INAXギャラリーは2012年3月1日付で「LIXILギャラリー」に名称が変更されました。ということで、名称変更がされてから、初めて行ってきました。つまりLIXILギャラリーで「平子雄一展」と、「佐々木忍展」を観てきました、というわけです。またまた、まったく好対照な展覧会です。平子雄一の「庭先メモリーズ」は、植物と都市生活をテーマにしたアクリル画と立体作品です。佐々木忍の作品は、数センチの小さな白い磁器百体でつくられた江戸の大名行列です。
一方は、濃緑色の森の中、切り株は虹色に輝き、カラフルな光が乱舞しています。もう一方は、ストイックなまでに精巧な白磁です。平子は、現在植物を使ったサウンドインスタレーションも行っているが、大きなサウンドアートをやってみたい。次は東南アジアでもやりたいと語ります。佐々木は、建物と人の風景に物語があるような街並みをつくりたい、題材はつきない、と語ります。
「平子雄一展 庭先メモリーズ 見えない森」
「平子雄一展」
平子雄一の「庭先メモリーズ」は、植物と都市生活をテーマにしたアクリル画と立体作品です。濃緑色の森の中、切り株は虹色に輝き、カラフルな光が乱舞し、木々の幹や枝葉は縦横に繁茂して、テントや部屋、あるいは林立するビルや車を思わせるかたちと合体しています。背景は闇。深い黒にいっそう鮮やかに浮かぶ光景は、無国籍なフェスティバルのように明るく輝き、昼夜を超えた時空間が、濃い緑と暖かく湿った土の親密さに包まれています。特徴的なのは、頭部や全身を葉で覆った人間か植物かわからない生き物たちの存在です。時に画面から飛び出したように立体作品としても登場する彼らは、少年の背格好で、シャツや半ズボンを身につけ、物語のキャラクターのように様々なシチュエーションで現れます。その姿は人間のようでもあり、自然の化身のようでもあり、人間と自然の関係性そのものの存在のようにも見える不思議な存在です。平子雄一は1982年岡山県生まれ、ロンドンのWimbledon College of Artで学び、2006年から日本で活動を開始し、公募展でも数々の受賞を得ています。2008年から続くこの「庭先メモリーズ」シリーズは、街路樹、路地に並ぶ植木鉢、アスファルトの隙間からのぞく雑草まで、都市生活をおくる私たちが慈しみ、離れられず、人工的に労力を使ってまで身近に接している植物という生物への単純な興味と、人間との関係性に着目して始まりました。「ソング」「ヤドリギ」と続き、今展は「見えない森」として、立体を含めた新作15点を展示します。人間と植物、都会と森、夜と昼、天地左右の境界が書き換えられ、めくるめく庭先の様相があらわれて始まりも終わりもない物語が紡ぎだされる濃密な世界を、ぜひ会場でご覧ください。
「佐々木忍展―白磁十二支大名行列―」
「佐々木忍展」
佐々木忍の作品は、数センチの小さな白い磁器百体でつくられた江戸の大名行列です。幅1.8cmの台の上に立つ人物の身長は、およそ3cm。それでもしっかり着物を着て帯刀し、傘をかぶり、あるいは槍持ち、草履取り、騎馬などの設えを施されています。手びねりで、大きさからは想像もできないほど細かくかたちづくられた人物、しかし、その顔は人間だけではありません。ネズミから始まり、牛、虎、龍・・・と干支の動物たちが順番に行列をなし、中央の大名が乗る駕籠を固める馬回りは、馬の顔をしています。浮世絵の擬人化された動物たちに見られる江戸の粋がそのまま立体フィギュア化したかのような、見る人の笑いを誘うユーモアに、白磁釉が現代的なスタイリッシュさを与えて、独特の世界を構築します。佐々木忍は、女子美術大学で陶芸を専攻し、在学中から骨董をきっかけに江戸庶民の暮らしぶりに興味を持つようになりました。風俗資料を見て根付の題材や江戸の人物を自分でつくりたいと思い、宮川香山からも影響を受け、資料から思い切った装飾や造形へ想像を膨らませ、磁土を使って制作をはじめます。大学卒業制作では幅30cm、高さ50cmの壷5点に水戸黄門や江戸の物売り、昆虫や魚、鳥を縦横にくっつけた「大江戸」で優秀賞を受賞。その後も江戸をモチーフに、次はもっともっと小さくできるという思いから、手のひらサイズの蓋ものに庶民や動物の活気ある日常を描き出したシリーズを発表し、人気を博しています。今展では、大作を一度に発表したいと「大名行列」をテーマに数年来つくり続けてきた作品を初めて会場に並べます。摩訶不思議な江戸の大名行列、ぜひ会場でご覧ください。