横須賀美術館で会期終了間近の「アメリカ美術を変えた日本人 国吉康雄展」を観てきました。
国吉康雄(1889~1953)は、岡山県に生まれ、若くしてアメリカに渡り、おもにニューヨークを制作の場として活躍した画家です。一度だけ日本に帰国し、数ヶ月滞在したものの、生涯にわたってアメリカノ美術界を活動の場として選び、そこで揺るぎない地位を築きました。
僕は2008年12月に、群馬県立館林美術館で、「国吉康雄(1889-1953)展―アメリカンドリームの光と影―福武コレクションによる絵画・版画・素描・写真」を観ました。今回の「アメリカ美術を変えた日本人 国吉康雄展」と同じく、「福武コレクション」を中心とした展覧会でした。「福武コレクション」は、ベネッセコーポレーションの経営者である岡山県出身の実業家・福武總一郎によって収集された世界最大を誇る国吉作品のコレクションです。
横須賀美術館の「アメリカ美術を変えた日本人 国吉康雄展」は、「福武コレクション」を中心に、岡山県立美術館、東京国立近代美術館、東京都現代美術館、そして横須賀美術館の所蔵する国吉作品を加えた110余点によって、20世紀前半のアメリカで評価を確立した、稀有な日本人画家の足跡を辿っています。
館林と横須賀の「国吉展」、どこが違うのか? 展示されている作品は、写真の部分はちょっと違うものの、ほとんど同じ作品が展示されていました。切り口は、というと、館林は、オーソドックスに年代順に区切って作品を展示しています。横須賀は、国吉康雄を知らない人に国吉康雄を知ってもらおうとする展示で、図録の構成に従って作品の展示が成されています。図録の「国吉康雄を知るQ25」を、下に載せておきます。質問一つ一つに対して、詳細な回答が載せられています。
画像は、立てば斜視も横須賀もほとんど同じだったので、館林で取り上げた画像以外を、ここでは取り上げています。従って、国吉の代表作と思われる作品は、今回は取り上げられなかった、ということも当然起こりえます。全体像としては、館林と横須賀の両方のブログの載せられた画像を参照してください。
国吉康雄を知るQ25
1:クニヨシって、だれですか?
2:出身地はどこ?
3:おとうさんも画家だったのですか?
4:どうしてアメリカヘ行ったの?
5:どこで絵を勉強したのですか?
6:結婚はしていたの?
7:なぜ、まんまる顔の人物を描いたの?
8:デビューは、いつだったんですか?
9:最初から絵が売れたの?
10:女性像のモデルは、だれですか?
11:趣味は、何だったのですか?
12:どこの風景を描いたのですか?
13:どんなところに住んでいたの?
14:写真の腕前は、どのくらい?
15:版画はたくさん刷りましたか?
16:写真を使って絵を描いてたってホント?
17:油彩や版画以外の絵はありますか?
18:日本的なところはありますか?
19:戦争中もアメリカで暮らせたの?
20:友達関係はどうだったの?
21:彼はアメリカ人になったの?
22:弟子はいたんですか?
23:どうしてサーカスの絵をたくさん描いたの?
24:国吉についてもっと知りたいです。どうすれば良いですか?
25:作品はどこで見られますか?
セザンヌの静物画を思わせる「果物のある静物」
海と女性を組み合わせて描いている「幸福の島」
ふくよかさを強調した「二人の赤ん坊」が目玉でしたが、
ここでは着飾った恰好の「カーテンを引く子供」を。
愛煙家の国芳画描いた「日本の張子の虎とがらくた」、
テーブルの上に葉巻があります。
不安定な構図、モティーフの崩れた形など、
廃墟の風景に通じる「逆さのテーブルトマスク」。
石版リトグラフによる「乳しぼり」、鋭角的にデフォルメされた牛は、
一時期、国吉のトレードマークともなった。
「少女よお前の生命のために走れ」は、
油彩ではなく、カゼインで描かれています。
「鯉のぼり」は、日本の鯉のぼりがモティーフになっています。
「ミスターエース」は、
道化師を主役に据えた最晩年の大作です。
「アメリカ美術を変えた日本人 国吉康雄展」
国吉康雄(1889-1953)は、20世紀前半のアメリカで活躍した日本人画家です。職を求めて渡ったアメリカで美術にめざめ、苦学の末にニューヨークの美術界で成功を掴んだ人物として知られます。そのドラマティックな人生は、近年ますます関心を集め、映画化が計画されるほどです。本展では、国吉作品の収集で世界最大の福武コレクションの協力に加え、岡山県立美術館、東京国立近代美術館、東京都現代美術館の所蔵作品もあわせた全110余点を通して、アメリカ美術の一時代を切り開いた国吉康雄の足跡を振り返ります。
横須賀美術館開館5周年
「国吉康雄展」ガイドブック
国吉康雄を知るQ25
編集:横須賀美術館
(冨田康子・中村貴絵)
発行:横須賀美術館
(横須賀市鴨居4-1)
発行日:2012年4月28日(第1刷)
群馬県立館林美術館企画展示
「国吉康雄(1889-1953)展」
福武コレクションによる
絵画・版画・素描・写真
論文執筆・編集:中田宏明
(群馬県立館林美術館)
論文執筆:伊藤佳之
(群馬県立館林美術館)
発行:群馬県立館林美術館
©2008
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