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カフカの「カフカ断片集」を読んだ!

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カフカの「カフカ断片集  海辺で貝殻のようにうつろで、一足でふみつぶされそうだ」(新潮文庫:令和6年6月1日発行)を読みました。

 

編訳者解説が、カフカ愛に溢れていて、素晴らしい。

 

短く、未完成のまま残された小説のかけらたち

カフカは

断片が一番ヤバい!

「あらゆることに、わたしは失敗する。

いや、失敗することさえできない。」

 

カフカの主要な物語は断片であり、

その作品の全体がひとつの断片である。

モーリス・ブランショ

 

カフカは完成した作品の他に、手紙やノートなどに多くの断片を残した。その短く、未完成な小説のかけらは人々を魅了し、断片こそがカフカだという評価もあるほど。そこに記された胸をつかれる絶望的な感情、思わず笑ってしまうほどネガティブな嘆き、不条理で不可解な物語、そして息をのむほど美しい言葉。誰よりも弱くて繊細で、人間らしく生きたカフカが贈る極上の断片集。完全新訳で登場。

 

目次

「木々」「失敗することさえできない」「井戸」「こま」「言葉」「自分のなかの部屋」「夜への怖れ」「テーブルの上の林檎」「儀式」「隣人までの距離」「道に迷う」「太陽」「法の前に」「正しい道筋」「骨の痛み」「愛されていた子ネズミ」「小屋の隅」「夏だった」「助けて!」「石臼」「何もわたしをとどめない」「わたしがふれるものは」「計算」「ホテル・エトホーファー」「いくつもの夢が」「あなたがやろうとしていること」「死体の入った棺」「灌木」「幻影」「判断力」「夢のマント」「あせりとなげやり」「トンネルのなか」「死の川」「内側からそっと」「この世の声」「ライバル」「救い」「平穏を嘆く」「カラスと天国」「疲れ」「問いかけ」「両手を上げる」「道は無限」「虚栄心」「だれかが首を」「橋」「何もしないこと」「猟犬たちはまだ」「3つのこと」「使者」「あざむいてはならない」「乗り越えることのできない問題」「求める者」「鎖」「特権を維持」「こぼれ落ちたものを食べる」「日々くり返されるできごと」「だれ?」「ドアの外でのためらい」「湖でボートを漕ぐ」「太陽のような都市」「明けきれない朝」「人生を呪い」「問いと答え」「切れないパン」「世界の素顔」「鎌で刈る」「沼地の見張り」「家の中の雨」「桟敷席」「神経を使う厄介事」「難破船」「下へ」「人影」「どこかにある」「目と世界」「せめて」「井戸から水を」「巨大な沼の水面」「森の道」「夜」「告白と嘘」「独房というわけではなかった」「鉱山」「ハンマー」「ふさわしくない」「あいだの魚」「迷路のなかのF」「自分を建て直す」「自分自身への疑い」「3本のジグザグ線」「聞く」「別のことばかりが頭に浮かぶ」「贋の風景」「出て行こう!」「追放」「夢みる花」「窓の代わりのドア」「多様性」「もう決してない」「コメント」「すべてが無駄だった」「木の葉」「あなたは答えない」「ドラゴン」「なにが?」「巨人との闘い」「うまくいかないこと」「教育とは」「心を剣で突き刺されたとき」「善の星空」「天の沈黙」「自殺者」「故郷にいる」「夢」「夢を木の枝に結びつけろ」「釘の先端を壁が感じるように」「秋の道」「準備不足」「志願囚人」「自分が生きていること」「海辺の貝殻のように」「人生からあらゆる快適さが」「自由とは」「家族」「プロメテウス」「死後の評価」「書くことと祈ること」「沈黙」

フランツ・カフカ紹介

編訳者解説

 

以下、編訳者解説より。

日本で最初にカフカの「城」を訳し(萩原芳明との共訳)、「決定版カフカ全集」で「審判」を訳した、ドイツ文学者の中野孝次も、最初にカフカの小説を読んだとき、思わずこう言ったそうだ。

「なんだこりゃ、読んでもちっとも理解できやしない、これでも小説かね。それでいてここにはなにかがある。おそろしく尖鋭な現代の生存感覚があるって気がするんだから、いらいらするなあ。」

だから、わからなくても気にする必要はない。しかし、わからないものを、なぜ読まなければならないのか?作家の島尾敏雄もこういうカフカの読み方を推奨している。

「今自分が遭遇している事件を強く意識してみることです。たとえどんなに小さな事件であっても差し支えないのですが、そうして読むと、中に彼のアフォリズムの背後にひそむ事件と自分の事件が或る感応を示し合う瞬間が起こって、その時にその言葉は甚だしく輝いてrくるように思えます。」

その言葉の輝きを経験すると、やみつきになる。自分が人生の問題にぶつかったとき、カフカを読むと、坑道のカナリアのように、カフカはもう先に苦しんでくれているのだ。アメリカの詩人、W・H・オーデンもこう言っている。

「彼がそれほどわれわれにとって重要なのは、彼の問題のすべてが、われわれの問題だからである。」

 

フランツ・カフカ:

オーストリア=ハンガリー帝国領のプラハで、ユダヤ人の商家に生まれる。プラハ大学で法学を修めた後、肺結核に斃れるまで実直に勤めた労働者障害保険協会での日々は、官僚機構の冷酷奇怪な幻像を生む土壌となる。生前発表された「変身」、死後注目を集めることになる「審判」「城」等、人間存在の不条理を主題とするシュルレアリスム風の作品群を残している。現代実像主義文学の先駆者。

 

編訳者 頭木弘樹:

文学紹介者。筑波大学卒。編訳書に「絶望名人カフカの人生論」「絶望名人カフカ×希望名人ゲーテ」。編著に「決定版カフカ短編集」など。

 

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