松岡美術館で「花・鳥―しあわせの予感 うつわにめでられた花と鳥たち」を観てきました。同時期に展示室5・6では「額装の花鳥画」が展示されていました。もちろん、松岡美術館の常設展示、「古代オリエント美術」「ガンダーラ・インド彫刻」「ヨーロッパ近現代彫刻」にはすごいものがあります。松岡美術館に来ると、分かり易い解説で多くを学べ、帰る頃はお腹いっぱい、満腹で帰ることができます。それほど盛りだくさんの内容です。
松岡美術館のコレクションの最初は中国陶磁というだけあって、今回は、青花、白釉、黒釉、五彩、法花、釉裏紅、豆彩、黄地など、そして朝鮮、安南(ベトナム)、日本の古伊万里や古九谷、柿右衛門に至るまで、さまざまな陶磁を学ぶことができました。今回と同様な趣旨で、以前、松岡美術館で「吉祥のうつわ 中国陶磁にみる祝い寿ぐ文様の世界」を観たことを思い出しました。また直近では、泉屋博古館で「吉祥のかたち」を観たことも思い出しました。
「花・鳥―しあわせの予感 うつわにめでられた花と鳥たち」
中国の人々は古くから、幸せな暮らしが続くよう、多くの陶磁器や漆器、服飾品などに様々な願いを込めてきました。またそこには、彼らの持つ幸福感がうつしだされており、いくらかの事物を自分たちにとって「おめでたいもの」と捉え、やがてそれは吉祥を示すシンボルとして浸透していきました。そして多くの工芸作品や絵画、皇帝の衣裳などに「平和」、「子孫繁栄」、「不老長寿」などの幸せを願う想いを託しました。豊かさをもたらす蓮に水禽、富貴と瑞鳥を表わす牡丹に孔雀など、花と鳥はしばしば吉祥文様の取り合わせとして、それぞれ美を競い合っていました。展示室4では当館所蔵の中国陶磁を中心に(主に青花、白釉、黒釉、五彩、法花、黄地、釉裏紅)、朝鮮、日本(古伊万里や古九谷、柿右衛門)、ベトナム(青花など)より、花と鳥の綾なす作品を約50件ご紹介致します。
展覧会の構成は、以下の通りです。
Ⅰ 富貴の花 牡丹
Ⅱ 結婚・長寿の花 蓮華と菊
Ⅲ 繁栄への想い 四季花
Ⅳ 飛翔する瑞鳥たち―鳳凰、孔雀、鶴
Ⅴ 華やぐ花と鳥たち
Ⅰ 富貴の花 牡丹
牡丹は中国で「百花の王」、「花神」と賞され、中国を代表する花として知られています。そのあでやかに咲き誇る花姿から富貴(財貨が多く地位が高い)の象徴ともされ、絶世の美人を意味する「国色天香」とも呼ばれています。隋から唐にかけて人々に愛好され、唐時代には盛んに栽培が行われました。宋時代以降、牡丹は陶磁器の主要な文様となって繰り返し描かれ、やがて折枝文様や唐草文様を取り入れた「牡丹折枝文」「牡丹唐草文」が作られ、様々に図案化されていきました。
Ⅱ 結婚・長寿の花 蓮華と菊
中国の陶磁器には様々な文様が描かれていますが、そこには人びとが追い求めた幸せへの願いが込められています。中国に仏教がが広まると、それと共に蓮華文様は美術・工芸品に取り入れられ、やがて恋愛や結婚に関わるおめでたい文様になりました。菊は中国で古来より薬として用いられ、長寿を示す花とされています。宋時代に菊愛好の風潮が高まると品種も増加し、陶磁器に菊の文様が現れるようになります。元から明時代にかけて多くの青花や釉裏紅磁器にその文様が見られます。
Ⅲ 繁栄への想い 四季花
「四季花」とは、明時代初期、永楽様式の青花磁器に描かれた文様のことです。牡丹(春)、蓮華(夏)、菊(秋)、山茶花(冬)など、一つの蔓に、異なる季節の花を複数組み合わせた唐草文が描かれています。いつまでも繁栄が続くようにとの願いが込められました。
Ⅳ 飛翔する瑞鳥たち―鳳凰、孔雀、鶴
様々な鳥の文様にも、幸せをもたらす吉祥にメッセージが込められています。空想上の鳥、鳳凰は優れた君主の治世に現れるとされ、鳥王と呼ばれています。勇ましく華麗な姿の孔雀は、富貴の象徴とされました。蔓は中国では古くから千年を生きる白い水鳥と言われ、亀と共に長寿の象徴とされてきました。これらの鳥たちは瑞鳥と呼ばれ、おめでたいことが起こる兆しとされ、花や虫、雲、唐草などと取り合わせて、様々な国で独自の文様が誕生しました。
Ⅴ 華やぐ花と鳥たち
先人たちは四季折々の変化と共に、自然の美や季節の風情を花と鳥たちの姿と併せて讃えてきました。いつの時代も「花と鳥」は国を超えて人びとに愛されてきた主題です。時にはのびやかに、時にはコミカルに、時には愛らしく。中国で、ベトナムで、日本で、表情豊かに彩られてきた花や鳥たち。うつわにめでられたその姿を、お楽しみください。
「花・鳥―しあわせの予感」
花や鳥は私たちの営みの身近にあって、いつの時代も人々の心を癒し、楽しませ、同時に美術の重要なテーマとして取り上げられてきました。中国の美術作品にみられるモチーフには、単に美しさや優雅さを表わすだけではなく、人々の願望が反映されています。花や鳥は吉祥のシンボルとしてしばしば取り合わせて表され、目に映る華やかさとともに見る人をしあわせへと導いていきます。一方、日本では自然の美しさや移り変わる四季の風情を素直に讃え、また季節の花や野鳥に心情を託してきました。そのたおやかな作風は現代へと受け継がれていき、やがて斬新な構成へと展開していきます。本展では当館所蔵のコレクションから、花と鳥をモチーフとした作品を中心に中国・朝鮮・日本・安南の陶磁器と日本人の額装作品をご紹介します。しあわせはすぐそこに-そんな予感に満ちた展覧会を、どうぞお楽しみ下さい。
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