原案・製作はキム・ギドク、「なるほど」と思ったりもしました。いや、それ以上でした。監督はチャン・フン。キム・ギドク監督作品の助監督を長く務めた人らしい。しっかりDNAを受け継いでいるように見えます。韓国映画特有の暴力映画、期待通りの映画でした。実はこの映画のことは僕はまったく知りませんでしたが、なぜか録画してあり、しかも2度も録画してありました。見始めてやっとキム・ギドク関連の映画だということに気がつきました。家人はテレビで放映されたときに見ていたようで、主演の二人とも知っていると言ってました。
俳優を夢見るヤクザ。ヤクザより激しい暴力の俳優。俳優チャン・スタ(カン・ジファン)はアクションシーンで、相手の俳優に対して本気になって怪我をさせてしまい、相手役は降りてしまいます。誰もが相手役になることを拒み、撮影は中断したまま、映画製作は窮地に追い込まれてしまいます。彼は窮余の策として、高級クラブで知り合いになった暴力団組織のNO2であるイ・ガンペ(ソ・ジソフ)に相手役を依頼します。以前から俳優になる夢を持っていたガンペは、出演に応じる代わりに、アクションはマジでやる、という条件を出します。
ヤクザという世界から夢に見た俳優の世界に足を踏み入れたガンペ。アクション俳優からヤクザ以上に激しい暴力男になっていくスタ。二人の人生が映画づくりの場面で交差します。ガンペの演技は撮影が進むにつれてますます上達し、下手な俳優顔負けの演技です。一方のスタは、俳優特有のおごりで、自分の女を娼婦のように扱い、世間に知られないように都合よく付き合っています。車の中でのセックスがビデオに盗み撮りされていて、それをネタに脅迫されたりもします。この脅迫、実はマネージャーの仕業だったのですが。「俺とお前は似た者同士ってことだな」と、ガンペはスタに言ったりもします。
撮影中、突然相手役の女優ミナにキスをしてしまうガンペ。監督にはシーン87をやってみましたとうそぶきます。ミナに「ヤクザなのに地味ですね」と言われ、「俺たちヤクザは人を殴るとやばいんです」と、ガンペが真面目に答えたりもします。橋の下のシーンで、「あいつに会ったのか?」と女優ミナを問い詰めます。「なにをしたか調べてやる」と、車の中に引きずり込んで犯すシーンでは、本気で本当にやってしまいます。監督やスタからは「クズ野郎」と非難されます。このミナをめぐって二人は微妙に対立している仲なのです。背後にヤクザ組織の裏切りなども絡んできます。
二人に向かって「次が本当のラストだ」と監督。「加減するな」とガンペ、「思い切りやれ」とスタ。いつ果てるともない壮絶な殴り合いがついに始まります。全身泥だらけの二人、血だらけの顔が泥の間から見えます。ようやく監督は「カット」と声をかけます。「二人ともよくやった」という監督の顔は、涙で顔がくしゃくしゃです。撮影所の玄関前で「監督がおごってくれるそうだ」とガンペに声をかけるスタ。「すっかり俳優らしくなったな」と応じるガンペ。ガンペの車が走り出します。その後を追うスタ。繁華街を急ぎ足で歩くガンペ。追いついたスタは「急いでどこへ?」と聞きます。「映画を撮りに」と答え、「お前がカメラだ」と言います。
骨董店から仏像を抱えて出てきた対抗組織のパク社長。ガンペは頭を下げ「僕が持ちます」と仏像を受け取ります。「気を付けろ、貴重なものだからな」と仏像をガンペに手渡します。歩き始めた瞬間、カンペはパク社長の後頭部を仏像で殴りつけます。何度も、何度も。茫然とそれを見つめるスタ。ガンペは「所詮、ヤクザはヤクザだ。お前たちとは違うんだ」と言いたげなまなざしです。ガンペは壊れた仏像をスタに渡します。パトカーのサイレンの音。ガンペは逮捕されパトカーに乗せられます。突然、ガンペは頭でパトカーの窓ガラスを壊します。血だらけのガンペの顔がクローズアップになります。怯えたようなスタの顔。二人の顔がアップで並んで、この映画は終わります。所詮、映画の世界は映画の世界でしかないのだ。
以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。
チェック:ヤクザをリアルに演じたいスター俳優と、俳優になりたかったヤクザが出会い、お互いが住む世界に惹(ひ)かれていくアクション・ドラマ。韓国映画界の鬼才監督キム・ギドクが製作を務め、数々のキム・ギドク作品で助監督を務めてきたチャン・フンがキム・ギドクの原案を映像化した。俳優の夢を捨て切れないヤクザを演じるソ・ジソブ、ヤクザより暴力的で高慢な映画スターを演じるカン・ジファンが激突する、クライマックスのファイトシーンは圧巻。
ストーリー:映画俳優になりたかったヤクザのガンペ(ソ・ジソブ)は、ある日偶然、映画俳優のスタ(カン・ジファン)と高級クラブで出会う。数日後、最新作のアクション映画のファイトシーンを撮影していたスタは、相手役の俳優に大けがを負わせてしまう。相手役の俳優がいなくなって困り果てたスタは、ガンペに映画出演を持ちかける。
「映画は映画だ」公式サイト