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ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」を読んだ!

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ハン・ガンの「すべての、白いものたちの」(河出文庫:2023年2月10日初版発行)を読みました。

 

おくるみ、うぶき、しお、ゆき、こおり、つき、こめ・・・。「白いもの」の目録を書きとめ紡がれた六十五の物語。生後すぐ亡くなった姉をめぐり、ホロコースト後に再建されたワルシャワの街と、朝鮮半島の記憶が交差する、儚くも偉大な命の鎮と恢復への祈り。アジアを代表する作家による奇蹟的傑作。解説:平野啓一郎

 

もくじ

1 私

2 彼女

3 すべての、白いものたちの

  作家の言葉

「すべての、白いものたちの」への補足 斎藤真理子

解説 恢復と自己貸与 平野啓一郎

 

「すべての、白いものたちの」は、「白いものについて書こうと決めた。春。そのとき私が最初にやったのは、目録を作ることだった。」で始まります。

 

「七か月で、彼女は生まれた。二十二歳だった母は何の準備もなく陣痛を迎えた。突然に初霜がおりた日。家には母のほかに誰もいなかった。生まれたばかりの彼女はか弱い声でしばらく泣いただけで、やがて静かになった。血のついた小さな体に母は産着を着せ、顔が隠れないようにそっと、気をつけて、綿の入ったふとんでくるんだ。まだお乳の出ていない乳房を含ませると、赤ん坊は本能的に弱々しく吸ったが、すぐにやめてしまった。家でいちばんあたたかいオンドルの焚き口近くに寝かせておいた赤ん坊は、それ以上泣きも、目を開けもしなかった。恐ろしい予感に脅えて母がふとんを少しずつゆすってやるとそのたびに目は開いたが、すぐにぼんやり閉じてしまった。そしていつからか、ゆすってやっても反応しなくなった。けれども夜明け前、初めて出たお乳を赤ん坊の唇にあててやったとき、驚くべきことにまだ息があった。意識のない状態で、赤ん坊は乳房をくわえ、少しずつ飲み込んだ。もっと、もっと、飲み込んだ。まだ目は閉じたまま。今このとき、自分が越えつつある境界が何であるのか知らぬまま。」

 

ハン・ガン:

1970年、韓国・光州生まれ。1994年、短篇「赤い碇」でソウル新聞新春文芸より作家デビュー。2005年、「菜食主義者」で李箱文学賞を、同作で16年にアジア語圏初のブッカー国際賞を受賞。著書に小説「少年が来る」「ギリシャ語の時間」「回復する人間」、エッセイ集「そっと、静かに」、詩集「引き出しに夕方をしまっておいた」など。

 

斎藤真理子:訳者

1960年、新潟市生まれ。著書に「韓国文学の中心にあるもの」、訳書にパク・ミンギュ「カステラ」(共訳・第1回日本翻訳大賞受賞)、チョ・セヒ「こびとが打ち上げた小さなボール」、チョン・セラン「フィフティ・ピープル」、チュ・ナムジュ「82年生まれ、キム・ジョン」、ファン・ジョンウン「ディディの傘」など。

 

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