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「わが国の近代建築:大正から昭和へ」

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武庫川女子大学東京センター主催講演会シリーズ「わが国の近代建築の保存と再生」に行ってきました。今回は第4回でタイトルは「昭和の近代建築」です。プログラムは大きく二つ、一つは「わが国の近代建築:大正から昭和へ」として鈴木博之の講演、そしてもう一つは「明治生命館の保存と再生」として工事にかかわった竹中工務店のお二人の話と「明治生命館」の見学でした。


ここでは鈴木博之の「わが国の近代建築:大正から昭和へ」と題した講演の要旨を、以下に載せておきます。


鈴木博之は、東京大学名誉教授、青山学院大学教授、博物館明治村館長の肩書きを持っていますが、略歴は、1945年東京都生まれ。東京大学工学部建築学科卒、東京大学工学系大学院博士課程満期退学。東京大学専任講師、ロンドン大学コートゥールド美術史研究所留学、東京大学助教授、同大学教授を経て現職。1984年「ヴィクトリアン・ゴシックの崩壊過程の研究」により工学博士を取得。1990年「東京の地霊」でサントリー学芸賞を授与、1996年日本建築学会賞、2001年建築史学会賞、2005年紫綬褒章を受章した。著書に「明治の羊羹100選」「夢のすむ家」「建築の七つの力」「建築は兵士ではない」「建築の世紀末」他多数。


大正・昭和の建築に影響を与えた地震として以下の4つをあげる。

・濃尾地震――レンガ造建築の耐震性(工部大学校の先生や生徒は全員見に行った)

・関東大震災――鉄筋コンクリート造へ(もたらした教訓は後の時代を決めた)

・阪神淡路大震災――免震構造化(本格的に使用されるようになった。例として上野の西洋美術館)

・東日本大震災――免震構造化(なにを教訓として得られたかはまだ分からない。不確定な状況の中にいる)


写真集「AT EARTHQVAKE OF JAPAN 1891」ジョン・ミルズ、小川一馬:写真?

・トラス橋――壊れない、はずれた

・レンガ造――崩れる、上から壊れる、3階を撤去せよ

・木造――1階だけが潰れ、壊れることが多い



濃尾地震の教訓

・しっくい目地からモルタル目地へ

・レンガ造の帯鉄補強

・重構造化――ガッチリと重くして押さえを効かす


「東京駅」が大正建築の始まり

 地震ではなく、戦災で屋根の部分を失った。意外にもレンガ造建築は関東大震災を生きのびてきた。明治の濃尾地震の教訓がいかされた。


「東京駅」は建物はほぼ完成したが、委員会でまだ「広場」が決まっていない。ある先生から「たんぼ」を作ったらどうかという提案があったが、建築系の先生は大反対した。ブッシュ大統領が来たとき、大統領専用車は重戦車並の重量があるので、広場はしっかりと石で舗装しなければならないというのが、我々の意見。多くの意見があり、整理が難しく、広場はあと数年かかる。



関東大震災の教訓

・鉄筋コンクリート構造――耐震構造

・フランク・ロイド・ライト式

・スクラッチタイル



丸ビルはアメリカ式の構造だったので、関東大震災の被害があり、かなり補強しながら使った。まだ新丸ビルがなかったので、三菱地所が解体前に作った模型では丸ビルと工業倶楽部はかなり外観は似ていた。工業倶楽部はかなり被害があり、帝国ホテルはほとんど被害がなかった。ニューヨークのメトロポリタン美術館に、帝国ホテルの大谷石のピースが展示されている。




丸の内の変貌

丸の内は「一丁ロンドン」と呼ばれていた。

・三菱一号館から二号館へ

・二号館の建て替え、明治生命館へ

・一丁ロンドンから日比谷通りへ

・東京駅と行幸道路

・丸ビルと一丁ロンドン



明治生命館

 内藤多仲、柱の配置が外側と内側が違っている。




日本橋における変貌

・越後屋

・為替バンク三井組

・三井銀行本館が関東大震災で被害を受けた。三井合名の理事長・団琢磨がこの際一新すべきだと決断。それが今の「三井本館」、設計はトロブリッジ&リビングストン、パースも超一級のパース屋さん。アメリカの最新式のビル、柱が整然と並んでいる。



明治生命館と三井本館の対比

重要文化財NO1とNO2


・「リーダースダイジェスト」設計:アントニン・レーモンド

現在は「パレスサイドビル」設計:日建設計(担当:林昌二)



・「東京都庁舎」設計:丹下健三

・「日活国際会館」1958-2005



阪神淡路大震災の教訓――免震構造化

・国立西洋美術館 公共建築の安全性の見直し

 当時の常識は耐震補強(柱を補強し耐震壁を入れる)

 それではコルビジュエの建築ではなくなってしまう。

 安全性とコルビジュエのデザインの両立

 後日、重要文化財に指定される

 免震部分と手前の階段部分は分けてあるので、階段部分は重文に指定されなかった(笑)。



・首相官邸――ライト式建築

 免震構造にすることが当然という風潮だった。

 西洋美術館で新しい技術が適用されると、後はやりやすい。

 技術の発展が後に続く。



・日土小学校、愛媛県八幡山市 設計:松村正恒

 階段が「2個1」なので、南からも北からも陽がさす

 木造建築でありながら、安全に補強しようとした。

 川にせり出したバルコニーなど、大変な課題でもあった。

 元々、違法建築なので、二度とできない(笑)。

 県の担当者に黙認してもらった。

 穏やかな小学校、色もオリジナルに戻した。瓦は当初の安いセメント瓦にした。



今後の講演会シリーズ:
とんとん・にっき-muko2 第5回「前川國男の作品の保存と再生」

10月13日
とんとん・にっき-muko3第6回「F・L・ライトと遠藤新」とんとん・にっき-muko4
11月17日












第7回「丹下健三生誕100年」

平成25年5月18日













過去の関連記事:

講演会シリーズ第3回「わが国の近代建築の保存と再生 大正の近代建築」その2
講演会シリーズ第3回「わが国の近代建築の保存と再生 大正の近代建築」その1
講演会シリーズ「わが国の近代建築の保存と再生 明治の近代建築」を聞いた!
「武庫川女子大学 甲子園会館」

「日本工業倶楽部会館」を観た!
講演会シリーズ第1回「わが国の近代建築の保存と再生 明治の近代建築」を聞いた!


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