アンソニー・ドーアの「すべての見えない光」(新潮クレストブック:2016年8月25日発行、2022年4月20日10刷)を読みました。
この本は、ハイジさんのイチ推し!
来た!今年一番の本が 後にも先にもこれほどの本には
(今年は)もう出会うまいよ、これ読んだらもう何も読まなくていいよ
それほど素晴らしい 完璧
と言われたら読まないわけにはいきません、遅ればせながら読みました。
訳者あとがきまで入れると、526ページの分厚い作品です。
本の帯には「第3回日本翻訳大賞受賞」と大きくあります。
孤児院で幼い日を過ごし、ナチスドイツの技術兵となった少年。パリの博物館に勤める父のもとで育った、目の見えない少女。戦時下のフランス、サン・マロでの、二人の短い邂逅。そして彼らの運命を動かす伝説のダイヤモンド・・・。
時代に翻弄される人々の苦闘を、彼らを包む自然の荘厳さとともに、温かな筆致で繊細に描き出す。ピュリツァー賞受賞の感動巨扁。
とはいえ、なかなか手ごわい、読むのに手間取ってしまいました。
文章は平易で分かりやすいのですが、場面がくるくる変わり、僕の読解力では理解するのに一苦労でした。いや、そう簡単には理解できてない。
訳者の藤井光は、以下のように言う。
その物語は、ふたつの人生の間を行き来するようにして進行する。1944年8月、ドイツ軍の占領下にあるサン・マルを襲うアメリカ軍の爆撃で幕を開けたあと、物語は10年前にさかのぼり、戦争前のパリで暮らすマリー=ロールと、ツォルフェアアインで暮らすヴェルナー、ふたりの人生を交互に描いていく。マリー=ロールは、目が見えなくなったあと、自然史はkぅ物館で働く父親について毎日博物館に通う。点字を学び、自分の周囲と、それを越える世界について知るようになっていく。一方のヴェルナーは、父親の命を奪った炭鉱で働く運命にどうにか抗おうと思ううちに、ある日、壊れたラジオを拾う。そこから、彼にとって世界は、また異なる姿を見せるようになる。このふたつの物語の行き先を、やがて、しだいに濃くなっていく戦争の気配が変えていく。
この物語の魅力に、短いもので1ページ、長くても10ページほどの短い断章をちりばめる形で構成されているというスタイルがある。・・・ひとつひとつの断章に納得いくまで磨きをかけつつ、総数178にものぼるそれらのエピソード群を、どうやって物語全体に配置するのか、ドーアは試行錯誤を繰り返したという。
池澤夏樹は、以下のように言う。
人生には自分で選べないものがたくさんある。たとえば、この小説の主人公であるマリー=ロールというフランスの少女は目が見えない。ヴェルナーというドイツの少年は大戦に巻き込まれる。悲惨とぎりぎりの彼らの運命をその時々に救うのは、貝殻や桃の缶詰、無線で行き交う声と音、いわばモノだ。それに少数の善意の人たち。遠く離れた少年と少女は少しずつ近づき、一瞬の邂*の後、また別れる。波瀾と詩情を二つながら兼ねそなえた名作だとぼくは思う。
アンソニー・ドーア:
1973年、オハイオ州クリーヴランド生まれ。デビュー短篇集「シェル・コレクター」(2002)で一躍脚光を浴び、O・ヘンリー賞、バーンズ&ノーブル・ディスカバー賞、ローマ賞、ニューヨーク公共図書館ヤング・ライオン賞など、多数の賞を受ける。二冊目の短篇集「メモリー・ウォール」はストーリー賞を受賞し、米主要三紙が年間ベスト作品に挙げた。本作は2015年度のピュリッァー賞を受賞し、ニューヨーク・タイムズのベストセラーリストに100週以上にわたってランクインしている。現在、妻と二人の息子とともにアイダホ州ボイジに在住。