海野聡の「奈良で学ぶ 寺院建築入門」(集英社新書:2022年2月22日第1刷発行、2023年3月12日第5刷発行)を読みました。
日本には七万以上の寺院が存在する。
これらの建築様式は様々だが、その源流は奈良に見ることができる。
なかでも工匠の知恵と工夫と技術革新を直に堪能できるのが、唐招提寺、薬師寺、興福寺、東大寺の四寺だ。
そこで、建物の基本骨格や建築の基礎知識を説明し、各寺院建築の具体的な造られ方を、図版や写真をふんだんに使いながらわかりやすく解説。
そうすることで、各技術にこめられた職人の想いばかりか、天皇・藤原氏や僧侶の権勢・思想といった歴史も見えてくる。
建築という視点から、新しい奈良の魅力を照らし出す、今までになかった寺院鑑賞ガイド本。
本書では、東京から一泊二日の旅行ガイド、解説書、そして入門書を目指しています。東京駅八時の新幹線に乗って、京都で近鉄線に乗り換えれば、お昼前には薬師寺・唐招提寺の最寄り駅、西ノ京に降り立っていることでしょう。思っているほど、奈良ははるかかなたの都ではないのです。平城京の西に残るこれらの名刹を回り、古建築の基礎を学びつつ、天平の風に包まれてみましょう。
そして翌日の訪問先は興福寺・東大寺といった南部の中心地。ともに焼き討ちを受けて、鎌倉時代や江戸時代に再建されたものも多いのですが、古代建築も残っています。むしろ多様な時代の建物があるからこそ、これらを通して見ることで、時代ごとの「好み」の違いも浮き上がってくるのです。古建築の前で私が何を感じ、そしてその感覚がどこから来ているのか、ここに力を入れてご案内しましょう。
一泊二日の駆け足の南都寺院巡りですが、この四つの寺々には古建築やその痕跡を見る要素が凝縮されています。ここで得られる寺院建築鑑賞の知識は奈良の寺に限らず、他の地域でも役に立つこと、まごうかたなし、です。ぜひ本書を手に現地を訪れ、古建築を肌で感じてもらいたいと思います。(「まえがき」より)
目次
序章 寺々の建築を向き合う
第一章 鑑真の終のすみか、唐招提寺
第二章 移された白鳳、薬師寺
第三章 遷都始動、興福寺
第四章 聖武天皇の夢、東大寺
あとがき
主な参考文献
図版出典一覧
海野 聡(うんの さとし):
1983年、千葉県生まれ。2006年、東京大学工学部建築学科卒業。
2009年、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程中退。
奈良文化財研究所研究員を経て、現在、東京大学大学院准教授。博士(工学)。
主な著書に『古建築を復元する』『建築が語る日本の歴史』『文化遺産と<復元学>』(いずれも吉川弘文館)。