島田雅彦の「哲学散歩 よく歩き、よく考える」(早川書房:2024年2月25日初版発行)を読みました。
たとえば、午後三時半。その日の仕事が片付き、ポッカリと時間が空いたとする。何処へ行ってもいいし、何をやってもいいとなれば、用や意味がなくても、自ずと、ふらふらすることになる。それが自然の成り行きというものである。人の身体はそのようにできている。移動の自由の行使は本能に由来するといってもいい。移動の自由はたとえ国家や社会、支配者から制限されたとしても、決して譲り渡してはならない権利である。(「プロローグ」より)
「昔から思索家はよく歩く。哲学者然り、詩人然り、小説家然り、作曲家然り・・・よく歩く者はよく考える。よく考える者は自由だ。自由は知性の権利だ」(プロローグより)。直立二足歩行の開始以来、人類は歩き、地球に広がった。ルソー、カント、荷風らもまた歩き、得られた洞察から作品を生んだ。忙しさにかまける現代人に必要なのは、ほっつき歩きながら考える「散歩哲学」だ。散歩を愛する作家・島田雅彦が新橋の角打ちから屋久島の超自然、ヴェネチアの魚市場まで歩き綴った画期的エッセイ!
目次
プロローグ
第1章 人類史は歩行の歴史
第2章 散歩する文学者
コラム① 「歩く」にまつわる言葉
第3章 孤独な散歩者の役得
第4章 ニッチを探す散歩
コラム② 縄文の視点から東京を眺める
第5章 都心を歩く
十条・池袋・高田馬場・阿佐ヶ谷
第6章 郊外を歩く
登戸・町田・西荻窪
第7章角打ち散歩
新橋・神田
第8章 田舎を歩く
屋久島・秋田
エピローグ
主な参照、引用文献
島田雅彦:
1961年生まれ。作家。法政大学国際文化学部教授。東京外国語大学ロシア語学科卒。1983年「優しいサヨクのための嬉遊曲」でデビュー。「夢遊王国のための音楽」で野間文芸新人賞、「彼岸先生」で泉鏡花文学賞、「退廃姉妹」で伊藤整文学賞、「虚人の星」で毎日出版文化賞、「君が異端だった頃」で読売文学賞を受賞。金策に「空想居酒屋」「パンとサーカス」「時々、慈父になる。」など。2022年紫綬褒章を受章。
過去の関連記事:
「島田雅彦芥川賞落選作全集 上」
河出文庫
2013年6月20日初版発行
「島田雅彦芥川賞落選作全集 下」
河出文庫
2013年6月20日初版発行