中島岳志の「中村屋のボーズ インド独立運動と近代日本のアジア主義」(白水社:2012年8月5日発行)を読みました。390ページもある力作です。
中島岳志が「中村屋のボーズ インド独立運動と近代日本のアジア主義」で大佛次郎論壇賞を受賞したのは今から18年前、2005年のことです。そのことはなぜか鮮明の覚えています。その頃は、経済的な事情で買って読むことは残念ながらできませんでした。
若い頃から新宿の中村屋には、カレーを食べに足しげく通っていたこともあります。また、新築になってからできた新館できた「中村屋サロン美術館」にもよく行ってました。その辺の事情もあり「中村屋のボーズ」の概略は概ね知ってはいました、
が、しかし、今回読んでみて、「インド独立運動と近代日本のアジア主義」という題名の通り、インド独立にかけたボーズの壮大な歩みは、一筋縄ではいかないものであることがよくわかりました。
「アジアの時代」と謳われる今日、この一人のインド人が歩んだ五八年の足跡を振り返ることは、我々日本人にとって大きな意味がある。(本文より)
ラース・ビハーリー・ボース。1910年代のインドを代表する、過激な独立運動の指導者だったが、イギリス官憲に追われていた。武力革命の武器と資金を調達すべく、目をつけたのが、国力を高めていた日本であった。第一次大戦中、日本の国外退去を命じられたボースは、頭山満や大川周明らの力を借り、新宿の「中村屋」敷地内に身を隠す。
戦後は日本でインド独立運動に身を挺し、西欧支配からアジアを奪還するため、果敢な論評を発表しつづける。しかしボースは、アジア解放の名の下、日本軍部と皮肉な共闘関係に入っていく。「大東亜」戦争勃発の瞬間、ついにインド独立がかなう時が来たと考え、「これまでの苦労がすべて吹き飛ぶ」思いに満たされる……。
ボースの懊悩の生涯を描いた、大佛次郎論壇賞、アジア・太平洋賞「大賞」受賞の力作。
目次
はじめに
新宿中村屋のインドカリー ラース・ビハリー・ボーズ
第一章 インド時代
1-1 生い立ち、そしてインド独立運動へ
1-2 ハーディング総督爆殺未遂事件からラホール兵営反乱事件へ
第二章 日本へ
2-1 日本への逃亡
2-2 日英同盟と国外退去問題
第三章 「中村屋のボーズ」
3-1 新宿中村屋
3-2 アジア主義者との連携
3-3 相馬俊子とのロマンスとインドカリー
第四章 日本での政治活動の開始
4-1 表舞台へ
4-2 全亜細亜民族会議
第五章 苦難の道へ
5-1 日本におけるインド独立運動
5-2 満州事変
5-3 雑誌「新亜細亜」の創刊
5-4 アジア開放の論理と行動
5-5 日中戦争
第六章 「大東亜」戦争とインド国民軍
6-1 マレー作戦とF機関
6-2 One fight more, the last and the best
6-3 インド国民軍の運営
6-4 無念の死
終章 近代日本のアジア主義とR・B・ボーズ
あとがき
Uブックス版刊行に寄せて
引用文献
中島岳志:
1975年、大阪生まれ。大阪外国語大学(ヒンディー語専攻)卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程修了。学術博士(地域研究)。博士論文で第3回アジア太平洋研究賞受賞。現在、北海道大学大学院法学研究科・公共政策大学院准教授。専門は南アジア地域研究、近代政治思想史。
主要著書「ヒンドゥー・ナショナリズムー印パ緊張の背景」、「ナショナリズムと宗教-現代インドのヒンドゥー・ナショナリズム運動」、「インドの時代ー豊かさと苦悩の幕開け」、「パール判事ー東京裁判批判と絶対平和主義」、「朝日平吾の鬱屈」、「中島岳志的アジア対談」、「ガンディーからの<問い>ー君は「欲望」を捨てられるか」、「インドのことはインド人に聞け!」、「保守のヒント」、「秋葉原事件ー加藤智大の軌跡」
- 「中村屋サロン美術館」ホームページ
- 展覧会案内│中村屋サロン美術館 (nakamuraya.co.jp)
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