桜木紫乃の「谷から来た女」(文藝春秋刊:2024年6月10日第1刷発行)を読みました。
わたしの背中、
こわいですか
アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。自分の気持ちに、傷ついてしまう――。
桜木紫乃の真骨頂
静かに刺してくる大人の物語
近づかずにはいられない。
知らずにはいられない。
以下、六篇
「谷から来た女」
2021年。大学教授の滝沢は、
番組審議会でミワに出会う。
大人の恋愛を楽しみ二人だが…。
「ひとり、そしてひとり」
2004年。夜のすすきので、
専門学校の同期生だったミワに
再会した千紗は、あるお願いをする。
「誘う花」
譲司は日刊教育通信の記者として、
朝から札幌を囲む市町村に
車を走らせる日々だ。
「無事に、行きなさい」
2015年。ミワと付き合い始めて
二年。倫彦は、将来を信じつつも
どこか遠さを感じている。
「谷へゆく女」
レラはアイヌ語で「風」という意味で、
僕の名前は正しくは礼良と書きます。
便せんに綴られた美しい一行に、
すぐに返事を書いた。
「谷で生まれた女」
コテンパンとはこんなことを言うのだろう。
久志木健太郎は六月の番組審議会で見た
委員の顔をひとつひとつ思い出し、
すすきのの狭い夜空を見上げた。
桜木紫乃:
1965年北海道生まれ。2002年「雪虫」で「オール讀物」新人賞を受賞。07年に同作を収録した単行本『氷平線』を刊行。13年『ラブレス』で島清恋愛文学賞を受賞。同年、『ホテルローヤル』で第149回直木賞を受賞し、ベストセラーとなる。20年「家族じまい」で中央公論文芸賞を受賞。他の著書に『起終点駅 ターミナル』『蛇行する月』『ブルース』『それを愛とは呼ばず』『砂上』『孤蝶の城』など著書多数。近著に『ヒロイン』『彼女たち』(写真中川正子)がある。
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