ユ・ハ監督・脚本の「凍える牙」を観てきました。朝日新聞8月31日の広告特集に、一面見開きで「凍える牙」の広告が載っていました。僕が映画を観るときはだいたい監督で選ぶ場合が多いのですが、ユ・ハ監督は初めて観る監督でした。
監督で選ぶ以外の場合も、もちろんあります。今回の主演ソン・ガンホは、追っかけている俳優の一人です。取り立てて美男でもないし、ほとんどが妻に逃げられた情けない男、のような感じの役が多いので、好きな俳優の一人です。「シークレット・サンシャイン」(2006)、 「渇き」 (2009)、「義兄弟」(2010)、 「青い塩」(2012)など、観ましたね。その前に 「大統領の理髪師」(2004)がありました。代表作と言われている 「殺人の追憶」(2004)を借りてこようと思っていましたが、その前に「凍える牙」を観てきた、というわけですが。「凍える牙」の相手役の女優、なんとオダギリ・ジョーと「悲夢」で共演した女優イ・ナヨンだったんですね。あのスッキリした顔立ちが僕は好きです。
「凍える牙」の原作が乃南アサだというから、これも驚きです。新聞には「ウルフドッグ/狼犬という獰猛な獣による前代未聞の連続殺人の行方と、その困難な捜査に挑む刑事達の人間模様を描き、見事、直木賞を受賞」とありました。続けて「ヒロイン音道貴子が絶大な人気を誇るシリーズ第1作目でもある」とあります。シリーズ累計230万部を超えるこのベストセラーは、2001年に天海祐希主演、2010年に木村佳乃と、2度もTVドラマ化されていたようです。いや、乃南アサの作品がTVドラマ化されていたことはまったく知りませんでした。ちなみに僕は、乃南アサの作品は一冊も読んでいません。
乃南アサの作品では主人公は女性刑事、しかし今回映画化にあたってユ・ハ監督は、原作では脇役だったが、ソン・ガンホの男性刑事にも重点をおいて脚本化したそうです。ソン・ガンホ、独特の飄々とした芸風で、行き詰まった中年男の悲哀と苦悩を見事に表現した、と新聞にありました。一方の主役、新米女性刑事ウニュン役を演じたのはイ・ナヨン、透明感のある中性的な魅力で、まさにはまり役と言える、とあります。オートバイを乗り回し、身体を張った格闘シーンも大きな見どころです。
2人の主役以外に、この映画のもう一方の主役は「ウルフドック/狼犬」です。犬でも狼でもない、どの種類にも属さないよそ者です。追ってきて、飛びかかり、のど元を食い千切ります。これが怖い。が、ウニョンを火事場から助け出したりします。ラストは、刑事達を犯人にいる場所へ道案内したりもします。ウニョンと狼犬、目と目が合ったりもします。その目のやさしいこと。
物語はありふれた話で、不可解な事件を任されたのが、冴えない中年刑事と新米女性刑事。出世競争に負けっ放しの中年刑事は、新米女性刑事のお守り役を押しつけられ、腹が立って仕方がない。ここは一発逆転を狙って手柄を独占しようと、勝手に捜査を進めます。コンビを組まされた女性刑事は、着任早々から男性社会の洗礼を受けます。相棒にはお荷物扱いされ、パワハラ、セクハラ、なんでもござれの部署でもあります。不器用な彼女は美人なのにそれは封印して、あくまでも正攻法、刑事という仕事への情熱、執念という一途さだけです。
以下、とりあえず、「シネマトゥデイ」より引用しました。
チェック:人気作家・乃南アサの直木賞受賞作を基にした、クライム・サスペンス。原因不明の人体発火事件を追い掛けるベテランと新人の刑事コンビが、犬とおおかみを交配させた“殺人犬”が絡む驚がくの真相と対峙(たいじ)していく。『マルチュク青春通り』のユ・ハがメガホンを取り、緩急自在なタッチで異様な事件の行方を活写。『グエムル -漢江の怪物-』などのソン・ガンホが、出世コースから外れた哀愁漂う中年刑事を力演する。彼とコンビを組む刑事に『悲夢(ヒム)』のイ・ナヨンがふんし、バイクを駆る迫力のアクションを体当たりでこなしている。
ストーリー:車中にいた男の体が突如として燃え上がり、車ごと全焼する事件が起きた。ベテランのサンギル(ソン・ガンホ)と元白バイ警官の新人ウニョン(イ・ナヨン)の二人が事件を担当するが、サンギルは自殺だと判断。だが、遺体に獣のかみ跡があり、腰に締めたベルトに発火装置と強い引火性のある化学物質が見付かる。さらに、被害者が麻薬絡みの犯罪者であったことを突き止めたサンギルたちは、彼の周辺を念入りに調べていく。そんな中、被害者の知人である前科者が、おおかみとも犬ともつかぬ獣に殺されるという新たな事件が起きる。
「凍える牙」公式サイト
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