藤森照信+田野倉徹也の「五十八さんの数寄屋」を読みました。
やや専門家向けの本ですが、一般の人が読んでも数寄屋の何たるかがよくわかり、お薦めの本です。
伝統的数寄屋を近代化し、
近代数寄屋を生み出した吉田五十八の設計作法を、
最晩年の住宅作品・岸信介邸を中心にひもとく。
「私はまず、数寄屋建築の近代化から手をつけてみようと考えたのであります」(吉田五十八)
なぜ、吉田は、日本の伝統的住宅様式である書院造と数寄屋造のうち、後者の近代化にのみもっぱら取り組んだのか。――藤森照信[序章より]
時代を経るうちに茶湯から少しずつ離れ、「“崩し"としての数寄屋」だけが意匠として独立する流れがあったように思える。炉の切られていない家、茶を嗜まない主人の家、茶湯とは関係のない建物でさえ、数寄屋造と呼ばれうることに注意しなくてはならない。
そこに共通するものは何であろうか。――田野倉徹也[本文より]
「私は私なりに新しい形式の数寄屋を建ててみたい」
なぜ、吉田は、日本の伝統的住宅様式である書院造と数寄屋造の二つのうち、後者の近代化にのみもっぱら取り組んだのか。
目次
序章 藤森照信
建築史上の吉田五十八
再録・近代数寄屋住宅と明朗性(吉田五十八)
[吉田五十八の普請物語] 田野倉徹也
第1章 吉田五十八の数寄屋
1、近代数寄屋の巨匠
2、吉田五十八の建築思想
3、吉田五十八の設計施工
4、建築家と大工棟梁との距離
第2章 数寄屋の近代化にこめたもの——岸邸を中心に
岸信介邸の概要
実例1 柱のはなし
実例2 屋根のはなし
実例3 天井のはなし
実例4 大壁1——法規制
実例5 大壁2——木割
実例6 建具のはなし1——引込戸と荒組障子
実例7 建具のはなし2——部屋の主と従
実例8 布と新建材
実例9 照明のはなし
実例10 様式のはなし
第3章 吉田五十八の茶室
1、小林古径邸(1934年)
2、加藤邸(1940年)
3、吉田五十八自邸(1944年)
4、北村邸(1963年)
5、猪股邸「勁松庵」(1967年)
6、万国博覧会松下館内「万松庵」(1970年)
第4章 平成吉田五十八考
Appendi
参考文献
対談 「吉田五十八の仕事」藤森照信×田野倉徹也
あとがき
吉田五十八(よしだ・いそや、1894-1974):
東京・日本橋に生まれる。
1923年、東京美術学校卒業。
1925年、欧米に遊学。
1926年、帰朝後建築設計、並びに日本建築の近代化の研究に専念。
1941年、東京美術学校講師。
1946年、東京美術学校教授。
1949年、東京藝術大学教授。
1952年、外務省庁舎建設準備委員「/日本建築の近代化」に対して51年度日本芸術院賞受賞。
1954年、日本芸術院会員。1956年、国立劇場設立準備協議会委員。
1960年、在イタリア・ローマ「日本文化会館」設計委嘱/メキシコ建築家協会名誉会員。
1961年、「五島美術館」設計に対して建築業協会賞受賞/東京藝術大学教授を辞す。
1962年、「大和文華館」設計に対して建築業協会賞受賞/東京藝術大学名誉教授。
1963年、皇居新宮殿造営顧問(~68年)。
1964年、文化勲章受章 文化功労者に列せられる。
1966年、国立劇場の紋章デザインを担当(評議員)。
1967年、「大阪ロイヤルホテル」設計に対して建築業協会賞受賞。
1968年、最高裁判所競技設計審査委員/A.I.A. (米国建築家協会)名誉会員「/在米日本国大使公邸」基本設計委嘱。
1972年、日本劇場技術協会会長。
1974年、3月24日死去、従3位に叙せられ勲1等瑞宝章を受く。
著者
藤森照信:
建築史家、建築家。東京大学名誉教授、工学院大学特任教授、東京都江戸東京博物館館長。
1946年生まれ。東京大学だ愛が悪院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。
作品に「神長官守矢史料館」「熊本県立農業大学校学生寮」(日本建築学会賞(作品))「高過庵」「ラコリーナ近江八幡」(日本芸術院賞)ほか多数。
田野倉徹也:
数寄屋建築家。
1978年生まれ。東京大学同大学院を修了。鹿島建設を経て独立。
作品に「山下和美邸」(漫画『数寄です!』のも登場)「岩惣洗心亭」「にっぽん文楽組立舞台」など。
柿傳・茶湯同好会や淡交文化事業部での講座など。
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