泉屋博古館分館で「テーマにみる近代日本画―その豊かな世界―」を観てきました。上田耕甫「蘆辺群鶴」、深田直城「海辺群鶴」、望月玉渓「梅に鴛鴦」、山口玲凞「冠鶴」の諸作は、初公開となる作品、とあります。どれだけ所蔵品があるのか、驚き隠せません。今回は、大向こうを唸らせる、これぞといった目玉作品はありませんが、出されているものすべてが「優品」ぞろいです。小林古径の「人形」、原田西湖の「乾坤再明」、東山魁夷の「スオミ」などは、今までに観たことがありますが、その他の作品は初めて観るものばかりでした。
ここに画像はないのですが、第一室に出されている故事山水(故事人物)・道釈人物画・歴史画の4点は、見事なものばかりでした。特に最初に出てくる村田香谷の「青緑西園雅集図」は、さすがは関西南画の重鎮だけあって、素晴らしい作品でした。画像は下を」クリックすると観られます。
http://www.sen-oku.or.jp/collection/col06/002.html
上島鳳山の「十二月美人」、12点揃って並べられると、圧倒されます。円山派系の美人画家ですが、花鳥・道釈人物・能などの画題や仏画も手がけたという。狩野芳崖の「寿老人」、何度か観たことがありますが、太い筆で描かれたダイナミックな絵でした。狩野派の古法に縛られることを潔しとせず、法外に出る意味で芳崖と号したという。唯一の屏風、望月玉渓の「白令毛孔雀」、典型的な花鳥画、孔雀図です。望月派の画風に四条派と岸派とを折衷した先代に軽妙洒脱な写実を加味し、蘆雁図を得意としたという。「令毛」の文字がパソコンで出ません。
平福百穂の「堅田の一休」、ほとんど墨の濃淡だけの作品です。写生的な自然な描写を得意とするだけあって、静粛のの中に敬虔な気持ちにさせる、見事の作品です。他に「夏景山水」という作品も出ていました。目玉はというと、やはり小林古径の「人形」でしょうか。墨の濃淡だけで人形のドレスを表現しています。モデルの仏蘭西人形も展示してありましたが、モデルの方がややスリムでした。
展覧会の構成は、以下の通りです。
故事山水(故事人物)・道釈人物画・歴史画
美人画・道釈人物画
故事人物画・道釈人物画・歴史画
花鳥画・静物画
山水画・風景画
花鳥画
美人画・道釈人物画
故事人物画・道釈人物画・歴史画
花鳥画・静物画
山水画・風景画
「テーマにみる近代日本画―その豊かな世界―」
日本画は「絵画」の一ジャンルですが、「絵」には、「五彩を会(あつ)めたる繍(ぬひとり)なり」の意味があり、五色の刺繍による絵模様をいいます。一方、「画」は、「方形の盾に彫飾あるいは彩飾を施す」ことを意味しています。共通することは、平面上に色彩、線描などによって何らかの視覚的な形象を表現することになりますが、中国においては、墨という優れた表現材質が生み出され、墨の濃淡、筆猫のかすれによるモノトーンの特有の水墨画が生まれ、日本に伝搬しました。近代日本画は画題、素材、表具、表現方法によって多くの区分が行われますが、今展では、所蔵品によってその多彩な絵画世界の一端をご覧いただきたいと思います。展示作品は、大きく分けますと水墨画と着彩画に区分され、画題からは、人物画(道釈人物画・美人画)、花鳥画(翎毛画・静物画)、山水画(風景画)、故実画に細分されます。水墨画と着彩画、山水画と風景画、花鳥画と静物画という対比を行うなど、柔軟な視点からの展示を試み、そこから新たな絵画の見方が見出されればと思います。なお、今回展示する上田耕甫「蘆辺群鶴」、深田直城「海辺群鶴」、望月玉渓「梅に鴛鴦」、山口玲凞「冠鶴」の諸作は、初公開となる作品であり、また、小林古径「人形」のモデルとなった仏蘭西の古人形を展示します。
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