ミヒャエル・ハネケ監督の作品は、つい先日、年老いた老夫婦を主人公にした「愛、アムール」という作品を観ました。他にも観たいと思い、「ピアニスト」をTUTAYAで探したところ、なぜか「隠された記憶」を借りてきてしまいました。「ピアニスト」は、以前、観たことがありました。「隠された記憶」の他に、以前衝撃を受けたジュリエット・ビノシュの「ダメージ」を借りてきちゃいました。もちろん「隠された記憶」に、ジュリエット・ビノシュが出ているのを知っていたからです。ジュリエット・ビノシュの作品は色々観ていますが、「隠された記憶」の主役であるダニエル・オートゥイユという男優の作品、以前、「そして、デブノーの森へ」という作品を観ていました。「隠された記憶」の中のセリフにも出てきましたが、あの特徴ある「鼻」で思い出しました。
まずこの映画、考えるもなにも、「斬新で衝撃的なラストシーン」、これに尽きます。こんなことがあるのか、というほど、今まで映画の中で観たことがない結果です。これには驚きました。主人公のジョルジュも対処のしようもなく茫然として、急いで家へ逃げ帰ります。で、次に考えることは、フランスとアルジェリアの関係についてです。もちろん、ジョルジュとマジッドが相似形でその関係そのものです。子どもの頃マジッドが軍鶏の首を切り落とします。マジッドの顔面は血だらけです。それを見ていたジョルジュの顔は恐怖におののきますが、なぜか他人事のようです。
一方はインテリで富裕な生活を送っているのに対して、もう一方は(たぶん)労働者階級で生活もキチキチで余裕などありそうもありません。ジョルジュの本棚に囲まれた生活と、マジッドの寒々しく殺風景な部屋は当然対比されます。それはふたりの子どもの頃の生活の延長線上になります。年月が経ってもそれは克服されることはありません。あるいはその差はますます開いています。送られてくるビデオテープが、この映画をよりスリリングなものにしています。
当然、観る者は、これだけのお膳立てからして、犯人はマジッドであろうと考えます。また、マジッドの息子も登場して問題を複雑にしたりもします。ジョルジュに対してマジッドの息子は「父は一生懸命私を育ててくれた。あなたはそんな父の教育の機会を奪った」と迫ります。あるいはジョルジュの息子で反抗的なピエロか、あるいは浮気をしているかもしれない妻か、ということも考えられます。が、しかし、そうは問屋は卸さない、というのがこの映画の映画たる所以です。つまりそれが、ハネケの映画なのです。犯人は誰なのか、わからないままです。
以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。
チェック:ある夫婦の元に送られてきた謎のビデオテープをきっかけに、崩壊していく家族の姿と暴き出される過去の秘密を描いた心理サスペンス。監督は本作でカンヌ映画祭監督賞を受賞した名匠ミヒャエル・ハネケ。ビデオテープに翻弄(ほんろう)され、不安と恐怖を味わう主人公の夫婦を『橋の上の娘』のダニエル・オートゥイユと『ショコラ』のジュリエット・ビノシュが演じる。斬新で衝撃的なラストシーンまで、一瞬たりとも見逃せない。
ストーリー:テレビ番組の人気キャスター、ジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)と出版社に勤める妻アン(ジュリエット・ビノシュ)の元に、送り主不明のビデオテープが不気味な絵とともに送られてくる。しかも、ビデオテープに映っているのは、ジョルジュたちの家と彼らの日常の姿だった。2人は単なる悪戯として片づけようとするが……。
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