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坂野徹の「縄文人と弥生人 「日本人の起源」論争」を読んだ!

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坂野徹の「縄文人と弥生人 「日本人の起源」論争」を読みました。

2022年9月24日に朝日新聞に書評記事が載っていたので購入しましたが、長らく積読状態で、これではならじと、最近やっと読み終わりました。

 

縄文人と弥生人はいかなる人びとであったか?

日本人は、在来の縄文人と渡来系弥生人の混血によって生まれた。「日本人の起源」の定説である。しかし、この縄文/弥生人モデルが二〇世紀後半に定着するまで、人種交替説、固有日本人説、混血説、変形説など、様々な説が唱えられてきた。研究の進展とともに、見え隠れするのは同時代の社会からの影響だ。近年はゲノム解析により、縄文/弥生人の図式もゆらぐ。起源を訪ねた研究者たちの足跡を辿り、日本人の自画像を描きだす。

 

以下、朝日新聞の藤野裕子の書評による。

 

人類学・考古学は、日本人の起源をどう考えてきたのか。本書は縄文人・弥生人という区分を軸に、明治期から現代に至るまで学説の変遷を追う。
日本人の祖先は縄文人なのか、弥生人なのか。このように問う時、日本人はこうでありたい/こうであるはずだという自画像がそこに込められる。本書全体を貫くのは、学説には研究者が生きた時代が期せずして映り込むという視点だ。
大正期には、記紀に依拠して、縄文土器を使う先住民アイヌを、弥生土器を使う日本人の祖先が征服したとする説が有力だった。その背景には、帝国の領土拡大があった。これに対し、古人骨を分析して、日本人は縄文人と弥生人との混血で生まれたのであり、人種は連続するという説もあった。アジア太平洋戦争期には、再び記紀が用いられ、皇国史観や大東亜共栄圏の構想と矛盾しない学説となる。戦後になり、日本人の起源を在来の縄文人と渡来系の弥生人との混血とする説が定着した。
著者はこれらの学説が自明としてきた事柄を問い直す。一つは、縄文・弥生の区分は絶対的かという点だ。ゲノム解析を用いた近年の研究では、この2区分だけではなく、より多元的な区分が提唱されている。
もう一つは、「日本人」とは誰かという点だ。日本には多様なエスニック・グループが暮らしており、それぞれの起源がある。今後日本社会がより多様化すれば、「日本人」の起源を探すこと自体が意味を持たなくなるだろうと著者はいう。
歴史を明らかにする行為は、今の時代のあり方や、これからの社会への欲望を浮かび上がらせる。とすれば、現在、縄文人と弥生人の差異に関心が集まるのはなぜなのか。一考の価値がありそうだ。

 

坂野徹:

1961年東京都生まれ。九州大学理学部生物学科卒業。東京大学大学院理学系研究科(科学史・科学基礎論専攻)博士課程単位取得退学。博士(学術)。日本大学経済学部教授。専門は科学史、人類学史、生物学史。

著書

  「帝国日本と人類学者」(勁草書房、2005年)

  「フィールドワークの戦後史」(吉川弘文館、2012年)

  「<島>の科学者」(勁草書房、2019年)

編著

  「帝国の視角/死角」(共編著、青弓社、2010年)

  「帝国を調べる」(勁草書房、2016年)

  「人種神話を解体する2」(共編著、東京大学出版会、2016年)

  「帝国日本の科学思想史」(共編著、勁草書房、2018年)

 

藤野裕子:

早稲田大学教授(日本近現代史)

1976年生まれ。専門は日本近現代史、ジェンダー・セクシュアリティ史。東京女子大学准教授などを経て、現職。著書に『民衆暴力』『都市と暴動の民衆史 東京・1905-1923年』がある。2022年4月より書評委員。

 

朝日新聞:2022年9月24日


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