山種美術館で「和のよそおい―松園・清方・深水―」展を観てきました。前回は山種美術館創立45周年記念ということで、特別展「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」を前期、後期に分けて開催され、また山下裕二さんの講演会もあったりして、大いに盛り上がりました。今回は「和のよそおい」ということで、少し控えめな展覧会かと思いきや、なかなかどうして、さすがは「日本画の専門美術館」を標榜するだけあって、全部自前で、数々の名作が出てきました。タイトルにあるように「松園・清方・深水」を始め、素描・小下絵も含めて全部で62点の作品が展示されていました。うち、浮世絵が名作揃いですが、4点出されていました。
トップを飾るのは江戸前期の作、作者不詳「輪踊り図」です。これは「江戸絵画展」の時に観たものですが、「盆踊風俗絵」とも呼ばれ、かつては「伝岩佐又兵衛」とされていたというもの。輪の中心に鼓を打つ人、歌を歌って調子をとる人、その周りで踊る人、必ずしも踊りが揃っていないところがご愛敬、と解説にあります。
「舞妓の美」、橋本明治の「月庭」と、林武の今回唯一の油彩作品「立てる舞妓」、一方が青く、もう一方が赤く、これは好対照です。この2作品は、「日本画と洋画のはざまで」展で観ました。「舞妓」で言えば、土田麦僊の「舞妓」と、奥村土牛の「舞妓」、この2作品も好対照です。今回僕は、北澤映月の「想(樋口一葉)」と、奥村土牛の「姪」に注目しました。派手さはないが、共に凛とした静けさが漂って、キリリと身が引き締まる思いがしました。
今回、ラストを飾るのは上村松園で、18作品が出されていました。圧巻は、別室に展示されていましたが、「蛍三部作」と言うのかどうかはわかりませんが、「夕べ」「蛍」「新蛍」が並べて展示されていました。これらの作品、以前、何度か観たことがあります。「蛍」は夕暮れ時、蚊帳を吊ろうとして、ふと足元を観ると蛍が飛んでいるというものです。「新蛍」と「夕べ」は共に簾で涼しさを表しています。
今回の展覧会、チラシになっているのは松園の「春芳」ですが、タイトルになっているのは「春のよそをひ」からとったものでしょう。顔の向きは同じでも、やはり表情が異なります。「牡丹雪」は言うまでもなく松園の代表作のひとつです。女性2人を画面左下に小さく描き、上部を大きく開けた大胆な構図が、この作品の大きな特徴です。娘たちは寒さから手を袖の中に入れて傘を握り、うつむきながら歩を進めます。ずいぶんと雪道を歩いてきたのか、傘に積もった雪の重みまでが伝わってくる、と解説にあります。
歴史を彩った人々
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―浮世絵―
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舞妓の美
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―油彩―
生活の中の女性たち
上村松園と美人画
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「和のよそおい―松園・清方・深水―」
四季折々の豊かな自然の中で育まれた日本人の美意識は、絵画、工芸品などに取り入れられてきました。日本の民族衣装である着物は、織物、染色などの総合的な工芸品であり、季節や着る人によってもさまざまな美しさをみせる、日本独特の芸術といえるでしょう。和服に身を包んだ女性の姿は多くの人を惹きつけ、近世初期より風俗画や浮世絵に描かれるようになりました。本展では、上村松園、鏑木清方、伊東深水らが描いた美人画を中心に、浮世絵や近・現代の日本画・洋画に見られる個性豊かな「和のよそおい」の美人をご紹介します。特に、松園の作品は、着物や帯の柄だけでなく、髪形(髷)、髪飾りに至るまで、女性画家ならではの細やかな視点から描かれていることにご注目ください。鈴木春信《柿の実とり》のおてんば娘、松園《庭の雪》の初々しい娘、清方《伽羅》の艶やかな若妻、深水《春》の溌剌とした現代女性、小倉遊亀《舞う》の愛らしい舞妓など、さまざまなタイプの和装女性をモチーフとした作品をご覧いただきます。着物を着る機会が少なくなった昨今ですが、日本の伝統的な衣装と美しき日本女性の魅力を紹介する本展に、ぜひ「和のよそおい」でお出かけいただき、装う楽しみを再発見いただければ幸いです。
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