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松村淳の「建築家の解体」を読んだ!

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松村淳の「建築家の解体」(ちくま新書:2022年6月10日第1刷発行)を読みました。

 

松村淳の前著、「職業としての建築家の社会学 建築家として生きる」が刊行されたのが3月30日、(たぶん)それを見た筑摩書房の編集者・柴山浩紀さんが松村に声をかけたのが、この本の成り立ちのようです。柴山さんは名うての編集者、あちこちにアンテナを張っているようです。

 

それはそれとして、松村淳の前著、「職業としての建築家の社会学 建築家として生きる」はこの手の本としては287ページもある分厚い本です。いわゆる建築畑以外の人が建築家を扱うという珍しい本です。彼は「建築家という職業は、かつてのような少数のエリートによって担われた時代は去り、現在は、誰もが目指しうる一つの職業として大衆化したようにみえる」という。が、しかし彼は「本当にそうなのだろうか」と、疑問を呈しています。(「建築家として生きる」はじめにより)

 

実は僕は、「職業としての建築家の社会学 建築家として生きる」はほぼ発売と同時に購入し、ざっと斜め読みし、そのまま数年、積読状態のまま置かれていました。今回、「建築家の解体」を本屋で平積みされているのを見て、「あ、あれか!」とすかさず購入、一晩で一気読みでした。前著の斜め読みがあったからこその芸当です。

 

「建築家の解体」は、

『建築の解体』の刊行から五〇年弱、後期近代の時代にあって、安藤忠雄や隈研吾に代表される従来の建築家のイメージは、見直しを迫られている。ブルデューの理論を用いて、建築家という職業がつくられていくプロセスを描写するとと

もに、解体していく建築家像の軌跡をたどる。フィールドワークの知見を盛り込み、「街場の建築家」という今後の可能性を最後に示す。

 

建築家の解体 目次

序章 建築家を書く

1 本書の特徴

社会学的研究テーマとしての建築家/個人的な関心という執筆動悸

2 建築家とはだれか

日本における建築家の起源/現代日本における建築家とは/建築家はなぜ存在しつづけていられるのか/変わりゆく建築家

3 「建築家の解体」とはなにか

タイトルの意味/本書の構成

第一章 建築家とは何か

1 社会学で建築家を理解する

ブルデューの理論/<界>とはなにか/芸人と<お笑い界>/M-1の役割/芸人の資本と<ハビトゥス>/資本の四つの類型

2 建築家界という界について

建築家界のしくみ/建築家界の境界/建築家界に入るには

3 建築家のハビトゥス

賭け金としての作品/安藤忠雄のデビュー作/表現とハビトゥス

4 タイムスリップして父に言いたいこと―まとめにかえて

ハビトゥスを身につけることの必要性

第二章 建築家をつくる大学教育

1 大学の建築教育は実用的なのか

大学の建築教育、その潜在的効果/大学教育の意味

2 基礎教育を通したハビトゥスの体得

教育の仕組み/筆者の経験から/審美眼を養う/別荘を設計する

3 講評会という教育装置

徒弟的教授法から講評会へ/講評会という教育装置/講評会という場の持つ意味/教え込みの失敗

4 建築家らしさとは

大学で何を身につけたか/建築界のサポーター/足かせになるハビトゥス/建築家とそうでない者

5 まとめ

補論1 安藤忠雄伝説の秘密を解く

1 サクセスストーリーの裏側

ミッシングリンクを埋める

2 差別化の戦略

独学とアルバイトで建築を学ぶ/世界旅行

3 資本と賭け金

社会関係資本をつくる/<賭け金>をつくる

4 まとめ

第三章 建築家と住宅

1 <賭け金>としての住宅

パドックからカラオケへ/住宅の神格化/戦後の住宅史/小住宅の名作

2 住宅産業の誕生と建築家

冷めてい く住宅への熱/住宅産業の成長

3 住宅における建築家の役割は終わったのか

住宅という食い扶持/住宅は芸術である?/篠原一男の影響/都市に住まうという主題/安藤忠雄の解答

4 過激化する住宅作品

野武士の世代/野武士世代の住宅作品/石山修武の「幻庵」/伊東豊雄の「アルミの家」/安藤忠雄の「住吉の長屋」/パドックの論理/隈研吾の警告

5 まとめ

第四章 後期近代と建築家の変容

1 後期近代とはどのような時代か

本レースの消失/建築におけるポストモダン/後期近代の脱埋め込み

2 ハコモノ化する建築

時間と空間の分離/空間と建築家/ハコモノの登場/建築敵視の風潮

3 一九七〇年―大阪万博とシンボルの転換

お祭り広場と太陽の塔/建築デザインの失効/オウム真理教のサティアン

4 一九九五年―阪神・淡路大震災と建築家

建築家の無力感/復興後の景観/坂茂の紙の建築

5 東日本大震災と建築家

伊東豊雄のジレンマ/アーキエイドの活動/「顔の見える」専門家として

6 まとめ

補論2 隈研吾―後期近代的建築家像

1 プロローグ

2 一九八〇年代―建築家像の模索

3 一九九〇年代―反オブジェクトと地方

「建築を消したい」という願望と形態の否定/脱コンクリートとしての自然素材/隈研吾と地方

4 二〇〇〇年代以降―新しい有機的建築の追求

手法の変化/「生物」というキーワード

5 まとめ

第五章 建築家の解体と街場の建築家

1  解体される建築家の職能

建築家のフロンティア/建築家の解体

2 起業家としての建築家―谷尻誠

異質の存在/アトリエ事務所を断念/リスクのある独立/建築家界の外で

3 建てない建築家の登場

コミュニティデザイナーの職能/マルヤガーデンズのプロジェクト/場所をつくる

4 街場の建築家たち

ボトムアップ型のまちづくり/塩屋の場合/街場の建築家/類型/街場の建築家のリアリティ

5 専門家のゆくえ

石山修武の慧眼/素人、玄人関係なく

6 まとめ

あとがき

参考文献(五十音順)

 

松村淳:

:香川県木田郡(現高松市)牟礼町出身。博士(社会学)。二級建築士。2021年より関西学院大学社会学部准教授。専攻は労働社会学、都市社会学、まちづくり研究。ライフワークとして、人と建築の関係性を総合的に考察する視角としての「建築社会学」の可能性を探究している。著作に『建築家として生きる――職業としての建築家の社会学』(晃洋書房)がある。

 

関西学院大学研究叢書

「建築家として生きる」

―職業としての建築家の社会学―

2021年3月30日初版第1刷発行

著者:松村淳

発行所:晃洋書房


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