東京都美術館で「世界の傑作、奇蹟の集結 エル・グレコ展」を観てきました。観に行ったのは2月23日のこと、ブログに書くのに時間が経ってしまいました。新聞には、「エル・グレコ展」の入場者数が19日、開催51日目で20万人を超えたという記事が載っていました。
2007年12月に、スペイン旅行でトレドへ立ち寄り、「カテドラル」にあるエル・グレコの「聖衣剥奪」や、サント・トメ教会にあるエル・グレコの代表作である「オルガス伯の埋葬」を観ることができました。
トレドのカテドラルの「聖衣剥奪」、今回の「エル・グレコ展」にも出品されていましたが、レプリカ出品でした。この作品は、ギリシャ出身の画家グレコのスペインでの初仕事でした。この絵が完成したとき、トレド大聖堂は、3人のマリアが登場するのは不適切だと文句をつけ、当初の契約よりも低い価格しか払おうとしませんでした。グレコは作品の引き渡しを拒否し、争ったあげく、大聖堂側が払おうとしていたよりも高い金額を受け取ったという。グレコがこの作品に対して並々ならぬ自信を持っていたことがわかります。(宮下規久朗「知っておきたい世界の名画」より)
エル・グレコの作品は、纏まって観たのは、やはり2007年12月のスペイン旅行で立ち寄ったプラド美術館でした。ベラスケス、ゴヤとともにエル・グレコのスペイン三大画家を同時に、駆け足でしたが、観ることができた、というわけです。それ以前、2003年3月から6月にかけて、やはり東京都美術館で「プラド美術館展」が開催され、僕も観に行きました。「十字架を抱くキリスト」「寓話」「若い貴紳」、そして今回も出品されていた「フリアン・ロメロと守護聖人」が出されていました。
先日このブログに新法王について書いた中に、「ラオコーン」の画像を載せました。そのとき初めて知ったのですが、エル・グレコの作品に「ラオコーン」(1610~14年頃:ワシントンD.C.ナショナル・ギャラリー)という作品があるという。ギリシャ神話のトロイ戦争のエピソードで、バチカン美術館にあるラオコーン群像をベースにしているグレコ唯一の神話画だという。グレコは、トレド移住の前にローマを訪れ、ミケランジェロの躍動感あるねじれた身体表現に多大な影響を受け、それがラオコーンの表現に結びついた、という。マニエリスムの画家と称される由縁か。
今回の展覧会の構成は、以下の通りです。
Ⅰ-1 肖像画家エル・グレコ
Ⅰ-2 肖像画としての聖人像
Ⅰ-3 見えるものと見えないもの
Ⅱ クレタからイタリア、そしてスペインへ
Ⅲ トレドでの宗教画:説話と祈り
Ⅳ 近大芸術家エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として
富山県立近代美術館館長の雪山行二は、エル・グレコの芸術を理解するため、手掛かりとなる事実を三つ示しています。(朝日新聞:2012年12月26日)
第一は、エル・グレコは、ベラスケス、ゴヤとともにスペイン絵画の三大巨匠に数えられているが、実はギリシャのクレタ島に生まれた異邦人であったこと。エル・グレコは「ギリシャ人」を意味するあだ名。トレドを第二の故郷として愛したにも関わらず、人々は彼をギリシャ人と呼んでいた。彼自身、作品には常にギリシャ文字で証明していたこと。
第二は、スペインを盟主とする対抗宗教改革のさなかにあって、そのイデオロギーに忠実な画家であったこと。彼はマグダラのマリアやペテロなど、悔悛する聖人の姿を好んで描いたが、「悔悛」こそはプロテスタンティズムとの相違を示すカトリック側の重要なスローガンであった。そうした時代において、グレコの描く鮮烈な宗教画はスペインで熱狂的に迎え入れられたのだという。
第三は、彼がトレド一の流行画家として、ビジネスの世界でも成功を収めていたこと。没後長らく忘れ去られていたエル・グレコは、19世紀末から20世紀初頭に孤高の神秘主義作家として劇的な復活を果たした。しかし今では、当時のトレドの上流社会や宗教界と広く親交を保ち、殺到する注文をこなすため工房を経営、優雅な生活を送っていたことが判明している、という。
エル・グレコ展のチラシは、上にあるように、A4版縦2枚つづりの長いものです。使われている画像は「無原罪のお宿り」(1607~13年、サン・ニコラス教区聖堂蔵、サンタ・クルス美術館寄託)、今回の展覧会の目玉で、最後の展示室に下から見上げるようにかけられていました。この絵の特徴は、以下の4点。(朝日新聞:2012年12月26日)
聖なる光
聖母マリアの頭上のハトと光は、聖霊と神の恵みとしての光を示している。エル・グレコはこの絵を礼拝堂の高い窓の下に配置し、窓からの自然の光が絵の中の神聖な光と一致するように工夫したという。
「動く」絵画
大胆な縦長の構図、聖母マリアの曲がりくねった長い体、極端な角度で描かれた天使の翼。見上げる人に、絵全体が動いているかのようなダイナミックな印象を与える。
純潔示す
「無原罪のお宿り」とは、聖母マリアが母アンナの胎内に現在を免れて宿った、とするカトリック特有の教義。とりわけスペインでは今でも篤い信仰を集める。ユリやバラはマリアの純潔の象徴。
愛する街
聖母マリアの足元に描かれている風景は、エル・グレコが30代半ばから死ぬまで居を構えたトレドの街並み。発注主のトレドの教会の意向を受けて、描き込んだ可能性もある。
「世界の傑作、奇蹟の集結 エル・グレコ展」
東京都美術館のリニューアルを記念して、没後400年を迎えるスペイン絵画の巨匠、エル・グレコの大回顧展を開催します。エル・グレコ(本名ドメニコス・テオトコプーロス、1541~1614年)は16世紀から17世紀にかけてのスペイン美術の黄金期に活躍し、ベラスケス、ゴヤとともにスペイン三大画家の一人に数えられます。クレタ島に生まれ、ヴェネツィア、ローマでの修行を経てスペイン・トレドにたどりつき、揺らめく炎のように引き伸ばされた人物像が印象的な宗教画や、モデルの人となりをも描き出す独自の肖像画で、当時の宗教関係者や知識人から圧倒的な支持を得ました。ピカソら20世紀の巨匠たちからも、その作品は高く評価されています。本展にはプラド美術館、ボストン美術館など、世界中の名だたる美術館やトレドの教会群から油彩画50点以上が集結。高さ3メートルを超える祭壇画の最高傑作の一つ「無原罪のお宿り」も初来日し、まさに「奇蹟の集結」といえる国内史上最大のエル・グレコ展となります。
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