「別離」は、2011年のイラン映画。第61回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最高賞である金熊賞と、女優賞、男優賞の2つの銀熊賞の計3部門で受賞を果たした。第84回アカデミー賞ではイラン代表作品として外国語映画賞を受賞したほか、脚本賞にもノミネートされた。(「ウィキペディア」による)
ナデルとシミンは結婚14年の夫婦。ナデルは銀行員で、シミンは英語を教える女教師。家庭裁判所で、それぞれ離婚を申し立てています。シミンは一人娘の将来のために、たとえ離婚してでもカナダ移住を希望しています。夫はアルツハイマー型認知症を発症した老父を残して国を出ることはできないと主張します。離婚は認めても娘の国外移住は認めないとナデルが譲らなかったので、話し合いは物別れになり、シミンはしばらく実家へ帰ることになります。
シミンが夫と娘を置いて家を出た後、たちまち父の介護問題が生じ、とりあえずラジエーという家政婦を雇います。若くて敬虔なイスラム教徒であるラジエーは、失業中の夫ホッジャトに内緒で家政婦の仕事を引き受けたのでした。しかし、ナデルの父が失禁したのを見てラジエーは途方に暮れます。イスラムの教えでは、女性が親族以外の男性の身体に触れたり、その排泄物に触れたりするのはタブーとされています。そこでラジエーは聖職者に電話して「罪ではありませんか?」と訊ねたりします。
やがて意を決したラジエーは、老人をバスルームへ連れて行き、排泄物の処理をします。別の日に、彼女が目を離した隙に、老人はフラフラと街へ出て行ってしまうという出来事もありました。あやうく車に轢かれるところでした。ある日、ナデルが中学生の娘と帰宅すると、家政婦のラジエーはいません。老父はなんとベッドに手を縛りつけられたまま床に転がり落ちていました。ほどなくラジエーは娘を連れて戻ってきますが、激怒したナデルは、事情も聞かずにラジエーを手荒く家から追い出し、ラジエーは階段から転げ落ちてしまいます。
ナデルはラジエーが入院したことを知り、シミンと一緒に様子を見に行き、彼女が流産したことを知らされます。ラジエーの夫は裁判所に訴えます。家を追い出された際に転倒したため、妻は流産したのだと主張します。もしそうであればナデルには「殺人罪」が適用されます。裁判の争点は、ナデルがラジエーの妊娠を知っていたかどうかです。ナデルは知らなかったといい、ラジエーは知っていたはずだと言います。裁判はナデルに有利に進んでいるように見えます。
しかし、中学生の娘はナデルに突然「嘘をついていない?」と訊ねます。一方、ナデルもラジエーが老父に行った行為について、逆に彼女を告訴します。裁判は次第に泥仕合の様相を呈し、それぞれの思いが交錯します。そして娘をどちらの親が取るのか、裁判官は「決まりましたか?」と娘に問います。「席を外して」と裁判官から言われ、二人の親は廊下へ出されます。娘の心は決まっていますが、長い沈黙の後に、娘の答えは出さないまま、映画は終わります。
二つの家族、首都テヘランの富裕地域に住む離婚寸前の中流階級夫妻と、南部に住む貧しい下層階級の夫妻との間に起きた抜き差しならない絡み合いが、イスラム社会という背景の中で描かれています。
以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。
チェック:イラン人夫婦に訪れる危機を軸に、人間の複雑な心理と共に社会問題をも浮き彫りにし、ベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞した人間ドラマ。『彼女が消えた浜辺』のイラン映画界の異才、アスガー・ファルハディがメガホンを取り、濃密ながら壊れやすい家族の関係を繊細に映し出す。娘のために外国への移住を決断する妻をレイラ・ハタミが、父親の介護のためにイランに残りたい夫をペイマン・モアディが好演。波乱含みの様相にさらなる秘密とうそが絡み合い、スリリングに転がっていく展開に心を奪われる。
ストーリー:イランのテヘランで暮らすシミン(レイラ・ハタミ)とナデル(ペイマン・モアディ)には11歳になる娘がいた。妻シミンは娘の教育のために外国へ移住するつもりだったが、夫ナデルは老いた父のために残ると言う。ある日、ナデルが不在の間に父が意識を失い、介護人のラジエー(サレー・バヤト)を追い出してしまう。その夜、ラジエーが入院し流産したとの知らせが入り……。