図録のはじめ、主催者の「ごあいさつ」は、以下のようにあります。
17世紀バロック時代のヨーロッパにその名をとどろかせた画家ペーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)は、アントワープ(現ベルギー)での修行を終え、親方資格を得て、1600年イタリアに向けて出発し、マントヴァ公爵の宮廷画家になります。イタリアでは、ローマをはじめ各地を訪問し、古代、ルネサンス、当代の美術を学びました。
8年間のイタリア滞在を終えてアントワープに帰郷したルーベンスは、南ネーデルラント(フランドル)の統治者アルブレヒト大公とイサベラ大公妃の宮廷画家に任命され、大規模な工房を設立し精力的に活動しました。1619年頃からは自作の版画に対する独占的版権を獲得し、自らの構図を正しく普及させることに努めます。さらには1623年頃から、絵筆を持った外交官として各国の宮廷で手腕を振るいながら和平交渉に臨み、宗主国スペインとイギリスとの和議の成立に貢献しました。一方、2度の結婚を通じ8人の子供をもうけ、子供たちの教育に熱心な、家庭思いの父親でもありました。
本展は、イタリア滞在の影響を示す作品をはじめ、彼自身の手になる卓越した作品、工房作品、工房内の助手が独立して描いた作品、彼が直接指導して制作させた版画などを通じ、制作の実態に迫る日本初の試みです。家族の肖像も含め、日本ではあまり知られていない巨匠の真の姿を紹介します。
今回の展覧会のタイトル「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」から分かる通り、まずルーベンスの作品、ルーベンスと工房の作品、イタリアから影響を受けた作品、この3つのテーマで展覧会が構成されていることが分かります。今回分かったことは、ルーベンスは意外と肖像画家だよねということ、「ルーベンス原画」など、工房作品がけっこう多いこと、版画についてのルーベンスの考え方、向き合いかた、「キリスト降架」や「聖母マリヤの被昇天」など、しっかりと版画にしています。また、工房から多くの弟子たちが育ったこと、ブリューゲルなどとの競作、等々でした。
僕がルーベンスの作品を意識して観るようになったのは、2006年東京都美術館で開催された「プラド美術館展」でした。その時のルーベンス作品は、「ヒッポダメイヤ(デイダメイヤ)の略奪」「フォルトゥーナ(運命)」「ニンフとサテュロス」でした。その後2007年12月のスペイン旅行で、「プラド美術館」へ行くことができました。スペインの三大巨匠と言われる画家の絵を一度に観ることができました。その旅行ではツアコンのオバサンがやたらと「肉屋のルーベンス」といって解説してくれたことを思い出します。ルーベンスと言えば、僕の中では「三美神」、3人の妙齢の女性を描いていますが、皆さんふくよかで、あのお尻の肉がたれて皺になっているところがすごい。
「肉屋のルーベンス」と言っていたツアコンのオバサンは、「オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ旅行」の時だったか?アントワープではアントワープ聖母大聖堂で「キリスト昇架」「キリスト降架」「キリストの復活」「聖母被昇天」の4つの作品を観ることができました。あの「フランダースの犬」のネロがこれらの作品に憧れたが観ることができなかったという話です。ルーヴル美術館の「マリー・ド・メディシスのマルセイユ上陸」がルーベンス48歳の頃の傑作だと言われていますが、残念ながらルーヴルには行きましたが記憶にありません。そうそう去年、国立新美術館で「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展が開催され、話題を集めたのは愛娘を描いた「クララ・セレナ・ルーベンスの肖像」でした。これは娘を描いたものだからルーベンス100%だよねと言う話が飛び交っていました。
展覧会の構成は、以下の通りです。
1.イタリア美術からの着想
2.ルーベンスとアントワープの工房
3.ルーベンスと版画制作
4.工房の画家たち
5.専門画家たちとの共同制作
1.イタリア美術からの着想
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2.ルーベンスとアントワープの工房
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3.ルーベンスと版画制作
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4.工房の画家たち
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5.専門画家たちとの共同制作
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「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」
17世紀バロック時代のヨーロッパに名声をとどろかせた画家ペーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)。8年間のイタリア滞在を終えてアントワープに帰郷したルーベンスは、大規模な工房を組織して、数々の傑作を生み出しました。本展では、彼のイタリア時代の作品を紹介するとともに、アントワープ工房の活動に焦点を当てて、彼自身の手になる卓越した作品を軸に、工房作品、専門画家たちとの共同制作作品、彼が直接指導して制作させた版画を展示します。また、彼の工房で活動した画家たちの、独立した画家としての作品を紹介し、アントワープ画派の豊かな芸術的展開を探ります。
「Bunkamuraザ・ミュージアム」ホームページ
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ルーベンス
栄光のアントワープ工房と原点のイタリア
展覧会図録
監修:
中村俊春(京都大学大学院文学研究科教授)
企画・構成:
Bunkamuraザ・ミュージアム
宮沢政男(チーフキュレーター)
廣川暁生(キュレーター)
毎日新聞社
川俣享子、武内由佳子、瀧口扶美、南田奈穂
展覧会コンサヴェーション:
森絵画保存修復工房
森直義、佐藤寛子、東那美
発行:
毎日新聞社
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「ペーテル・パウル・ルーベンス」
1577-1640 絵画界のホメロス
ジル・ネレ
©2006 TASCHEN
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「プラド美術館」
図録
初版発行:2000年
第二版発行:2001年
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