井上隆史の「大江健三郎論 怪物作家の『本当ノ事』」(光文社新書:2024年2月29日初版第1刷発行)を読みました。
東京大学でフランス文学を学んでいた学生時代の作品「奇妙な仕事」以降、常に文学界の先頭を走り続けてきた大江健三郎。1958年に「飼育」で芥川賞、67年に『万延元年のフットボール』で谷崎潤一郎賞、73年に『洪水はわが魂に及び』で野間文芸賞、83年に『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』で読売文学賞、同年、『新しい人よ眼ざめよ』で大佛次郎賞、そして94年には川端康成についで日本で2人目のノーベル文学賞受賞者となった。
新しい戦前と言われる今日、代表作を初期から順に読み進めることで、「民主主義者」「平和主義者」としての大江像に再考を迫る。
本当に戦後民主主義者なのか?
その作品世界を丹念に追うことで、「従来の大江像」を覆す。
大江自身の「本当ノ事」は、
いまだ明らかになっていないのではないか。
大江は戦後民主主義を代表する知識人という枠には決して収まらない存在であり、大江文学の真の魅力は、そういう評価とは別の場所、むしろそれを裏切る場所にあるのかもしれないということです。
(「はじめに」より)
目次
第一章 三つの処女作
第二章 純粋天皇の胎水しぶく
第三章 アナルセックスと赤ん坊殺し
第四章 オレハ本当ノ事ヲイッタ
第五章 三島由紀夫の死
第六章 レイン・ツリーとイーヨー
第七章 ピンチランナーは生還するか
第八章 あいまいな日本の私
第九章 おかしな二人組
第十章 大江健三郎の「本当ノ事」
井上隆史:
1963年生まれ。東京大学文学部卒業。白百合女子大学文学部教授。専門は日本近代文学。著書に『暴流(ぼる)の人 三島由紀夫』(平凡社、読売文学賞・やまなし文学賞)、『三島由紀夫 幻の遺作を読む』(光文社新書)、『三島由紀夫『豊饒の海』VS野間宏『青年の環』』(新典社選書)、『三島由紀夫の愛した美術』(共著・新潮社)、『決定版 三島由紀夫全集 第42巻 年譜・書誌』(共著・新潮社)、『津島佑子の世界』(編著・水声社)などがある。
大江健三郎 江藤淳 全対話
2024年2月25日初版発行
著者:大江健三郎・江藤淳
発行所:中央公論新社
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大江健三郎について
これから読む本、読まなければならない本
全て購入済み
ユリイカ7月臨時増刊号
「総特集*大江健三郎――1935-2023」
2023年7月15日発行
発行所:青土社
「犠牲の森で 大江健三郎の死生観」
2023年3月17日初版
著者:菊間晴子
発行所:一般財団法人 東京大学出版会
「大江健三郎の『義』」
2022年10月18日第1刷発行
著者:尾崎真理子
発行所:講談社
「大江健三郎と『晩年の仕事』」
2022年3月22日第1刷発行
著者:工藤庸子
発行所:講談社
「大江健三郎全小説全解説」
2020年9月15日第1刷発行
著者:尾崎真理子
発行所:講談社