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練馬区立美術館で「棚田康司『たちのぼる。』展」を観た!

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練馬区立美術館で「棚田康司『たちのぼる。』展」を観てきました。


僕は棚田康司の作品を観るのは過去に一度だけ、昨年、青山のスパイラルガーデンで「棚田康司展 『○と―』」を観ました。「○と―」は「らせんとえんてい」と、ふりがながふってありました。


棚田は、大学院時代、木材にFRPや鉄などの異素材を組み合わせた作品を制作していました。このミクストメディアによる制作は1999年まで続き、2000年になると次第にFRPが影を潜めていきます。その翌年、文化庁の芸術家在外研修員として派遣されたドイツ・ベルリンでの7ヶ月間の滞在が、棚田の制作活動に決定的な影響を与えます。2002年に帰国した棚田の作風は、それまでの自らの頭部を利用した人物像から、他者へと目を向けたものへと移行します。対象への焦点を絞り込み、子供たちへとその目を向けるようになりました。


棚田はドイツ滞在時、西欧人との体軀の違いや、木に命を見出す日本人の感性に改めて気付いたという。以来、日本古来の木彫技法「一木造り」を用いて、大人でも子供でもない、か細い肢体と憂いを秘めた表情を持つ少年少女の像を作り出し、独特な存在感を放つ像で注目されるようになりました。今回の「棚田康司『たちのぼる。』展」は、これまで一貫して「人間」を、そして「子供」を彫り続ける棚田の一連の作品群を、新作、制作過程のスケッチなども含め、網羅的に紹介されています。


棚田康司プロフィール

1968 兵庫県明石市生まれ 神奈川県茅ヶ崎市在住

1993 東京造形大学造形学部美術学科Ⅱ類(彫刻)卒業

1995 東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了(深井隆研究室)

2001 文化庁芸術家在外研修員として7ヶ月ベルリンに滞在

2005 「第8回岡本太郎記念現代芸術大賞」特別賞受賞

2010 第20回タカシマヤ美術賞受賞

現在 神奈川県にアトリエを構える


今回の展覧会のタイトルである「たちのぼる」という言葉は、煙のイメージから湧き出たもの。棚田の新作のタイトルに由来するものだが、煙のようにゆらゆらと揺れながら、天空へ昇っていく少年に、あらゆる試練に遭遇しつつも、1人の人間として上昇するイメージ、また上昇してほしいという思いを集約している、という。


スパイラルガーデンの「ナギとナミ」にも驚かされましたが、練馬区立美術館のロビーに展示された「たちのぼる―少年の場合」にも驚かされました。なにしろ天井から1本のロープがぶら下がり、その下の少年の木彫は頭を下に、木の塊に頭を突っ込んだように見えます。なんとも不安定な形態なのでしょう。


ドイツから帰国して以降、棚田の対象は子供たちへと移行し、それは現在も続いています。しかし棚田は、単に造形的興味から子供たちの像を彫り続けるのではなく、子供たちに対する棚田自身の強い思い入れがあるのでしょう。棚田の意識は、現代社会を生きる子供たちを捉え、彼自身が自らと向かい合う術としているとも、またわれわれに人間を剥き出しにして突きつけているとも考えられるのではないでしょうか、と「ニュース」は伝えています。








「棚田康司『たちのぼる。』展」

彫刻家、棚田康司は、これまで一貫して「人間」を、そして「少年少女」を彫り続けてきました。棚田の約20 年に亘る制作活動の中でも、とりわけ重要なモチーフとして存在し続けているのは「少年少女」です。それは、すでに子供ではないけれど、まだ大人でもない少年少女のように、あいまいな境界線に漂う存在が棚田の制作のテーマであるためです。不安定さや繊細さ、そして危うさを秘めた彼らは、我々が気づいていない人間としての本質的な部分を露わにした存在とも言えるかもしれません。モチーフは変わらずとも、少年少女の形態は作品ごとに変化を帯びています。それは木という自然物を材料としているためでもありますが、加えて棚田の彼らを捉える視点の変化によるものです。「棚田康司-たちのぼる。」展と題した本展は、棚田にとって東京の美術館における初の個展となります。大学院修了作品から新作まで、また制作過程のスケッチなども含め、棚田の一連の作品群を網羅します。「たちのぼる。」という言葉は、煙のイメージから湧き出たものです。それは新作のタイトルに由来するものでありますが、煙のようにゆらゆらと揺れながら、天空へ昇っていく少年に、あらゆる試練に遭遇しつつも、ひとりの人間として上昇するイメージ、また上昇して欲しいという思いが集約されています。本展を通して、棚田の作品世界に触れて頂くと同時に、現代美術における木彫の一側面を捉える機会となりましたら幸いです。


「練馬区立美術館」ホームページ


とんとん・にっき-tana1 「棚田康司作品集 たちのぼる。」

著者:棚田康司

出版社:青幻社

発売日:2012年10月19日

練馬区立美術館、伊丹市立美術館開催の棚田康司展「たちのぼる。」公式カタログ
執筆者:堀江敏幸(小説家)/Lrnd Hegyi(キュレーター)/小野寛子(練馬区立美術館)/岡本梓(伊丹市立美術館) デザイン:古平正義

本書は、90年代の初期作品から、最新作までを収録した棚田の作品世界を俯瞰できる本格的な作品集です。


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