水戸芸術館で「坂茂―建築の考え方と作り方」を観てきました。今回の展覧会は、行動する建築家、坂茂の初の大型個展です。坂の初期・代表建築作品から素材や設計における試み、ライフワークである災害支援プロジェクトの活動が紹介されていました。自然災害といかに関わり生きていくかが問われている現在、建築の可能性、建築家の仕事や拡張する役割、そしてわれわれに何ができるのかを坂の活動を通して探るのが、展覧会の主旨といえます。
「坂茂―建築の考え方と作り方」
1.紙の茶室 20082.紙の家 1995
3.10-UNIT SYSTEM 2009
4.多目的展示パネル 1988
5.モジュールアッシュ 2012
6.紙の構造
7-1.ハノーバー国際博覧会日本館 2000
7-2.ハノーバー国際博覧会日本館 2000
8.内外の連続
9.ガラスシャッター 2008
10.木の可能性
11.プレハブ
12.家具の家 1995~
13.新仮設住宅システム 2013
14.災害支援
15.災害支援マップ
16-1.成都市華林小学紙管仮設校舎 2008
16-2.成都市華林小学紙管仮設校舎建設風景
17-1.避難所用間仕切りシステム 2011
17-2.避難所用間仕切りシステム 設置後風景
18.UNHCR用の紙のシェルター 1999
19.ガラス作家のアトリエ 2006
20.紙のログハウス 1995
21.紙の教会 1995
22.大分県立美術館 2015(予定)
23-1.ポンピドー・センター-メス 2010
23-2.ポンピドー・センター-メス 建設風景
24.ナインブリッジズゴルフクラブハウス 2010
25.タメディア新本社 2013
26.女川町仮設住宅 2011
26.女川町仮設住宅 コンテナ仮設住宅
坂茂プロフィール:
1957年東京生まれ。クーパー・ユニオン建築学部を卒業。82年、磯崎新アトリエに勤務。85年、坂茂建築設計を設立。95年から2000年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)コンサルタント、同年にNGO VAN設立。現在、京都造形芸術大学芸術学部環境デザイン学科教授。
主な作品:
「カーテンウォールの家」、「ハノーバー国際博覧会日本館」、「ニコラス・G・ハイエック・センター」、「ポンピドゥーセンター・メス」他多数
主な受賞:
フランス建築アカデミー ゴールドメダル(2004)、アーノルド・W・ブルーナー記念賞建築部門世界建築賞(2005)、日本建築学会賞作品部門(2009)、フランス芸術文化勲章(2010)、オーギュスト・ペレ賞(2011)、芸術選奨文化部科学大臣賞(2012)他多数
建築家・坂茂の創作と活動を包括的に紹介する日本で初めての大規模個展
本展では、紙管をはじめとする様々な材料や構法を用いることで、住宅から公共施設、そして災害支援に至るまで、多くのプロジェクトを世界各地で進行させる建築家、坂 茂(ばん・しげる)の活動の全貌を紹介します。坂の作品の特徴は、我々が普段、気にもかけずに見過ごしがちなものの中に建築の材料として特性を見出し、それを建築作品として実用化するところにあります。坂はそのキャリアの早い段階から、これらの材料を用いつつ優れたデザインで解決する建築家として、独自の建築手法を展開してきました。例えば、80年代に再生紙でできた「紙管」に着目した坂は、多くの研究と開発を経て「紙の家」や「ハノーバー国際博覧会日本館」を実現させた一方、安価でどこでも入手できるという利点を活かして、「紙のログハウス」「避難所用簡易間仕切り(Paper Partition System)」といった災害支援へと発展させました。また、海上輸送コンテナを利用した「ノマディック・ミュージアム」や、それを多層化させて実現した「コンテナ多層仮設住宅(宮城県女川町)」、街角で見かけた中国製の帽子にヒントを得た「ポンピドゥーセンター・メス」など、その活動は幅広く、国際的に高い評価を受けています。本展では、坂の初期作品から代表作「ポンピドゥーセンター・メス」、および進行中のプロジェクトに至るまで、坂茂の仕事を写真、映像、模型、立体展示で辿ります。日本初の試みとなった3階建てのコンテナ仮設住宅の実物大モックアップ(一世帯)を屋外に展示し、坂茂の活動の全貌を俯瞰できる構成を予定しています。
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