山田洋次監督が選んだ日本の名作100本家族編、実は去年の7月31日に放映されたものを録画してあったので、是枝裕和監督の「誰も知らない」を観ることができました。この作品、撮影時1213歳だった明役の柳樂優弥は、カンヌ映画祭で日本人初、史上最年少の最優秀男優賞を受賞したことは知っていました。また、つい先日、第66回カンヌ国際映画祭ではコンペティション部門で、是枝裕和監督の「そして父になる」が審査員賞を獲得したことも・・・。
ある日、東京のマンションの一室に、女性と少年が引っ越してきます。大家には「小学生の息子と二人暮らしです」と挨拶します。しかし実際は、スーツケースに入った子供がいたり荷物に紛れ込むなどして、妹2人と弟1人を加えて5人家族でした。母親は家にいれば子供たちとゲームをしたり、散髪をしてやったり髪を結ってやったりもします。明に「今、好きな人いるの」と打ち明けて、明には「また?」とあきれられます。「お母さん、勝手なんだよ」と明が言うと、「あたしが幸せになっちゃ、いけないの?」と言い返したりします。子供たちは誰も学校に通ったことはなく、12歳の明は昼間は百貨店で働く母親に変わって夕食を作り、妹や弟の面倒を見ています。しかし、平和な家庭は長続きしません。母親が「しばらく留守にします」という書き置きを残して、家を出て行ってしまいます。
母親が置いていった僅かな現金もやがて底をつき、電気や水道も止められてしまいます。兄弟は4人は、コンビニで期限切れの弁当をもらい、公園で汲んできた水で生活します。4人は公園で洗濯をしている時に、不登校の少女紗希と知り合います。紗希は、豪華なマンションに住んでいます。明がお金がないと知ると、ネットで見つけたオジサンとカラオケに行って、お金を手に入れますが、明はさすがにそのお金は受け取れません。大人のいない子供たちの部屋が、ゲームをやる連中のたまり場になっていきます。そんなある日、明はたまたま見ていた少年野球にチームに入れてもらい、同年代の子供たちと束の間の野球を楽しみます。しかしその留守中に悲劇が起きていました。一番下の妹が死んだのです。明は母親に電話しますが、すぐに100円玉もなくなり、結局はつながりません。
死んだ幼い妹を、明は赤いスーツケースに入れます。引っ越してきた時のスーツケースです。紗希と明は、羽田空港近くの荒涼とした空き地にスーツケースを運び、そのまま埋めます。暗闇の空には爆音を轟かせて、飛行機が飛び去ります。二人が埋葬を終える頃、白々と夜が明けて、いつもと変わらない都会の一日が始まります。紗希と明は泥だらけの服のまま、モノレールに乗って家へ帰り着きます。そして場面は一転、見慣れた明の家の近所が映し出されます。コンビニの裏口で、顔見知りの店員から期限切れの弁当を受け取ります。肩を並べて帰って行く子供たち、欠けた妹の代わりに、不登校の少女紗希が加わって4人です。4人の後ろ姿はなぜか平穏で楽しげでもあります。
明と紗希が妹を埋葬するシーンが撮影された場所は、大田区城南島、羽田空港の北側にあります。子供たちがじゃんけん遊びなどで撮影された印象的な「階段」は、中野区と新宿区の境を流れる妙正寺川沿いで、近くには哲学堂公園があります。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:主演の柳楽優弥が史上最年少の14歳という若さで、2004年度カンヌ国際映画祭主演男優賞に輝いた話題作。『ディスタンス』の是枝裕和監督が実際に起きた、母親が父親の違う子供4人を置き去りにするという衝撃的な事件を元に構想から15年、満を持して映像となった。女優初挑戦の、YOU扮する奔放な母親と子役達の自然な演技も秀逸。母の失踪後一人で弟妹達の面倒をみる長男の姿は、家族や社会のあり方を問いかける。
ストーリー:けい子(YOU)は引っ越しの際、子供は12歳の長男の明(柳楽優弥)だけだと嘘をつく。実際子供は4人いて、彼らは全員学校に通ったこともなく、アパートの部屋で母親の帰りを待って暮らしていたが……。
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