カトリックの総本山、バチカン市国の国家元首であるベネディクト16世ローマ法王が、85歳という高齢でこれ以上職務をまっとうできないため自らの遺志で法王の座を退任しました。その後、システィーナ礼拝堂での「コンクラーヴェ」を経て、新法王が選出されました。法王の名はフランシスコ1世、初の南米出身で「庶民派」の評判が高いという。ナンニ・モレッティ監督の「ローマ法王の休日」を、TUTAYAで借りたDVDで観ました。この映画、「ローマ法王の休日」という題名が非常に紛らわしい、あの「ローマの休日」を思わせるからです。原題は「Habemus Papam」というラテン語で「法王が決まりました!」というような意味だとか!
藤崎衞(東京大学助教:西洋史、キリスト教史)は朝日新聞の「ニュースの本棚」(2013年3月17日)で、以下のように述べています。前法王ベネディクト16世が退位するというニュースに接したとき、映画「ローマ法王の休日」が思い出された。いやいやながら法王にされた主人公が、就任を前にバチカンから逃げ出すという物語は、法王職の重責と高齢を理由にその座を退いた前法王を彷彿とさせ、いかなる人物が次に選ばれるのかという好奇心をかき立てた。
威厳を備えた枢機卿を演じるおじいちゃん俳優が多数登場し、その平均年齢は一目で非常に高いことがわかります。次期法王を決める選挙「コンクラーヴェ」のシーンから始まるこの映画、最高指導者の座を争う枢機卿たちは、意外にもみんな「どうか私が選ばれませんように」と祈ってます。選出されたのは誰もが予想外だったメルヴィルでした。新法王はサンピエトロ寺院のバルコニーに出て、世界中の信者に向かって新任の挨拶をしなければなりません。
ところが気弱なメルヴィルは、自分には無理だと任務を放りだして、ヴァチカンから逃亡してしまいます。法王という大役に押し潰されそうになり、パニックを起こして、ローマの街を一人さまよい歩きます。メルヴィルの途方に暮れた様子は、まるで幼児のようです。この逃避行は、これまでの人生とは何だったのかという問いを、老いた彼に突きつけます。しかし、街の人たちとふれ合いながら、自分の存在意義を少しずつ取り戻していきます。
新法王に選出されたメルヴィルの、最初で最後の演説でこの映画は終わります。
この数日、不思議に思われたでしょう。なぜ法王は挨拶に姿を見せないのかと。心配はありません。主が選ばれたのです。間違うはずはありません。そう私が選ばれました。ただそれが私に力と自覚を与えるかわりに、押し潰し、さらに混乱させるのです。今この時、教会は大きな改革を進め、誰をも迎え入れられる指導者を求めています。すべての人に愛を与え理解できる者を。主よお許しください。どうかこの私の行為を許されますでしょうか。それでも私は神と皆さんに心からお話しします。何日も皆さんのことを考え続け、残念ながら気付きました。与えられた役目を果たせないと。私は導くのではなく、導かれるべき人間の一人だと感じます。今言えるのはこれだけです。私のために祈ってください。皆さんの指導者は私ではない、私であってはならないのです。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:『息子の部屋』でパルムドールを受賞したナンニ・モレッティ監督が、新ローマ法王に選ばれた枢機卿の苦悩を描いたハートフル・コメディー。法王逃亡という衝撃的な展開や、ローマ法王が選出される選挙(コンクラーヴェ)の様子まどをシニカルに描写し、第65回カンヌ国際映画祭で好評を博した。法王就任という重圧から街へ逃げ出すものの、街の人々との交流を通して信仰心や法王の存在意義を見つめ直していく主人公を、フランスの名優ミシェル・ピッコリが哀感を漂わせながら演じ切る。
ストーリー:ローマ法王が亡くなり、新しい法王を選出するため各国の枢機卿がヴァチカンに集められた。全員が心の中では法王に選ばれないようにと祈る中、誰もが予想外だったメルヴィル(ミシェル・ピッコリ)が新法王に選出される。サン・ピエトロ広場に集まった群衆たちを前にバルコニーで就任演説をしなくてはならないメルヴィルだったが、重圧のあまり街へ逃げ出してしまい……。