ニューオータニ美術館で「ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」(後期)を、前期に引き続き観てきました。 明治、大正、昭和初期に絶大な人気を博した「美人画」、前後期合わせて約80点の名品を観ることができました。そのなかでいささかの感想を述べておきます。
まず、いままで僕の中では拒否反応を示していた竹久夢二の作品、ほかの選ばれた作品の中ではどう考えても異質です。なんなんだろう、これは、と、ちょっと考えてみると、「大正」という不思議な時代背景がありそうです。竹久夢二の「宵待草」、もっとも得意としたと言われている舞妓像、品のいい横顔、モダンな着物を着て、手には扇を持っています。この「宵待草」には、「まてど暮らせど 来ぬ人を 宵待草の やるせなさ 今宵は月も でぬさうな」と、自詩が添えられています。多忠亮の作曲により愛唱され、恋になくやるせなさ、退廃ムードを多分に秘めたその歌詞は庶民の心を揺さぶり、大正という暗い時代のムードに相乗りして大流行したという。
もうひとつは、これもいままで受け付けなかったいわゆる「デロリ」系の作品です。甲斐庄楠音の「汐汲み」、なんじゃ、これは!、と言いたくなるような、せっかく綺麗な女性を描いていながら、顔が奇妙です。わざと汚く描いているようです。なんなんだろう、これは?ウィキペディアの甲斐庄楠音の「画風」の項に、以下のようにありました。
基本的に画題は人物、それも女性が多く、風景画は非常に少ない。土田麦僊に「きたない絵」と言われたのは先述したが、岸田劉生には「デロリとした絵」と評された。それまでの日本画とは異なる暗い色調でグロテスクであり、ややもすればリアルを通り越してモデルの欠点を強調する傾向は、確かに人によって好きずきの分かれる画風である。大正時代末期の暗い風潮を象徴するデカダンス画家の代表であろう。
美人画でデロリか、あまり丁寧に検討している時間がありません。でも僕の中では、これってけっこう悪くない、いやいけるんじゃないかデロリ系、と思うようになりました。
「デロリ」とは何か? それは、濃厚で奇っ怪、卑近にして一見下品、猥雑で脂ぎっていて、血なまぐさくもグロテスク、苦いような甘いような、気味悪いほど生きものの感じを持ったもの。(「芸術新潮」2000年2月号「『デロリ』の血脈」より)
展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 雪月花
第2章 四季の風情
第3章 心の内と外~情念と装い
第4章 技芸と遊び
第1章 雪月花
第2章 四季の風情
第3章 心の内と外~情念と装い
第4章 技芸と遊び
知られざるプライベートコレクション
「ジャパン・ビューティー 描かれた日本美人」
美人、すなわち美しい女性を描くことは、日本美術の長い歴史における重要なテーマの一つです。 このジャンルで活躍した近代の日本画家たちは、技法や形式において伝統を継承しながらも革新的な表現を模索し、多様な人物表現を試みました。明治、大正、昭和初期に絶大な人気を博した「美人画」に注目し、三大巨匠と謳われる上村松園、鏑木清方、伊東深水の作品をはじめとする約80点を、前期・後期に分けて展観します。日本の四季、風俗、歴史、文学に着想を得た女性表現の多様性と、その姿に託された理想美をお楽しみください
ジャパン・ビューティー
描かれた日本美人
図録
展覧会監修:菊屋吉生(山口大学教育学部教授)
編集:小川知子(大阪市立近代美術館建設準備室主任学芸員)
南由紀子(アートシステム)
発行:アートシステム
2013年3月発行
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