府中市美術館で「常設展 明治・大正・昭和の洋画 春」を観てきました。平成22年9月ですから、今から2年半前、府中市美術館開館10周年記念展として、「バルビゾンからの贈りもの―至福なる風景の輝き」が開催されました。府中市美術館のある多摩の歴史と風土、「武蔵野」の豊かな緑やきらめく「多摩川」の流れに呼応するように、フランス・パリ近郊のフォンテーヌブローの森にあるバルビゾンという小さな村を対比して展示されていたのを思い出しました。その時出されていた日本側の作品は、ほとんどが府中市美術館所蔵の「武蔵野・府中コレクション」からのものでした。これらを素地として、バルビゾンと武蔵野、自然と人との「いのち」の面内を描いた風景画を紹介し、開館10周年の展覧会とした、と図録では述べています。
去年の10月のことでしたが、「ポール・デルヴォー展」を観た際に、常設展の会場に足を踏みいれました。府中市美術館の常設展は何度も観ていましたが、なぜか印象に残らなくて、ブログに書くまでには至りませんでした。その時初めて「府中市美術館収蔵品ガイドブック」があるのを知り、「3 戦前の洋画家たち―そのまなざしと表現」と「4 異国に学んだ画家たち―明治・大正期の洋画」を手に入れ、ブログに「明治・大正・昭和の洋画」を書きました。ガイドブックを手に作品を観て観ると、今までとは違った地平が広がってきました。
下に挙げた画像のうち7点は「バルビゾンからの贈りもの」に出されていた作品です。よく観てみると、どれもこれも味のあるいい作品ばかりです。これが明治時代に描かれたものかと、耳を疑いました。なにしろ生き生きしているのです。図録にはバルビゾン派美術館からのメッセージとして「どちらも畏敬と感謝の念を抱きながら自然を描こうとした点が共通している」とありました。まったく納得です。実はそれまで僕は、これらの絵画は古くさいもの、田舎くさいもの、野暮ったいものと思い、あまり好きになれませんでした。ところがなぜか心境が変化し、去年の末には山梨県美術館へミレーの作品を観に行ったりもしました。
今回の「明治・大正・昭和の洋画 春」には44点の作品が出品されていました。展示作品リストはありますが、いわゆる図録のようなものはなく、画像は「バルビゾンからの贈りもの」の図録や、2冊の「収蔵品ガイドブック」から取り出したものです。「美連協加盟館ガイドブック」(2009)の府中市美術館の項には、青木繁・福田たね「逝く春」の画像が、代表作として載せられています。
バルビゾンからの贈りもの~至高なる風景の輝き
図録
企画・編集:志賀秀孝(府中市美術館 学芸係長)
編集補助:杉崎則夫、藤田裕子、村上あゆみ
企画協力:浅野研究所 広瀬麻美
発行日:平成22年9月17日
発行:府中市美術館
府中美術館収蔵品ガイドブック4
「異国に学んだ画家たち―明治・大正期の洋画」
編集・執筆:神山亮子(府中市美術館)
発行日:2004年3月27日
発行:府中美術館
府中美術館収蔵品ガイドブック3
「戦前の洋画家たち―そのまなざしと表現」
執筆:武居利史(府中市美術館学芸員)
発行日:平成14年4月13日
発行:府中美術館
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