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Channel: とんとん・にっき
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ワン・ビン監督の「無言歌」を観た!

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1956年にソビエトでスターリン批判が行われて、社会主義国でもある程度の批判の自由は必要だということが明らかになります。それを受けて毛沢東は、自由な批判的な言論は歓迎するという方針を示しました。知識層の人たちは喜んで共産党の政策への疑問や批判を公言するようになりました。しかし翌年、一転してそれらの意見を述べた人たちは反革命の右派であるとして、彼らを一斉に逮捕します。これが「反右派闘争」と呼ばれる弾圧事件でした。


1960年、政治的に批判的な発言をしただけで「右派」とされた知識人たちは、ゴビ砂漠に近い辺境に地に追いやられます。「労働教育農場」と呼ばれる、荒れ地を掘って簡素な屋根を付けただけの収容所に収容されています。荒れ地の開墾が与えられた仕事ですが、食料は極端に不足して、水のような粥をすすり、毎日の強制労働で、疲れ果てて眠るだけの毎日です。空腹に堪えかねて、仲間の吐瀉物を口に運び、捕まえた鼠を貪り食べます。果ては人肉までをも食料になる始末。労働どころか、寒さと飢えて次々と仲間が死んでゆきます。


そこにある日、上海からはるばる収容されていた人の妻である女性がやってきます。夫に会いたい一心でしたが、数日前に衰弱で亡くなっていました。彼の遺体を埋葬する体力が、仲間にはもうありません。死体は地面に野ざらしにしておくだけです。そのことを彼女に言う勇気はありませんでしたが、彼女が遺体を置いた場所を遮二無二探し始めると、仕方なく死体を置いた場所へと案内します。地面に晒された死体は、誰かに肉をえぐられたあとがあったりもしています。彼女の嗚咽する声が砂漠にこだまします。


1966年に起こった「文化大革命」は、その誤りについて批判したり反省する映画は数多くありますが、なぜか「反右派闘争」を描いた映画はこの「無言歌」が初めてでしょう。王兵監督は「歴史映画を現在と地続きなものにする撮り方を考えていた」という。弾圧の経験者たちに取材した上で「物語性をそぎ落とした」という。なるほど、余計な描写はひとつもない。「絶望のどん底にありながら、なんとか最小限でも人間らしさを保とうとする、そんな息もたえだえの自尊心がそこににじみ出ている。それが実に厳粛である」と佐藤忠男は言う。「重い」映画です。


以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。


チェック:山形国際ドキュメンタリー映画祭で2度のグランプリ受賞歴を持つ中国映画界の鬼才、ワン・ビン監督が初の長編劇映画に挑んだ歴史ドラマ。文化大革命前に起きた中国共産党による弾圧「反右派闘争」がもたらした悲劇を、ヤン・シエンホイの小説「告別夾辺溝」と過酷な体験を生き延びた生存者たちの証言を基に描き出す。中国では現在もタブーとされている史実を題材に人間の尊厳を問う物語は、ベネチア国際映画祭をはじめ世界各国で絶賛された。

ストーリー:1956年、毛沢東が共産党への批判を歓迎すると表明したことで人々は自由に発言するが、翌年方針が変わり、党を批判した人々は弾圧される。1960年、中国西部ゴビ砂漠の収容所で強制労働に明け暮れる男たちは、ろくに食料も与えられず感情すら失いかけていた。風が吹き荒れ、砂が舞い散る荒野で、食事はわずかしか与えられない環境の中、8番壕(ごう)に2人の男が配置され……。


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「無言歌」公式サイト




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