多和田葉子の「溶ける街 透ける路」(講談社文芸文庫:2021年7月9日第1刷発行)を読みました。
わたしの旅は言葉の旅でもある。
多言語の中を通過しながら、日本語の中を旅する――
”エッセイの元祖”モンテーニュ縁のサンテミリオン、神田神保町を彷彿させる”本の町”ヴュンスドルフ、腕利きのすりが集まるバーゼル。世界四十八の町を巡り、"旅する作家"が見て、食べて、出逢って、話して、考えた。心と身体を静かに揺さぶる、五十一の断章。
今振り返ってみると、80年代の私はほとんどハンブルグにいて、滅多に旅をすることなどなかった。連戦が終わって東ヨーロッパへ行きやすくなり、ユーロが導入され、安いフライトが増えるにつれて移動は急速に増え、パンデミックの始まる2020年春まで旅の続く生活を送った。(文庫本版あとがきより)
目次
一月
ブタペスト
シュトットガルト
ケルン
フランクフルト
二月
グラーツ
クックスハーフェン
トゥール
ロイカーバート
三月
カネット
トゥーソン
シアトル
ベルリンⅠ
四月
デュイスブルグ
イエテボリ
ハンブルグ
デュッセルドルフ
チューリッヒ
五月
ボルドーⅠ
チュービンゲン
ヴュンスドルフ
六月
パリ
トゥールーズ
ペサック
ナント
七月
サン・マロ
ベルリンⅡ
サンテミリオン
ボルドーⅡ
ボルドーⅢ
八月
イサカ
ハノーファー
リュウネブルグ
メットマン
九月
バーゼル
ベルン
バーデンバーデン
マンハイム
アウシュヴィッツ
十月
クラクフ
ワルシャワ
トロムセ
ダルムシュタット
十一月
ヴォルフスブルグ
リガ
タルトゥ
タリン
十二月
モントリオール
ニューヨーク
アマスト
ボストン
アンマン
単行本あとがき
作者から文庫読者のみなさんへ
解説 鴻巣友季子
年譜 谷口幸代
著書目録 谷口幸代
多和田葉子(1960・3・23~):
小説家、詩人。東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、ハンブルグ大学修士課程修了。1982年よりドイツに住み、日本語・ドイツ語両言語で小説を書く。91年、「かかとを失くして」で群像新人文学賞受賞。93年、「犬婿入り」で芥川賞受賞。96年、ドイツ語での文学活動に対しシャミッソー文学賞を授与される。2000年、「ヒナギクのお茶の場合」で泉鏡花文学賞を受賞。同年、ドイツの永住権を取得、チューリッヒ大学で博士号取得。02年、「球形時間」でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。03年、「容疑者の夜行列車」で伊藤整文学賞及び谷崎潤一郎賞を受賞。05年、ゲーテ・メダル受賞。09年、早稲田大学坪内逍遥大賞受賞。11年、「尼僧とキューピッドの弓」で紫式部文学賞、「雪の練習生」で野間文芸賞を受賞。12年、「雲をつかむ話」で読売文学賞及び芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。16年、クライスト賞受賞。18年、国際交流基金賞、「献灯使」(英語版)で全米図書賞を受賞。20年、朝日賞受賞。
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