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Pen2012 1/1号 No.305「あらゆる価値観を一変させた、ルネサンスとは何か。」

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ぶらりと本屋へ立ち寄ったら、上の本が目に入りました。なにはともあれ「保存版」の文字に弱い。ついつい買ってしまいました。前の記事、「BRUTUS Casa アートと建築を巡る旅へ!日本の美術館ベスト100ガイド」のときに、こう書きました。そうです、一緒に買った本です。「pen」は、ジムに行ったときに必ず手に取りますが、「完全保存版」と書かれていると弱いんですよね。ルネサンス好きの僕には、大変分かり易くて、しかもカラフル、写真が綺麗、言うことなしです。なにしろ表紙がボッティチェッリですから、買わないわけにはいきません。


何度か書いていますが、僕のルネサンス好きは、辻邦生の「春の戴冠」(新潮社:1977年)を読んだことに始まります。この本を読んで、是が非でもボッティチェッリの「プリマヴェーラ(春)」と「ヴィーナスの誕生」を観にウフィッツィ美術館に行こうと、その時思ったものです。念願かなって1990年に始めて観に行くことが出来、その後何度かウフィッツィを訪れています。ダ・ヴィンチの「受胎告知」とか、最初は歴史に残る名作ばかりに目がいってましたが、けっこう「際物」もあり、それもまた面白く思いました。


切り落とした首を手に持ったものとかカラッチの「男と猿」とか、時代は少し新しいですが、カラヴァッジョの「若きヴァッカス」は有名ですが、「メドゥーサの頭部」は髪の毛が蛇だったりします。ジュゼッペ・マリア・クレスビの「ノミ」は、乱れた部屋で寝間着でノミを取っている場面を描いたもの、息子は「売春婦の惨めな人生」の絵を描いたと証言したものです。けっこう教訓にとんでいる題材らしいのですが。



もちろん、ルネサンスと言えば「建築」の宝庫です。「建築史」の教科書では、ルネサンス建築が中心です。「建築におけるルネサンスは、他の諸芸術の場合よりも一層、古典の復興という色彩が強い」とあります。ルネサンス最初の建築家は、建築家の始まり、ブルネレスキ(1377-144)と言われています。サン・ジョヴァンニ洗礼堂の扉のコンクールではギベルディに譲りましたが、その後、ドナテッロを伴い、ローマで古代建築を研究し、大聖堂のクーポラを再びギベルディと戦い、実施を勝ち取りました。捨て子養育園、サン・ロレンツォ聖堂など、ルネサンス建築の代表作を数多く手がけました。「線遠近法」を発明したことでも、歴史に残る理論家です。


ルネサンス建築と言えば、「イタリア・ルネッサンスの建築」(ピーター・マレー著、長尾重武訳)という本がSDライブラリーから1991年に出ています。これはルネサンス建築の本の決定版です。僕にとってはルネサンス建築のバイブルです。もう何度も読み直しました。やはりルネサンス建築はフィレンツェに多くかたまってあります。フィレンツェに行くたびに、ルネサンス建築を観た数が一つ二つ増えていきます。前回、といっても5年前ぐらいだったか、見逃していたブルネッレスキの旧聖器室と、パッツィ家礼拝堂を観ることができました。その前に行った時にサン・ロレンツォ教会のミケランジェロの新聖器室は観ていたり、サンタ・クローチェ聖堂は観ていたのですが、そぐ隣にあった名作を見逃していたというわけです。


ルネサンスと言えば、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロ、この3人を除いては語れません。田中穣「イタリアルネサンスの旅」(JTBキャンブックス:1996年12月1日初版発行)には、ルネサンス入門として、何度も読み返しました。宮下孝晴・佐藤幸三他「フィレンツェ美術散歩」(とんぼの本:1991年1月30日発行)、これも何度も読み返しました。昔は、ブルクハルトの「イタリア・ルネサンスの文化」とか、樺山紘一の「ルネサンスと地中海」とか、あるいは澤井繁男の「イタリア・ルネサンス」とか、森田義之の「メディチ家」とか、ありとあらゆるルネサンス本を手当たり次第に読みましたが、どうしても文字だけの本ではその姿かたちが伝わらないので、上の2冊にはずいぶん助けられました。


