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ヤン・ヨンヒ監督の「かぞくのくに」を観た!

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誰もが悲しみ、誰もが苦しむ映画です。家族を引き裂く国家とはなんなのか? 浦山桐郎監督、吉永小百合主演の「キューポラのある町」を観た時に、以下のように書きました。僕が小学校3、4年の頃、朝鮮人の子が同じ学級に何人かはいました。僕と仲良かった友達の名はいまでも覚えています。「ショウヘイショウ」、彼は突然、北朝鮮に帰ってしまいました。


先ほどもテレビのニュースでは「日朝赤十字会談」を取り上げていました。日本政府内にはこう着状態が続く日本人拉致問題に関する協議を再開する糸口にしたい思惑があると、報じていました。菊池嘉晃の「北朝鮮帰国事業」(中公新書 2009年11月25日発行)、副題には「壮大な拉致」か「追放」か、とあり、またカバーの裏には以下のようにあります。


1959年から四半世紀にわたって行われた北朝鮮帰国事業。「地上の楽園」と宣伝された彼の地に在日コリアン、日本人妻など約10万人が渡った。だが帰国後、彼らは劣悪な生活環境・監視・差別に苦しむ。本書は、近年公開された史料や証言を基に、南北統一への活用を意図した北朝鮮の思惑と、過激な政治分子と貧困層排除を目論んだという「日本策略論」を検証し、どのように事業は行われ、「悲劇」が生まれたかを追う。


「かぞくのくに」は、在日コリアン一家の16歳で北朝鮮に移住した長男が、病気治療のために、25年ぶりに日本へ帰って来るところから始まります。1997年の東京の下町、母(宮崎美子)の営む喫茶店で、妹リエ(安藤サクラ)が幼い頃に別れた兄ソンホ(井浦新)の帰りを待っています。北朝鮮と日本の関係、帰国事業、在日2世のヤン・ヨンヒ監督の実体験に基づいたもので、初の劇映画だという。


家族が全員揃った食卓でも、ソンホは「日本のビールは美味い!」と言いながらも、なぜか食べません。高校時代の同級生の集まりで、なぜか居心地が悪そうなソンホ。「白いブランコ」をみんなでうたったりもします。家族も同級生も、みんながソンホを腫れ物を扱うように気を使います。都心のブランド品の店でメタリックのスーツケースを選ぶソンホ、それを温かい目で見守るリエ。そんな妹に、兄が情報提供者にならないかと持ちかけます。妹は即座に激しく拒否します。


北朝鮮からソンホに同行してきた監視員に対してもリエは怒りをぶつけます。ソンホが北朝鮮へ行った裏には、北朝鮮を楽園と信じていた父親の計らいがあったようです。ソンホは精密検査で脳に腫瘍が見つかり、手術などで滞在期間の延長を申請しようとすると、突然、帰国命令が出て、家族の再会は、たった7日間で終わってしまいます。組織に属する父親も、当然のことながら組織に言われるまま、まったくなにもできません。


同窓会の時はほとんど会話を交わさなかった女友達スニ(京野ことみ)は、先に帰るときにソンホに連絡先を書いた紙を手渡します。リエは夫が医者だというスニに、ソンホの病院の転院のことで相談したりもしていました。ソンホは帰国することが決まったので、思い切ってスニに連絡し、川沿いを2人で歩きます。過去に2人は恋仲だったことを、さりげなく示唆しています。この場面は泣けます。京のことみがいい。


母は、帰国するソンホの服を新調し、また同行した監視員の服までも用意してあります。新しい服を着た監視員の気持ちは察して余りあります。車に乗り込んだソンホの手を、リエは車が走り出しても離しません。いったん車は止まり、ソンホは下りてきますが、監視員に声をかけられて、再び車に乗り込みます。来たときと同じ川沿いの道をソンホを乗せた車は走り去っていきます。もちろん、ここも泣けます。


監視員役のヤン・イクチュンもいい。監督主演をした「息もできない」では、川沿いで寝そべって泣く場面が思い浮かびます。安藤サクラはもちろんいい、この映画は彼女の代表作でしょう。なんと大森立嗣が俳優として出ていました。安藤サクラの「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」の監督でした。この映画は、非情な政治のなかで生きる者たちの悲しさが渦巻いています。誰もが苦しんでいます。なんなんだ、これは!


以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。


チェック:『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』のヤン・ヨンヒ監督が北朝鮮と日本に暮らす自身の家族の境遇を三たび題材に掲げ、初のフィクション映画として作り上げた家族ドラマ。北朝鮮に住む兄が病の治療のために25年ぶりに帰国し、思想や価値観の違いに戸惑い、理不尽な政治情勢に振り回される家族の様子を描いていく。日本に住む妹に安藤サクラ、北朝鮮から一時帰国する兄に井浦新がふんするほか、『息もできない』のヤン・イクチュン、京野ことみなど実力あるキャストが顔をそろえる。擦れ違いながらも愛情にあふれる家族の姿が胸を打つ。

ストーリー:日本に住むリエ(安藤サクラ)と帰国事業で北朝鮮へ帰った兄ソンホ(井浦新)。離れて暮らして25年が経ち、ソンホが病気の治療のために日本に帰国することになった。期間は3か月。家族や仲間はソンホとの再会を喜ぶ一方、担当医には3か月では治療は不可能と告げられる。しかし、滞在延長を申請しようとした矢先、本国から「明日帰国するよう」と命令が下り……。


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「かぞくのくに」公式サイト


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「兄~かぞくのくに」

著者:ヤン・ヨンヒ

発行:小学館

発行日:2012年7月23日発行

北朝鮮に渡って行った兄と「かぞく」の物語 。

人生に「もしも」はない。私たちの家族のひとりが「もしも・・・」と口にした時点で、きっと私たちの間で何かが壊れる。それが「何か」はわからないけれど、私たちの誰もが、この言葉を口にしたことがない。でも私は思ってしまう。もしも兄が帰国していなかったら?(本文より)。70年代に「帰国事業」で日本から北朝鮮に渡って行った3人の兄、旗振り役の総連幹部として息子を送り出す父と母。そして日本に残った私。国家や思想によって引き裂かれていく「かぞく」の姿を通して、「家族」とは何か、「国」とは何かを問いかける作品です。8月4日公開の映画「かぞくのくに」(第62回ベルリン国際映画祭アートシアター連盟賞受賞)の原作本として監督ヤン・ヨンヒ氏が自らの体験をもとに書き上げた真実の物語。



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