「ダメージ」は、ルイ・マル監督による1992年のイギリス・フランス合作映画。1991年に出版されたジョゼフィン・ハートの小説が原作となっています。先日TUTAYAで借りて観た「隠された記憶」(2005年)では、ビノシュの魅力が発揮されていないように思いました。同時に借りてきた「ダメージ」、僕は以前、これを観て大いに衝撃を受けました。ビノシュを知ったのも、この映画でした。
テーマが、息子の恋人と惹かれ合い、情事に溺れてゆく中年男性の悲しき顛末を描いた作品だったからでしょう。ジェレミー・アイアンズ 44歳、ビノシュ28歳のときの作品です。まさにビノシュは「ファム・ファタール」、男にとっての「運命の女」、男を破滅させる魔性の女です。がしかし、観直してみると、28歳のビノシュは、ほとんどセリフがないせいもあり、人生を達観しているような、妙に老成しているような表情でした。
「allcinema」には、以下のようにあります。
家族に囲まれ幸せに暮らすイギリスの国会議員スティーブン。彼は、ある日出席した社交の場で、アンナという魅力的な女性と出会う。彼女はスティーブンの息子マーティンの恋人だった。しかし、スティーブンとアンナは互いに一目で運命的なものを感じ、いつしか体の関係を持つようになってしまう。以来、逢瀬を重ね、欲望に身を任せて激しく愛し合っていく2人。だがその秘めた関係は、スティーブンの妻イングリッドやアンナの母エリザベスにも悟られることに。そんな中、アンナのことだけしか考えられなくなってしまったスティーブンは、ついにイングリッドとの離婚を決意。ところが、アンナは彼の求めには応じず、やがてマーティンと婚約する。こうして、アンナへの想いを断ち切れないまま彼女との関係に終止符を打つスティーブンだったが…。
良心呵責にさいなまれたスティーブンは、思い余ってアンナに「妻とは離婚する」と告白します。しかし現実をよく見ているアンナは、「それで何を得られるのか、あなたはすべてを失うだけよ」と冷静に彼をいさめます。スティーブンは「君を得られるじゃないか」とアンナに詰め寄ります。アンナは平然とこう答えます。「わからないの? あなたはもう手に入れているのよ」と。また、アンナはマーティンの祖父の家に招待され、マーティンは家族の前でアンナにプロポーズしたことを告げます。「あなたと会えるから彼と結婚するのよ」と言われると、男はどうしようもありません。
会食の席で、アンナの母親が「マーティンにお会いした瞬間、アンナの(自殺した)兄に生き写しで」、というシーンがあります。それを聞いて、アンナは絶望的な表情を浮かべます。母親は「これでやっと娘もマーティンと新しい人生を歩んで、幸せになるわ」と言う。スティーブンは「おっしゃっていることが分かりませんが」と聞き返すと、「お分かりよ。食事の間中、あなたは娘を一度も見なかった。どうか身を引いて」と。そして破局が・・・。
若い女にうつつを抜かすと、結局はこうなるという見本のようなもの。末路は寂しいモノです。ラストはスティーブンの独白で終わります。
世の中から消えるのに、時間は要らなかった。あちこちさまよいやっと住処を見つけた。人間とは一体何なのか、誰に理解できよう。その謎の糸口に思えるので人は会いにすがる。最後は空しい、何もかも・・・。彼女はその後一度だけ見かけたことがある。空港の乗り換えロビーで。彼女は気付かず、ピーターと一緒で、子供をだいていた。、ごく普通の女だった。
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