「明治生命館の保存と再生」
武庫川女子大学東京センター主催講演会シリーズ「わが国の近代建築の保存と再生」に行ってきました。今回は第4回でタイトルは「昭和の近代建築」です。プログラムは大きく二つ、一つは「わが国の近代建築:大正から昭和へ」として鈴木博之の講演、そしてもう一つは「明治生命館の保存と再生」として工事にかかわった竹中工務店のお二人の話と「明治生命館」の見学でした。
ここでは「明治生命館の保存と再生」ということで、加藤佳治さん(竹中工務店東京本店設計部)と中嶋徹さん(竹中工務店設計本部伝統建築グループ)の解説と、「明治生命館」の見学の様子を以下に載せておきます。お二人の話は重要文化財の「保存と再生」についての、技術的な話が中心でした。
明治生命館は増築されていたが、その部分を解体撤去し、元々あった明治生命館に戻し、新築された部分をアトリウムで結んだ建築とした。重要文化財に指定されたので、西側外壁、外観、1階営業室廻りを保存再生した。
1.石材の洗浄、復元
復元図の作成。東面外壁の復元。
皇居側は厳格に割り付けられていたが、東側はその場その場で割り付けられていた。
石材は中国で加工した。窓下部コーナー部分は壁と窓台が一体に加工されていた。
外壁の洗浄、全体を創建時に戻す。全体が白くなりすぎないか心配したが、
試験的な洗浄により確認しながら実施に 踏み切った。
物理的(削り落とすなど)な洗浄と、化学的(薬剤使用)な洗浄がある。
擬石装館(7階コーニスの部分)の補修、復元。
2.鋼製窓
お堀側、正面の二重サッシ
上げ下げ窓はオーバーホール、分解補修してそのまま使った。
裏側の一重サッシ→アルミへ変更した。
3.1階営業室の改修
創建時のデザインを残すため。
シャンデリアは耐震安全性処置
照明器具は24種類、吊り金物は4種類。
4.2階応接室、会議室の整備および家具の復元
GHQに接収されて改変されたものを元に戻した。
創建時の写真を元に復元。
ステンドグラスの復元、カーテンレールの復元。
5.講堂の天井レリーフ
正円と楕円のレリーフ、ガラス繊維入りの石膏で作った。
6.既存勾配床と、肘掛け椅子の復元。
オフィス機能の再生。
エアコン、照明器具、天井、電源増設、等々。
創建時にはなかった機能を付加した。
皇居側小部屋は眺望がいい。大部屋は内側に配置した。
7.ラウンジ、レストランの再生
1、2階の吹き抜けは、重要文化財の公開スペース
ステンドグラスの補修
8.アーカイブの整理
明治生命館の図面等史料
国会図書館や藝大に散逸していたものを、史料展示室に展示している。
修了後、重要文化財「明治生命館」の見学を行う。
重要文化財「明治生命館」のご紹介
・1934年(昭和9年)3月、3年7ヵ月の歳月をかけて竣工しました。設計は当時の建築学会の重鎮であった東京美術学校(現、東京芸術大学)教授岡田信一郎氏(※)です。古典主義様式の最高傑作として高く評価され、わが国近代洋風建築の発展に寄与した代表的な建造物と言われています。
※建築家・岡田信一郎氏/1883年(明治16年)東京生まれ。東大建築学科卒。大正から昭和初期にかけて、歌舞伎座、ニコライ堂修復、日本銀行小樽支店など、建設当時から話題になった作品を多く手がけた建築家です。
・1945年(昭和20年)9月12日から1956年(昭和31年)7月18日までの間、アメリカ極東空軍司令部として接収され、この間、1952年(昭和 27年)まで2階の会議室が連合国軍最高司令官の諮問機関である対日理事会の会場として使用されました。マッカーサー総司令官もこの会場で開催された会議に何回も出席しています。
・1997年(平成9年)5月29日、文化財保護審議会の答申によって、昭和の建造物として初めて国の重要文化財に指定されました。
外部廻り
1階廻り
2階廻り
「明治生命館」見学ルート案内
重要文化財 「明治生命館」のご紹介
今後の講演会シリーズ:
第5回「前川國男の作品の保存と再生」
10月13日
第6回「F・L・ライトと遠藤新」
11月17日
第7回「丹下健三生誕100年」
平成25年5月18日
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