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Channel: とんとん・にっき
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浦山桐郎監督、吉永小百合主演「キューポラのある街」を観た!

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山田洋次監督が選んだ日本の名作100本家族編のアンコール放送が、NHKのBSプレミアムで放映されていました。2月17日(金)「キューポラのある街」浦山桐郎監督(1962年)、2月23日(木)「にあんちゃん」今村昌平監督(1959年)。共に日活作品です。この2作品を録画したもので観ましたが、背景といい、主題といい、非常に似通っている作品です。それもそのはず、浦山監督は「にあんちゃん」では今村監督の下、助監督を務め、浦山監督デビュー作の「キューポラのある街」は、今村と脚本を共同で書いた作品でした。


浦山桐郎監督、吉永小百合主演とタイトルに書きましたが、「キューポラのある街」は、吉永小百合の映画と言ってよいほど、印象が強いものでした。当時、吉永小百合はできのいいので有名な名門都立駒場高校に通っていました。彼女の熱狂的なファンは「サユリスト」と呼ばれ、若者に絶大な人気を誇っていました。が、しかし当時、僕はというと、ギターを持った渡り鳥、すなわち小林旭の渡り鳥シリーズの方に夢中で、吉永小百合・浜田光男の青春路線はあまり好きではありませんでした。以後も、吉永小百合の作品は100本以上になりますが、ほとんど観ることはありませんでした。もっぱらJR東日本の「大人の休日倶楽部」で見るぐらいで。


背景や主題ですが、中小の鋳物工場の建ち並ぶ「川口」という街が舞台で、そこで働く労働者たち、工場主も同様ですが、働けど働けど暮らしは一向に向上することのない社会の下層の生活者たち、そして同じ労働者であって差別され続ける朝鮮人、そして北朝鮮への帰還事業、等々、その当時の社会的な背景がこの作品に大きく影を落としています。小さな鋳物工場に長年勤めた工員の辰五郎(東野英治郎)らが「首」になるところからこの作品は始まります。若い工員の塚本克己(浜田光夫)が親方(殿山泰司)に食ってかかります。石黒ジュンは中学3年生、弟のタカユキ(市川好郎)はガキ大将で、朝鮮人の子である金山サンキチ(森坂秀樹)を子分にし、いつも従えています。


失業した父親をみて、ジュンは同級生の金山ヨシエのバイト先のパチンコ屋で働き始めます。金山ヨシエはサンキチの姉でした。克己が餞別を持って辰五郎の家に来たが、辰五郎は「俺は組合が嫌いだ。アカの世話になるわけにはいかねえ」と突き返します。辰五郎は職探しの毎日だが、なかなか職は見つからず、酒に酔って帰るようになります。ジュンの担任の野口先生は、ジュンの高校進学を心配してくれます。辰五郎は一旦再就職しますが、機械化された設備に戸惑い、会社に行かずに朝から酒を飲んでいます。こうした状況下では、ジュンは修学旅行にも行きません。高校進学も出来る状況ではありません。母親は酒場で働くようになります。酔客とじゃれ合う姿を見たジュンは、母親は不潔だと自棄放棄になり、歓楽街で危ない目にあったりします。野口先生は、ジュンに働きながらでも学べる定時制高校への進学をアドバイスします。


朝鮮総連の指導により、北朝鮮へ帰還する運動が起こり、金山ヨシエとサンキチは、父親と共に北朝鮮へ行くことになります。日本人の母親は日本に残り、家族は別れ別れになりました。川口の駅での盛大な送行会。北朝鮮は「地上の楽園」だと宣伝されます。僕が「キューポラのある街」をぜひ観たいと思ったのは、菊池嘉晃の「北朝鮮帰国事業」(中公新書 2009年11月25日発行)を読んだのがきっかけでした。僕が小学校3、4年の頃、朝鮮人の子が同じ学級に何人かはいました。僕と仲良かった友達の名はいまでも覚えています。「ショウヘイショウ」、彼は突然、北朝鮮に帰ってしまいました。サンキチはタカユキから託された伝書鳩を列車から放ったとき、川口の方へ飛んでいったので、母ちゃんに会いたくて途中で列車を降りて、帰ってきてしまいます。


サンキチの母親は別の男と結婚すると言い残していなくなってしまいます。タカユキはサンキチの生活費を稼ぐために、新聞配達を手伝います。姉のジュンに見られてしまいますが、「お前もいいとこあるじゃない」と、逆に褒められたりします。「父ちゃんには内緒だぜ」と、タカユキは姉に言います。克己の会社が新工場を作るので、経験者として辰五郎も職場復帰が決まります。ジュンが帰ると、克己と辰五郎は機嫌良く酒を飲んでいます。克己は「組合がやってくれたんだよ」と言うと、辰五郎は「組合っていいもんだな」と、いままで組合をアカと言っていたのに豹変します。ジュンは働きながら定時制高校へ行くことを父親に告げます。そしてサンキチが再び北朝鮮へ行くことになり、別れの時がきます。列車に乗ったサンキチ、ジュンとタカユキは、列車に向かっていつまでも手を振り続けます。


原作は社会派の小説家、早船ちよの「キューポラのある街」(1961年)。吉永小百合は浦山桐郎監督作品、全9作品のうち、4作品に出演しているという。浦山監督は昭和60年、55歳の若さで亡くなります。


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「キューポラのある街」 ウキキペディア


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菊池嘉晃著「北朝鮮帰国事業」を読んだ!





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