今回は「好評につき再放送」、2023年4月に放送したものです..
その時の記事は、以下の通りです。
“心の糧”として「聖書」の言葉を読む
(2023年4月のアンコール放送)
キリスト教の聖典「新約聖書」。その中核を成すマタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝の4つの「福音書」には、イエス・キリストの生涯と言葉が記され、それぞれが補い合うようにして、イエスという存在が浮かび上がってくる。生涯を通じて、弱きもの、小さきものに徹底的に寄り添ったイエスの存在は、私たち現代人にとってどのような意味を持つのか。
「福音書」に何度も向き合い、今も向き合い続けている若松英輔氏を案内役として、信仰者だけでなく誰にも開かれた書物として、また知的に「理解する」ものではなく、読む人自身の人生・経験に重ね合わせて「感じる」ものとして、読み方そのものを見直しながら「新約聖書」を読んでいく。
若松英輔:講師
批評家、随筆家。1968年、新潟県生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代――求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選、2016年『叡智の哲学――小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会)にて第2回西脇順三郎学術賞受賞、2018年『詩集 見えない涙』(亜紀書房)にて第33回詩歌文学館賞詩部門受賞、『小林秀雄――美しい花』(文藝春秋)にて第16回角川財団学芸賞、2019年第16回蓮如賞受賞。その他の著書に『悲しみの秘儀』(文春文庫)、『種まく人』『詩集 美しいとき』(亜紀書房)、『学びのきほん はじめての利他学』『学びのきほん 考える教室――大人のための哲学入門』『14歳の教室――どう読みどう生きるか』(NHK出版)など。
プロデューサーAのおもわく
紀元1世紀から2世紀にかけて執筆・編纂された聖典「新約聖書」。今も、キリスト教徒だけでなく、世界中の人々に巨大な影響力を持ち続ける名著です。「新約聖書」に収められた27の書の中でも、イエス・キリストの生涯と言葉が克明に記されているのが「福音書」です。マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝の4つからなる「福音書」は、いわば「新約聖書」の中核ともいえる存在。それぞれが補いあうようにイエスという存在を浮かび上がらせる構成になっています。
番組では、永年に渡って「福音書」を読み続け、自らも糧としてきた批評家・若松英輔さんが、現代の視点からわかりやすく解説します。若松さんによれば、「福音書」は信仰者のためだけの書ではなく、万人に開かれた書だといいます。一見すると信仰者にしか関りのないような奇跡や神秘的な出来事の描写も、文字を追うのとは別な、もう一つの目を見開いて読むと、言葉の奥に隠された深い意味が浮かび上がってくるといいます。それは、それぞれが「私自身のイエス」に出会う体験であるともいえます。そのように読むと、「福音書」は私たちの人生を支えてくれる書となっていきます。
その生涯を通じて、弱きもの、小さきものに徹底的に寄り添い、近づくことをためらう人々の元へこそ出向いていったイエス。彼の言葉と行為は、私たち現代人にとってどんな意味をもつのでしょうか? 「福音書」を万人のために開かれた書であるととらえる視点から、生きることそのものを導いてくれる巨大な書に込められた深い意味を読み解いていきます。
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