吉本ばななの「ミトンとふびん」(新潮社:2021年12月20日発行、2022年12月10日8刷)を読みました。8刷とはすごい。
吉本ばなな、といえば、僕らの世代では父親が吉本隆明と聞いて恐れをなして逃げ出す、というほどの怖い存在です。小説家で、「キッチン」とか「TUGUMI」で有名な作家です。よしもとばななは世田谷邪宗門を訪れ、「ごはんのことばかり 100話とちょっと」のなかで、邪宗門を紹介しているようです。
というわけで、ではないですが、なぜか一冊も読んだことのない作家でもあります。書く本の内容も知らずに、「ミトンとふびん」を読むことになったのは、どうしてなんでしょう。
第58回谷崎潤一郎賞受賞作、と聞いてか、なぜか「ミトンとふびん」を読むことになりました。まあ、賞という賞はとっているようなので、谷崎潤一郎賞だけで目が眩んだわけではないでしょうが。版型というのでしょうか、少し小さめの本で、いかにも読みやすそうな本のかたちで、内容もやさしそうに感じました。
目次
夢の中
SINSIN AND THE MOUSE
ミトンとふびん
カロンテ
珊瑚のリング
情け嶋
あとがき
何ということもない話。
大したことは起こらない。
登場人物それぞれにそれなりに傷はある。
しかし彼らはただ人生を眺めているだけ。
「長い間、そういう小説をかきたかった」と、吉本ばななは「あとがき」でいう。
そうなんだ、と、「ミトンとふびん」を読んでわかりました。
あれ? 読んだら少しだけ心が静かになった。
生きやすくなった。息がしやすい。あの小説のせいかな? まさかね。
そんな感じがいい。そのほうが長いスパンでその人を救える。
そして、
よりさりげなく、より軽く。
しかしたくさんの涙と血を流して。
この本が出せたから、もう悔いはない。
引退しても大丈夫だ。
と、相当の自信作のようです。
吉本ばなな:
1964年東京都生まれ。87年「キッチン」で海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。著作は海外三十数カ国で翻訳出版され、国内外問わず多くのファンに支持されている。最近の著書に『ミトンとふびん』がある。
というわけで、
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「私と街たち(ほぼ自伝)」
2022年6月30日初版発行
著者:吉本ばなな
発行所:株式会社河出書房新社