府中市美術館で「府中美術館常設展 明治・大正・昭和の洋画」を観てきました。先月、9月30日のことです。観に行ったのは、「ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅」でした。主たる企画展である「デルヴォー」も良かったのですが、常設展もなにかやってるからついでに観ておこうと立ち寄ったら、これがどうして、なかなかなものでした。僕がよく行く美術館、例えば、神奈川県立近代美術館、世田谷美術館、千葉市美術館、茨城県立美術館などは、常設展が充実しています。
常設展といっても、企画展と比べて見劣りがしないどころか、ときには企画展を上回る内容のものもあります。また常設展とはいえ、展示されているものが展示替えする場合もあります。府中市美術館、約1800点の収蔵作品から、常時40点から60点の作品を展示しています、とありました。ちなみに 平成24年度の予定を下に載せておきます。
5月19日(土曜日)から9月2日(日曜日)まで
府中・多摩の美術
9月12日(水曜日)から11月11日(日曜日)まで
明治・大正・昭和の洋画
小特集 江戸時代の絵画
11月23日(金曜日、祝日)から2月24日(日曜日)まで
現代の美術
3月9日(土曜日)から5月6日(月曜日、祝日)まで
明治・大正・昭和の洋画
小特集 司馬江漢
作品リストによると、「明治・大正・昭和」として今回展示されていた作品はラファエル・コランの「フロレアル」、チャールズ・ワーグマンの「街道風景」「三味線を弾く女」を含め46点、他に小特集として「江戸時代の絵画」が別室で宋紫石の三幅対「寿老人・牡丹図」を含め6点、ロビー展示には遠藤彰子の「光景」がありました。また牛島憲之記念館では「名作選」として、牛島憲之の作品25点が展示されていました。
先日江戸博で開催されている「維新の洋画家 川村清雄」を観てきました。清雄は、徳川家の援助を受けてヴェネツィア美術学校に入り、優秀な成績を収めて帰国します。帰国した彼を待っていたのはフランス美術の強い影響に染まる日本画壇でした。清雄が修めたイタリア伝統の油彩画は時流に入れられず、やがて清雄も画壇に背を向けることになりますが、繊細な写実表現を基礎に、日本画風の題材や質感を強調した作品を描きました。
チャールズ・ワーグマンが日本にやってきます。ワーグマンは仕事のかたわら日本の風俗を描き、五姓田義松らに油彩画を教えます。義松はその後、工部美術学校でフォンタネージに学び、フランスへ渡ります。義松はおよそ7年の滞在を終えて帰国します。山本芳翠はフランスで、レオン・ジェロームに師事し、10年間滞在しています。日本人画家による最初の裸婦蔵を描いたことはよく知られています。
高橋由一は、義松に1年遅れてワーグマンの元を訪れ、洋画の修行を始めます。明治中期以降の日本の洋画界の中核になったのは、黒田清輝でした。フランスで絵画の基礎を学び、コラン教室に入って画家の修業を始めます。その精神は、東京美術学校、芸大へと流れて定着しました。鹿子木孟郎も黒田の紹介で最初はコランに学びます。その後、ジャン=ポール・ローランスの門を叩きます。ローランスは、コランと比べると、ヨーロッパの伝統を重んじた正統派の画家でした。油彩画のわが国における受容は、こうした幾つかの道がありました。
「府中美術館常設展 明治・大正・昭和の洋画」を観て、油彩画という観点から良かったと思われる作品を、僕の独断と偏見で選びだし、下に載せておきます。
「府中市美術館」ホームページ