キム・ギドク監督の作品は、全部で15作品、僕は最後にビデオデッキまで買って「魚と寝る女」を観て、キム・ギドクの作品は「全点踏破」、全作品を観たことになります。一昨年の年末のことでした。観て記事としてブログに書いていないものが4作品あります。それはそれとして、キム・ギドク監督、「悲夢」を最後に、映画製作から遠ざかっていました。その理由は二つ。「悲夢」の撮影中、危険な事故が起きたことと、長年の側近が監督のもとを離れて違う道を選んだこと。それらによって「映画への信念を失い、人間に対する不信感が募りました。映画を作る意味を失っていた」と、キムギドクは語っています。
人里を眼下に見下ろす山の中腹、雪に閉ざされた山小屋に一人の男がいます。伸び放題の半白髪を振り乱した男が小屋から出てきます。脚のかかとは泥に汚れ、ささくれ立っています。1匹の猫がこちらを見ています。雪をすくって鍋に入れ、鍋を持って小屋に入り、薪ストーブにかけます。雪が溶けてお湯になると、インスタントラーメンを無造作に放り込み、ラーメンが出来上がると、鍋からそのまま食べ始めます。このホームレスのような生活をしている男こそ、キム・ギドクその人です。食事だけでなく、なんでも手づくりで作ってしまう山小屋生活は快適そうです。旋盤を器用に操り、エスプレッソ・マシンまで自作してしまい、美味しいエスプレッソ・コーヒーを飲んでいます。
その合間に、キム・ギドクの自問自答が繰り返されます。「お前の映画を観たい人間が本当にいるのか?」「韓国の恥部を売り物にすると、お前は嫌われているじゃないか」「弟子さえお前を裏切ったじゃないか」と問うキム・ギドクがいます。。それらの問いに真摯に答えて、自らの映画人生を辿りなおすキム・ギドクがいます。過去の自身の作品、主演もした「春夏秋冬そして春」を観ては、涙を流します。自慢の喉で「アリラン」を歌っては、涙を流します。2度目に「アリラン」を歌ったときは号泣です。一人三役を演じて、自分の手で映画をこね上げていきます。
そして出来上がったのが「アリラン」です。山小屋での生活を撮影するうちにそれが楽しくなり、2000時間近く撮影したという。製作・監督・脚本・録音・編集、その他すべてを一人で行っています。「私の映画を愛する人々の存在が心をノックしてくれたおかげで、再び映画を撮っていこうと思えたのです」と、引きこもり生活から抜け出したキム・ギドクは語ります。
以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。
チェック:『春夏秋冬そして春』や『サマリア』などの傑作を生み出してきた、韓国の鬼才キム・ギドク監督によるセルフ・ムービー。猫と共に山間の寂しい町で隠居生活に近い暮らしを送りつつ自問自答を繰り返す自身の様子を映し出す。今回彼は監督・脚本・主演をはじめ、作品にまつわるすべてを一人で敢行。もがき苦しむ自分、強い口調で鼓舞するもう一人の自分、その二人の対話を第三者の目で見つめる自分とのやり取りや「アリラン」の熱唱など、一筋縄ではいかない展開に目が離せない。
ストーリー:世界的映画監督のキム・ギドクは、2008年の『悲夢(ヒム)』の撮影中、ある女優が命を落としかけるという事故にひどくショックを受ける。そのことが尾を引いて映画を撮れなくなった彼は、トイレもない粗末な小屋に移り住み、家の中にテントを張って暮らし始める。薪ストーブで炊事する孤独な彼を慰めてくれるのは一匹の猫だけだった。
下に、キム・ギドクの全作品を載せておきます。
「鰐」(1996)
「ワイルド・アニマル」(1997)
「悪い女~青い門~」(1998)
「リアル・フィクション」(2000)
「魚と寝る女」(2000)
「受取人不明」(2001)
「悪い男」(2001)
「コースト・ガード」(2002)
「春夏秋冬そして春」(2003)
「サマリア」(2004)
「うつせみ」(2004)
「弓」(2005)
「絶対の愛」(2006)
「ブレス」(2007)
「悲夢」(2009)
*観て、記事に書いたもの
キム・ギドク監督の「魚と寝る女」を観た!
キム・ギドク監督の「コースト・ガード」を観た!
キム・ギドク監督の「鰐(ワニ)」を観た!
キム・ギドク監督の「悪い男」を観た!
キム・ギドク監督の「サマリア」を観た!
キム・ギドク監督の「春夏秋冬そして春」を観ました!
キム・ギドク監督の「悲夢」を観た!
キム・ギドク監督の「ブレス」を観た!
キム・ギドク監督の「絶対の愛」を観た!
キム・ギドク監督の「弓」を観た!
キム・ギドク監督の「うつせみ」を観る!
*観たけれども、まだ記事にしていないもの
「ワイルド・アニマル」(1997)
「悪い女~青い門~」(1998)
「リアル・フィクション」(2000)
「受取人不明」(2001)