永田和宏の「あの胸が岬のように遠かった 河野裕子との青春」(新潮社:2022年3月25日発行)を読みました。河野裕子の日記や歌を使ってはいますが、永田和宏の青春時代の自叙伝と言えるでしょう。
この本が原作のNHKテレビドラマ、「あの胸が岬のように遠かった~河野裕子と生きた青春」も、もちろん観ました。本に書いてあるエピソードが、ドラマの中で各所に散りばめられていました。
その前に、NHKBS1スペシャル「ほんとうに俺でよかったのか」
2022年2月25日(金)放送のドキュメンタリー番組も観ました。
これば「あの胸が岬のように遠かった 河野裕子との青春」が、ほぼ原作の永田和宏を画像に登場されるドキュメンタリー番組でした。
それがこれ!
戦後を代表する女性歌人・河野裕子(かわのゆうこ)さん。彼女のもっとも有名な歌である
「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうにわたしを攫って行っては呉れぬか」
は、歌壇きってのおしどり夫婦と名高い永田和宏さんへの想いを読んだものと、永田さん自身も含め誰もが疑っていませんでした。しかし、河野さんの死後10年、夫・永田和宏さんが、押し入れから発見した河野さんの遺した手紙300通と日記10数冊には、「二人のひとを愛してしまへり」という言葉とともに、当時10代だった河野さんが、永田さんの他に、もうひとり「N」という青年へのひたむきな愛の言葉が……。
この日記を読んでいくうちに、永田さんの心は若き日の河野さんとの思い出があふれだします。
はたして、河野さんが「君」と呼び掛けていたのは、その後夫となり生涯を共にした永田さんだったのか、それとも青年Nだったのか――。
そして、河野さんが遺したメッセージに呼応するように、永田さんも驚くべき告白を連ねていきます。
「知らぬまま逝ってしまつた きみを捨て死なうとしたこと死にそこねたこと」――。
熱く、性急で、誠実ゆえに傷つけあった若き日々。理想のおしどり夫婦とされてきた二人のイメージを一変する、知られざる愛の記憶を描いた『あの胸が岬のように遠かった――河野裕子との青春』を3月24日に新潮社より発売。
目次
はじめに
湖に降る雪ふりながら消ゆ
風のうわさに母の来ること
消したき言葉は消せざる言葉
手を触るることあらざりし口惜しさの
わが十代は駆けて去りゆく
青春の証が欲しい
さびしきことは言わずわかれき
二人のひとを愛してしまへり
あの胸が岬のように遠かった
きみに逢う以前のぼくに遭いたくて
わが頬を打ちたるのちに
わが愛の栖といえば
はろばろと美し古典力学
泣くものか いまあざみさえ脱走を
おほよその君の範囲を知りしこと
「夏がおわる。夏がおわる。」と
寡黙のひとりをひそかに憎む
今しばしわれを娶らずにゐよ
附記
おわりに
永田和宏:
1947年滋賀県生まれ。歌人・細胞生物学者。
京都大学理学部物理学科卒業。京大再生医科学研究所教授などを経て、2020年よりJT生命誌研究館館長。日本細胞生物学会元会長。京大名誉教授。京都産業大名誉教授。歌人として宮中歌会始詠進歌選者、朝日歌壇選者をつとめる。 「塔」短歌会前主宰。読売文学賞、 迢空賞などを受賞。2009年、紫綬褒章受章。近著に『知の体力』『置行堀』(第十五歌集)。
河野裕子と1972年に結婚。2010年、64歳で亡くなるまで38年間連れ添った。最後の日々を綴った著書に『歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子 闘病の十年』(新潮文庫)がある。
朝日新聞:2022年4月21日
NHKBSプレミアム
「あの胸が岬のように遠かった」
2022年6月6日放送
柄本佑と藤野涼子が共演するドラマ『あの胸が岬のように遠かった~河野裕子と生きた青春~』が、6月6日にNHK BSプレミアムにて放送されることが発表された。本作は、歌人・細胞生物学者の永田和宏による同名著書を原作としたラブストーリー。最愛の妻が亡くなったあと、若いころに綴られた日記が押し入れから見つかった。そこには2人の男性の間で揺れ動く切ない恋心が、数々の短歌とともに瑞々しい筆致で綴られていた。夫は日記を頼りに、青春の日々を追想する心の旅に出る。永田を柄本、永田の妻・河野裕子を藤野が演じる。なお、柄本は永田の青年期と老年期を一人二役で演じる。
過去の関連記事:
永田和宏の「歌に私は泣くだろう 妻・河野裕子 闘病の十年」を読んだ!
追記:
永田和宏の短歌の本、以下の3冊、勉強しようと購入しました。
毎度のこと、いつ読めるかわかりませんが…。
「近代秀歌」
岩波新書
2013年1月22日第1刷発行
2020年12月15日第18刷発行
「現代秀歌」
岩波新書
2014年10月21日第1刷発行
2022年2月4日第10刷発行
「人生の節目で読んでほしい短歌」
NHK出版新書
2015年3月10日第1刷発行
2021年2月5日第6刷発行