山崎亮の「コミュニティデザインの時代 自分たちで『まつ』をつくる」(中公新書:2012年9月25日発行)を読みました。
本のカバー裏には、以下のようにあります。
孤立死や無縁社会という言葉が毎日口にされる現在の日本。今こそ人とのつながりを自らの手で葛句必要が痛感されている。この時代の声に応え、全国で常時50以上のコミュニティづくりに携わる著者が始めて明かす、住民参加・思考型の手法と実際。「デザインしないデザイン」によって全員に参加してもらい結果を出すには? 話の聴き方から服装にいたるまで、独自の理論を開陳する。ビジネスの場でも役立つ、真に実践的な書。
山崎亮の略歴は、以下の通りです。
1973(昭和48)年、愛知県生まれ。コミュニティ・デザイナー。株式会社studio-L代表。京都造形芸術大学教授。人と人とのつながりを基本に、地域の課題を地域に住む人たちが解決し、一人ひとりが豊かに生きるためのいコミュニティデザインを実践。まちづくりのワークショップ、市民参加型のパークマネジメントなど、50以上のプロジェクトに取り組んでいる。著書に「コミュニティデザイン」(学芸出版社、2011)、「コミュニティデザインの仕事」(ブックエンド、2012)、「ソーシャルデザイン・アトラス」(鹿島出版会、2012)。
目次
まえがき
第1章 なぜいま「コミュニティ」なのか
1.自由と安心のバランス
2.まちが寂しくなった理由
3.「昔はよかった」のか
4.人口減少先進地に学ぶ
5.ハード整備偏重時代の終焉
6.まちに関わること
7.パブリックとコミュニティ
第2章 つながりのデザイン
1.宣言について
2.まちの豊かさとは何か
3.コミュニティとデザインについて
4.肩書きについて
5.ブライアン・オニールという人
6.変化するコミュニティデザイン
第3章 人が変わる、地域が変わる
1.人が育つ(中村さんの場合)
2.コミュニティ活動に参加する意義(小田川さんの場合)
3.チームについて
4.中山間離島地域に学ぶ
5.集落診断士と復興支援員
第4章 コミュニティデザインの方法
1.コミュニティデザインの進め方
2.ファシリテーションと事例について
3.地域との接し方
4.雰囲気について
5.資質について
6.教育について
7.行政職員との付き合い方
8.コミュニティの自走
あとがき
本書に出てくる主なプロジェクトの概要
この本の中で著者は、第2章以降の、多くの現場に立ち会って学んできた実践的なコミュニティデザインの手法について多くを割いていますが、その背景となるいわば「現状の問題点の分析」ともいえる、第1章 なぜいま「コミュニティ」なのか、が、僕の興味を惹きました。挙げられているのはほとんどが今まで言われてきたことばかりなのですが、その切り口が見事なのです。
たとえば「現在から前後100年間の人口の増減」というグラフには驚かされます。彼はこう言います。「長い歴史を考えれば、むしろこの200年というのは人口が特異なほど増加して減少した時期だったということになるかもしれない。その前後1000年の間は、ずっと人口400万人くらいで過ごしてきた国が日本だったということなのかもしれない。だとすれば、僕たちは相当特殊な時代を生きていると考えた方がいい」と。
また著者は、「3500万人というのが無理をせずに生きていける日本の適正人口規模なのかもしれない」という。「だとすれば、当然現在の総人口は多すぎる。・・・太りすぎた日本のダイエットに無理が生じないよう、緩やかに適正な体重まで戻していくための政策が必要なのかもしれない」として、「昔はよかったというばかりなく、昔は少し無理をしていたと考えてみると、さらに長い歴史の中で、適正だった人口規模に戻ろうとする地元の将来像がどうあるべきかをポジティブに考えることができるかもしれない」といいます。