことによります。また遠近感の描写や、ぼかしを使った摺の技法が進歩したことにより、浮世絵の技術革新が高まりました。これらにより、四季折々の風情を伴った名所や風俗が描き出されました。
その他に、美人画や役者絵で人気を博した歌川国貞(三代目歌川豊国)や、歌川国芳の美人絵、役者絵、名所絵、戯画など、幅広い浮世絵も世間に支持されました。
北斎・広重の登場―ツーリズムの発展
肉筆浮世絵
浮世絵Floating World これぞ浮世絵!
「はかない世の中であるならば、せめて浮かれて暮らしたい」という江戸の人々の気分を反映した浮世絵。現実とも享楽の世界とも思える“Floating World”を鮮やかに描いた浮世絵は、好奇心のまま最先端の風俗や事象を捉え、江戸の人に留まらず、19世紀には欧米の人々を魅了し、さらに現代の私たちの心をも浮き立たせる華やかな光景に溢れています。本展は、会期中2度の展示替えを行い、3期に分けて江戸から明治まで、浮世絵の誕生から爛熟に至る全貌を500点を超える作品によりご紹介します。川崎・砂子の里資料館長・齋藤文夫氏の膨大な浮世絵コレクションから、連作などの他に類例を見ない稀少性の高い浮世絵版画、肉筆画の名品を展示するとともに、浮世絵の影響を受けたロートレックをはじめとする当館所蔵ヨーロッパ近代版画を対比させ、時代や地域を越えた浮世絵の普遍的な魅力に迫ります。明治期の建物を復元した当館において、西洋建築空間で浮世絵をご覧頂くことで、19世紀欧米人が浮世絵を飾っていた室内を追体験するかのような展示空間もお楽しみ下さい。
珠玉の齋藤コレクション
Floating World
図録
発行日:2013年6月22日
発行:三菱一号館美術館
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