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藤原聖子の「宗教と過激思想 現代の信仰と社会になにが起きているか」を読んだ!

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藤原聖子の「宗教と過激思想 現代の信仰と社会になにが起きているか」(中公新書:2021年5月25日発行)を読みました。

 

この本を取り上げたのは、安倍元首相が凶弾に倒れたこととは、一切関係がありません。1年前に朝日新聞の柄谷行人の書評を読んで購入してあったものですが、なんとなく積読状態だったものです。

 

いま、なぜ「過激」なのか 

近年、危険とみなされる宗教に対して、「異端」にかわり、「過激」という表現がよく使われる。しかし、その内実は知られていない。本書は、イスラム、キリスト教、仏教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、神道などから、過激とされた宗教思想をとりあげ、わかりやすく解説。サイイド・クトゥブ、マルコムX、ジョン・ブラウン、井上日召、メイル・カハネらの思想を分析し、通底する「過激」の本質を明らかにする。

 

正直言って僕には、この本は難しい。

本書の半分を占める第2章までが読むのが大変でした。

 

「はじめに」には、こうある。

本書の目的は、宗教に関して使われる「過激」という語の内実や「過激思想」の特徴を解明することである。実際に起きたテロ事件などの行為の分析ではなく、思想の解読を中心に進めていく。過激な行為がなぜとられたかを説明するには、行為者の動機、意図、理由、社会的・心理的原因などから探る必要があるが、それらは不明なことが多い。それに対して、文章化され出版もされている思想はアクセスしやすく比較もしやすいという利点があり、本書の読者が自ら原点を確認し、本書の読解を検証することも可能である。

また、極左やアナーキズムナドの過激思想全般を論じるわけではなく、あくまで宗教思想としての過激思想を対象とし、現代社会において変化する宗教の一つの、ただし社会的影響という点では重要な側面を探るというのが本書のスタンスである。

 

朝⽇新聞掲載・柄谷行人:2021年07月10日

ところで私は、今後も宗教的「過激派」がありうるとしても、以前のものとは異なるのではないか、と思う。私の印象では、20世紀の末に社会主義が没落したと同様に、宗教も全般的に没落した。「新自由主義」の勝利とともに、一つの宗教が支配的となったからだ。それは、マルクスがいう「物神」を崇(あが)める宗教である。宗教から解放されたと思う人たちは、今、物神教の支配の下であえいでいる。宗教的過激派もその例外ではありえない。

「宗教と過激思想」 「一神教に由来」ではありえない 朝日新聞書評から|好書好日 (asahi.com)

 

目次 

あきらかにする。

はじめに 

序 章 宗教・過激に関わるいくつかの言葉 

第1章 「アンチ西洋」ではくくれない―イスラム系過激思想

 1 再来するサイイド・クトゥブ―アルカイダ・ISの源流とされる思想

 2 マルコムXのNOI―ISの前にあった「イスラム国」

 3 カリフ制再興思想の過激さ

第2章 「弱き者のため」のエネルギーはどこから―キリスト教系過激思想

 1 「テロリストの父」といわれるジョン・ブラウン

   ―手段を選ばなかった奴隷制廃止運動家

 2 現代のプロ・ライフ派はブラウンの後継者か―命のために命を奪う人々

 3 「おうい雲よ」の山村暮鳥も―伏字にされた児童文学

第3章 善悪二元論ではないのに―仏教系過激思想

 1 井上日召「一人一殺」―戦前の若者を魅了した日蓮主義

 2  急増するチベット仏教僧の焼身・抗議運動

第4章 ナショナリズムと鶏卵関係か

   ―ユダヤ教・ヒンドゥー教・神道系過激思想

 1 カハネ主義―ネオナチ化したユダヤ教徒

 2 ヒンドゥー・ナショナリズム―「寛容」という名の排他性

 3 神道に過激思想はあるか

第5章 過激と異端はどう違うか

 1 異端はどこが異端とされたのか

 2 悪魔崇拝の系譜

終章 宗教的過激思想とは何か

おわりに 「宗教的過激思想」が照らし出すもの

あとがき

参考文献

 

藤原聖子:

1963年東京生まれ。86年東京大学文学部卒業。2001年シカゴ大学大学院博士課程修了(Ph.D)。東京大学大学院人文社会系研究科准教授などを経て、17年から同教授。

著書「現代アメリカ宗教地図」(平凡社新書,2009)

「教科書の中の宗教」(岩波新書、2011)

「世界の教科書で読む<宗教>」(ちくまプリマ―新書、2011)

「ポスト多文化主義教育が描く宗教」(岩波書店、2017)

「世俗化後のグローバル宗教事情<世界編Ⅰ>」(編著、いま宗教に向き合う第3巻、岩波書店、2018)ほか。


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