堅山南風による「銷夏帖(秋草)」は1929年に作成されたものですが、ここに挙げたその他の作品はおおむね1980年代の作品がほとんどでした。結果的にですが、どちらかというと分かりやすい作品が多く、僕の好みの作品が多い展覧会でした。テーマはもちろん「花鳥画」ですが、今まで正面から取り上げられたことの少ない「額装」についてもテーマの一つでした。しかし、額装については「作品発表の場としての展覧会」、また「住宅環境の変化」に触れているだけで、今ひとつ切り込みが足りない感じがしました。展示室に掲げられていたものを、下に載せておきます。
額装の花鳥画
花と鳥は、日本では古くから四季や自然を表した絵画には欠かせないモチーフでしたが、中国から入ってきた花鳥画の影響によって風景の一部から独立して「花鳥画」というジャンルが成立しました。以来、花屋町の麗しさは、様々な変遷を遂げつつ連綿と描き続けられてきました。近代・現代に入ると、作品発表の場として盛んになってきた展覧会には額装作品が増加し、また住宅環境の変化によって掛軸は減少の一途をたどります。花と鳥は、伝統的なスタイルから解放されて、別々に描かれることが多くなりました。より一層写実を追求したり、花鳥画に期待される優美さから脱却し画家の心情を託す傾向の強い作品も多くなってきます。斬新な構成へと展開していく中にも、豊かな生命感や内面的な幅広さ、深みを感じさせる画面は、やはりしあわせを象徴し、あついはそれを予感させるととらえられるのではないでしょうか。
今回の展覧会の特徴のひとつに、何人かの画家による「画家のことば」が掲げられていました。その中から数点、下に挙げておきます。
「画家のことば」 林美枝子 「風立ちぬ」、「気」
取材場所は金沢市内で、偶然赤レンガ校舎(旧金沢美大)を見つけ、64回入選「窓」となり、そこからこの2枚の作品へと変化していきました。猫は、私自身でもありますが、“猫の形”を知るために1981年黒猫を飼い、作品に登場していますが、1989年渡英中に病死。余りの悲しみに・・・二度と飼いません。「風立ちぬ」はスケッチ中、突然ザワザワと風邪が起こり静寂を破った一瞬を描いたもの。「気」は葛の葉が上へ上へと伸びていく張り詰めた緊張感を、共に黒猫の振り向いた動きで表現。両作品とも「箔」を使用して、線描による表現方法をとっています。今の心境として、月日の流れの速さを痛感しています。「一日一画」を心掛けてきましたが、20代には20代の、30代には30代の時にしか描けないものがあるのだと、過去の作品を観て実感しています。
「画家のことば」 小笠原光 「爽秋」
主題は身近な場所で探すことが多い。行き詰まった時、何度でも写生した場所を訪れることができるからである。手が遅く、自分の愛で何度も確かめないと描けないことが一番の理由かもしれない。季節はほとんど早春か秋を題材にしてきた。どちらも日差しが柔らかく、古びた土壁や板壁を優しい色合いに変えて、描いていて心地よい。この物置小屋は秋田市の郊外で取材した。風はもう爽やかだったが、午後の日差しで窓の格子の陰がくっきり見えていた。猫は「早春」と同じモデルである。「なぜ猫を描くのか」とよく聞かれる。風景を描いていると、どこかに人の気配が欲しくなる。が、モデルを頼んだりするのは得意ではないので、人物を描くことはほとんどない。それで猫を描くようになった。猫はイヌに比べて思いのままにならない分とても人間くさい。聞かれた時は「それで猫を描くのです」と話すことにしている。
「画家のことば」 北久美子 「午後の視線」
約30年前の作品なので、記憶の底に沈んでいる想いを取り出すのには時間がかかる。1980年代、私はカラスはもちろん、多種多様な鳥を描いていた。ある日、知人の佐藤さんが「はい、北さん」と、突然段ボールを手渡した。動く気配がし、中には真っ黒な鳥、カラスが入っていた。その日から、この鳥はわが家で同居することになった。とりわけ頭のいい、知恵のある、自己主張する、おもしろい鳥である。このユニークさと真っ黒い姿は、創作のイメージを誘うこととなり、その時からカラスのシリーズが始まった。この作品は、その中の一点である。当時、朝日ジャーナル誌の表紙に、これと似た私の作品が掲載され、表紙の言葉として私は「見えるものを描きながら、見えないものを願ってカンバスに向かう。見えないものは何かと問われると困ってしまうが、それは、たぶん私の心の襞に潜んでいる風景のようなものだと思っています」と書いていた。だから、この作品の風景画は、実際どこにもないアトリエで創造した風景なのです。
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「花・鳥―しあわせの予感」
花や鳥は私たちの営みの身近にあって、いつの時代も人々の心を癒し、楽しませ、同時に美術の重要なテーマとして取り上げられてきました。中国の美術作品にみられるモチーフには、単に美しさや優雅さを表わすだけではなく、人々の願望が反映されています。花や鳥は吉祥のシンボルとしてしばしば取り合わせて表され、目に映る華やかさとともに見る人をしあわせへと導いていきます。一方、日本では自然の美しさや移り変わる四季の風情を素直に讃え、また季節の花や野鳥に心情を託してきました。そのたおやかな作風は現代へと受け継がれていき、やがて斬新な構成へと展開していきます。本展では当館所蔵のコレクションから、花と鳥をモチーフとした作品を中心に中国・朝鮮・日本・安南の陶磁器と日本人の額装作品をご紹介します。しあわせはすぐそこに-そんな予感に満ちた展覧会を、どうぞお楽しみ下さい。
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