東京では23日に渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開幕する「フェルメールからのラブレター展」、オランダ絵画約40点の展示のうち、フェルメールの作品が3点出品されるというので話題を呼んでいます。3点に共通して描かれる「女性と手紙」、さらに室内に配置される小道具の意味を知ることで、それぞれの作品がもつ物語が見えてくるという。2011年12月17日の朝日新聞(夕刊)に、「フェルメールからのラブレター展」の日本側監修者・千足伸行(成城大学名誉教授)の解説が載っていました。以下、その要旨を載せておきます。
フェルメールの絵の真の「主題」は、そのデリケートな光や美しい色彩であるとよく言われる。だが、彼の絵の中の楽器、鏡、地図などの小道具は、ときに絵に意味や物語性をもたせるための「仕掛け」になっている。それらに導かれるのなら「手紙」は、ただの近況報告や時候のあいさつではなく、ラブレターの可能性が高い。
「手紙を書く女」の女性は、部屋の中の誰かに気をとられたかのようにこちらに視線を向けている。書きかけの手紙の中身は見えない。しかし、背後の壁にかかった黒ずんだ絵は楽器を描いているように見え、とすると、これはラブレターということになろう。古来、楽器あるいは音楽のモチーフは、恋のムードを高めるものとしてしばしば登場しているからである。
「手紙を書く女と召使」では、わきに召使の女が控えて、女主人が手紙を書き終えるのを待っている。テーブルの手前の床には別の手紙が落ちているが、ここでも壁に掛かった絵が一つのヒントになっている。絵は旧約聖書にある「モーセの発見」で、その主題は神の意志による不和のとりなし、和解とされる。つまり、この女性は恋人からの手紙を不機嫌に一度は投げ捨てたものの、思い直して仲直りの手紙を書いていると考えられるのである。
「手紙を読む青衣の女」では、女性の後ろにオランダの大きな地図が掛かっている。当時独立して意気あがる祖国のシンボルであると同時に、手紙の送り主が旅に出ていることを暗示しているようでもある。ゴッホはこの絵について、女性は「身重である」と明言しており、とすれば、彼女は既婚、手紙は彼女の夫からということになろう。だが、マタニティドレスのような服は、当時のファッションにすぎないという説もある。
女性たちが読み、書いているのは誰あての、誰からのラブレター? たまにはフェルメールのこうした「仕掛け」にはまってみるのも一興であろう。と、千足伸行は言う。
「フェルメール巡礼」
とんぼの本
著者:朽木ゆり子 前橋重二
発行:2011年11月25日
発行所:株式会社新潮社
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