数年前に買った本、「ルネサンス美術館」(小学館:2008年10月29日初版第1刷発行)も、「発刊記念特別定価9975円」につられて買ってしまいました。本の帯には、「ルネサンス美術を拡大して凝視してみたら、見えないものが見えてくる。知りたいことが、手に取るようだ。」とあります。


話を元に戻して、というか、今までが脱線続きだったのですが、最後に「14歳の私をぶちのめした、ルネサンスの衝撃」という、漫画家ヤマザキマリのエッセイの話を。一人旅をしていた14歳の私がマルコ爺さんとの出会いで「ローマを、フィレンツェを、ベネチアを見ないで何がヨーロッパだ!」と一括された話、3年後、文通していたマルコ爺さんから「人生は一度きりなんだから、無駄にできる時間はこれっぽっちもない」と説得されてイタリアへ向かったこと、イタリアはあまりにもアクが強くて消化不良に苦しんだこと、爺さん自慢のパッサーノの街でルネサンス時代に建てられた「ポンテ・ヴェッキオ」に出会い、パッラーディオという「歴史上で一番始めの職業建築家」(僕はブルネレッスキだと思うけど)を知ったこと、パッラーディオの街ヴィチェンツィアの街でホームステイして、マルコ爺さんに紹介された画塾に通ったこと、「そして私が得た伴侶は何と、かのマルコ爺さんの孫」だったというオチ、これは面白いのでぜひとも一読を!僕もヴィチェンツィアの街で、カメラマンの友人と二人で、パッラーディオの建築を観て回ったことを思い出しました。


とんとん・にっき-pen4

ルネサンス……その魅惑的な響きから想起されるイメージは、それぞれ千差万別でしょう。ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』? ボッティチェッリの『春』? それともフィレンツェのドゥオーモ?そもそもルネサンスという、その後の西洋社会の文化史と精神史を一変させた一大ムーブメントとは、一体何だったのでしょうか。今号ではその興りから隆盛、そして終焉までをさまざまな角度からつぶさに検証、解説。この一冊で西洋美術の重要キーワード「ルネサンス」を理解しましょう!


最新号目次
2012 1/1号 No.305


あらゆる価値観を一変させた、ルネサンスとは何か。
|Firenze フィレンツェ|覇権を握った街に、ルネサンスという花が開いた。
|Venezia ベネチア|海の都を燦然と輝かせた、東西文化のクロスオーバー

天才たちがひしめいた、三百余年を振り返る。
傑作を追いかけて、世界を巡る旅に出よう。
ひと目でわかる、ルネサンスVIP人脈図。
ルネサンスが興った理由とは、何だったのか。
最大のパトロンとなった、メディチ家とは?
ルネサンス絵画に特徴的な、画材と技法。
芸術のあり方を変えた、3大巨匠の功績。

【プロト・ルネサンス】来たるべき時代の序章を飾る、重要作家たち。
【初期ルネサンス】同時代の偉才が切り拓いた、新たな幕開け。
【盛期ルネサンス】百花繚乱に咲き誇る、最盛期の煌きを見よ!
【北方ルネサンス】油彩技術の発達で、驚異の細密画が実現。
【ベネチア派】官能的な色と光が、享楽の都の芸術を支配。

14歳の私をぶちのめした、ルネサンスの衝撃。
─文・画/ヤマザキマリ(漫画家)
レオナルドの手稿に透ける、科学への眼差し。
お洒落に目覚めた人々が、個性を競った時代。
キーワードで読み解く、当時の価値観と風俗。
歴史にその名を刻んだ女性たちは、強く儚く美しい。
輝かしきルネサンスは、なぜ終わったのか?


とんとん・にっき-ren1 「ルネサンス美術館」

2008年10月29日初版第1刷発行

監修:石鍋真澄

発行所:小学館
とんとん・にっき-ren2 SDライブラリー

「イタリア・ルネッサンスの建築」

著者:ピーター・マレー

訳者:長尾重武

発行:1991年3月10日

発行所:鹿島出版会









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