ブレイディみかこの「他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ」(文春文庫:2024年5月10日第1刷)を読みました。
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の大人の続編本!
「自分が生きやすい」社会に必要なのものとは?
感情的な共感の「シンパシー」ではなく、
意見の異なる相手を理解する知的能力の「エンパシー」。
この概念を心理学、社会学、哲学など様々な学術的分野の研究から繙く。
うまく活用するために、自治・自立し相互扶助のアナキズムを提唱。
新しい思想の地平に立つ刺激的な一冊。
他者はあまりに遠い。“共感”だけではたどり着けない。
ジャンプするために、全力で「考える」知的興奮の書!
――東畑開人
目次
はじめに
第1章 外して、広げる
エンパシーの日本語訳は「共感」でいいのか
エンパシーの種類と歴史
「エンパシーはダメ」論と「エンパシーはだいじ」論
ミラーニューロンの話
エンパシーの達人、金子文学
第2章 溶かして、変える
言葉はそれを溶かす
感情の読み書き
「Ⅰ」という主語の獲得
エンパシーとドラマツルギー、そしてSNS
帰属性も「本当の自分」も人を縛る
第3章 経済にエンパシーを
エンパシー・エコノミー
利他的になれば利己的になる
バラモン左翼に「エンパシー的正確さ」はあるか
ブルシット・ジョブとケア階級
いまこそジュビリーの思考法を
第4章 彼女にはエンパシーがなかった
サッチャーを再考する
自助の美しさを信じる頑迷さ
自助と自立の違い
プチ・ブルジョワジーの経済貢献
第5章 囚われず、手離さない
女性指導者とエンパシー
エンパシーに長けた脳がある?
ボトムアップかトップダウンか
自分を手離さない
第6章 それは深いのか、浅いのか
ネーチャーorナーチャー
エンパシにも先天性と後天性?
「災害ユートピア」が提示する深みの問題
ソルニットがクラインに向けた批判
トレランスとエンパシー
第7章 煩わせ、繋がる
コロナ禍における網目の法則
フェビアンの理想、左派の党派性
「シンパ」のオリジンはシンパシー
guilt(罪悪感)とエンパシー
迷惑をかける
第8章 速いエンパシー、遅いエンパシー
おばさん問題
「おじ文化」に対する「おば文化」
承認欲求の向かう先
シンパシーは待てない
ルッキズムとシンパシー
第9章 人間を人間化せよ
不況時は年寄りから職場をされ、とな?
相互扶助もアナキズム
愛のデフレ
「破局」とブルシット・ソサエティー
エリートとエンパシー
第10章 エンパシーを「闇落ち」させないために
ニーチェがエンパシーを批判していた?
エンパシー搾取と自己の喪失
エンパシーが抑圧的社会を作る?
エンパシーとアナーキーはセットで
エンパシーの毒性あれこれ
いいものでも悪いものでもない、という理解
ここではない世界の存在を信じる力
わたしがわたし自身を生きるための力
個人は心臓、社会は肺
第11章 足元に緑色のブランケットを敷く
二つのフリースクール
民主主義的な教育の実践
アナキズムはネグレクトしない
エンパシを育てる授業
エンパシーは民主主義の根幹
Democracy biegins at home.
あとがき
文庫本あとがき
ブレイディみかこ:
1965年福岡県福岡市生まれ。96年から英国ブライトン在住。ライター、コラムニスト。2017年「子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から」で新潮ドキュメント賞、19年「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」Yahoo!ニュース、本屋大賞2019年ノンフィクション本大賞、毎日出版文化賞特別賞などを受賞。他の著書に「労働者階級の反乱」「女たちのテロル」「ワイルドサイドをほっつく歩け」「ブロークン・ブリテンに聞け」「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2」「両手にトカレフ」「リスペクト――R・E・S・P・E・C・T」「私労働小説 ザ・シット・ジョブ」、共著に「何とかならない時代の幸福論」「その世とこの世」などがある。
過去の関連記事: