三井記念美術館で「河鍋暁斎の能・狂言画」を観てきました。
数年前のこと、埼玉県蕨市にある「河鍋暁斎記念美術館」、知人が飛び込みで行ってきたという話を聞いたことがあります。館長の河鍋楠美さん、だと思いますが、妙齢の女性の方に丁寧に案内していただいたそうで、その時は羨まし思いました。それ以来、僕のなかで是非とも訪れたい美術館の一つになりましたが、残念ながら未だに実現していません。
河鍋暁斎、僕が最初に出会ったのは、東京ステーションギャラリーで開催された「国芳暁斎なんでもこいッ展だィ!」でした。まず、そのタイトルに驚かされ、そしてそこで観た「新富座妖怪引幕」には度肝を抜かれました。明治13年6月30日、酔っぱらった後の暁斎は幅17メートル、高さ4メートルの大きな引幕をわずか4時間で仕上げたそうです。人気役者を「百鬼夜行絵巻」の一場面に見立てて描かれたもので、おどろおどろしい迫力です。それ以降、「暁斎展」があると聞くと、成田山へ行ったり、三島の佐野美術館へ行ったりしました。
ジョサイア・コンドルは、明治のお雇い外国人で、工部大学校造家学科で、日本人初の本格的西洋建築家を育てました。また、工部大学校を退いてからは、三菱1号館やニコライ堂、鹿鳴館や岩崎邸等々、明治を代表する建築を設計したことで知られています。そのコンドルが、絵師川鍋暁斎に師事していました。再三入門を断られましたが、なんとか押し切って明治14(1881)年に弟子入りし、その後は熱意あふれる態度から師より「暁英」の号を受けています。明治22(1889)年の暁斎没後も、コンドルは長年かけて師の仕事をまとめ、明治44(1891)年、「Painting and Studies by Kawanabe Kyosai(川鍋暁斎の絵と習作)」を出版し、広く海外へ紹介しました。
今まで暁斎の作品は、ほとんどの展覧会では「役者似顔絵」「武者絵・風景画」「戯画・風刺画・動物画」「画稿類」「美人画」などに分けられていましたが、能や狂言については、ほとんど何も知らない僕がいうのもなんですが、「能・狂言画」というくくりでは初めての展覧会ではないかと思います。暁斎は歌川国芳の画塾で学んだ後、狩野派で修行した10代の頃から能や狂言の稽古に通ったという。舞台を知り尽くした絵師ならではの着眼が堪能できるのが見どころの一つです。衣装や道具の詳細をとらえているだけでなく、演者の体のみなぎる緊張感までもが伝わってきます。
「唐人相撲図」、これは観たかったのですが、残念ながら前期展示でした。中国へ行った相撲取りがあまりにも強いので、遂に皇帝が出てきます。皇帝の体に触れるのは許されないので、皇帝は体に筵を巻いて戦うことになります。座っている相撲取りの前で、皇帝は威嚇するように踊りだします。また、暁斎は猩々(しょうじょう)をよく描いています。猩々とは、「謡曲。五番目物。庭訓抄などに取材。孝行の徳により、富貴となった唐土の高風の前に猩猩が現れ、酒をくみ交わして舞をまい、くめども尽きない酒壺を与える。」とあります。「浦島太郎」は、暁斎の弟子のジョサイア・コンドルが所蔵していたものです。
今回、展示室5では「迫真の下絵」として、20点もの下絵やスケッチが展示されていました。下絵と侮るなかれ、これが迫力があります。すぐ下に載せたのは、「高砂図」の下絵で、三島の佐野美術館で展示されたものです。「道成寺図 鐘の中」は、鐘の中で女から蛇体に変わったシテが手鑑を見ながら面を調整している図です。「末広がり図『シテ惺々暁斎』」の下絵で、扇片手に待っているのは暁斎本人だという。
展覧会の構成は、以下の通りです。
河鍋暁斎と能・狂言の関わり
河鍋暁斎の能・狂言画
河鍋暁斎の下絵、スケッチ
河鍋暁斎の錦絵、版画
河鍋暁斎と能・狂言の関わり
河鍋暁斎の能・狂言画
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河鍋暁斎の下絵、スケッチ
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河鍋暁斎の錦絵、版画
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「河鍋暁斎の能・狂言画」
今注目の幕末~明治。このダイナミックな時代に縦横無尽に絵筆をふるった画家として、河鍋暁斎(1831-89)
の名がまず挙げられます。暁斎といえばユーモラスな妖怪画のイメージが強いのですが、実は正統の狩野派を学んだ絵師であり、傑出した画力をもって謹直名作品も多数遺しています。暁斎は能と狂言を愛好してその舞台を描きました。近代能画・狂言画を切り拓いたパイオニアと呼べるでしょう。その臨場感や人物の写実性は、劇芸術を深く理解していた暁斎ならではの特徴です。本展覧会では、暁斎の描いた屏風や掛軸と」いった完成作品はもちろん、下絵類でしか見ることのできない舞台裏を活写した図も見どころとなります。
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