茨城県天心記念五浦美術館で所蔵品展「悠久の自然 山をみつめて」を観てきました。日本画18点、油彩画6点、水彩画4点、計28点の小規模な展覧会です。従って、図録はなく、出品目録のみでした。所蔵品展とありますが、天心記念五浦美術館は茨城県立近代美術館の分館のようなもので、図録が欲しければ水戸にある茨城県立近代美術館に行ってくれと、ミュージアムショップの方に言われました。次の日、近代美術館に行ったのですが、所蔵品の図録を購入するのを忘れました。
天心記念美術館ですから、言うまでもなく岡倉天心を記念した美術館、そして「五浦の作家」です。茨城県北茨城市の五浦の地で、岡倉天心の指導を受けながら、日本画の近代化に向けて制作に励んだ4人の画家、横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山です。明治36年、天心は五浦の地に土地家屋を入手、明治38年に別荘を新築、六角堂を建てます。明治39年には日本美術院が五浦に転居、大観、観山、春草、武山が五浦に転居します。
4人揃って研究所で制作に励んだのはわずか1年でした。しかし、この4人が日本画の近代化に果たした役割は極めて大きく、五浦が近代日本画の発祥地として呼ばれる由縁もここにあります。特に横山大観は水戸の出身ということで、この美術館では数多く取り上げられています。茨城県天心記念五浦美術館内には、天心の多方面にわたる業績を顕彰すると共に、天心と大観ら五浦の作家たちが新しい日本画の創造に邁進した五浦の地の歴史的重要性を紹介しています。
以下の作品紹介は、「悠久の自然 山をみつめて」のチラシ裏によります。
ふるさとの山
筑波山は男体山と女体さん、二つの峰をもつ霊峰としても知られています。茨城県出身の大観は水辺に生きる人々と共に描き、この山への親しみを表しています。
登山家の眼で
山を愛した洋画家吉田博は、槍ヶ岳と眼下に広がる北アルプスの山々を雄大に描きました。折り重なる山肌のもつ表情の多彩さは、画家の山への眼差しを物語っています。
富士を一望
朝焼けに彩られた山容と雲の、一瞬の光景を的確に捉えています。江戸時代から描かれ続けた名所を、明治の洋画家は写実的に描いています。
高原の空気に誘われて
花が咲く緑豊かな高原と彼方に広がる山々、そして夏の空を覆う入道雲。大胆な筆致と明快な色彩が高原に幅さわやかな風まで運んでくるようです。
洞窟を抜けるとそこは・・・
桃の花に包まれた山奥、川を遡り洞窟を抜けるとそこはユートピアであったという中国の物語を描いた作品。平和な暮らしが暖かみのある柔らかな色彩から感じられます。
以下の画像は、日本橋高島屋で開催された「五浦と岡倉天心の遺産展」より
所蔵品展「悠久の自然 山をみつめて」
峻厳かつ壮大であり、季節や時刻の移り変わりによって様々な表情をみせる山の姿は画家を魅了し、多くの絵画にも描かれてきました。中でも富士山や筑波山などは好んで描かれた画題の一つであり、また、山水図や蓬萊山などは理想郷の山として画家自身の想像や心象がそこに託されていると言えるでしょう。本展覧会では横山大観らの日本画を中心に、五姓田義松らの洋画、小堀進らの水彩画を含む28点の作品により、日本人の自然観を反映した山を描いた絵画の魅力を紹介します。
過去の関連記事:
日本橋高島屋で「五浦と岡倉天心の遺産展」を観た!
茨城県天心記念五浦美術館で「小林巣居人の世界」展を観た!
2013年生誕150年没後100年記念
「天心」製作プロジェクト
監督:松村克弥
製作:星加正紀・河本隆・前川諭
脚本:我妻正義・松村克弥
監修・美術アドバイザー:古田亮
絵画指導:谷中武彦
撮影:芦澤明子
美術:池谷仙克
編集:川島章正
チラシ題字:秋葉生白