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ヤマザキマリの「壁とともに生きる わたしと「安倍公房」」を読んだ!

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ヤマザキマリの「壁とともに生きる わたしと「安倍公房」」(NHK出版新書:2022年5月10日第1刷発行)を読みました。

 

安倍公房の本は、「砂の女」は新潮社の純文学書き下ろし特別作品を持っていました。が、いくら探しても見当たらず、やむなく新潮文庫の「砂の女」を購入し、読みました。また、安倍公房作品は、純文学書き下ろし特別作品「方舟さくら丸」が出てきました。読んでましたね。1984年11月15日発行、1985年1月25日4刷とあります。「砂の女」と「方舟さくら丸」の間の3冊、「燃えつきた地図」「箱男」「密会」は手許にないし、読んだ記憶がありません。従って、安倍公房の本は読んでないので、ヤマザキマリの議論には残念ながらついていけないことがほとんどですが、安倍公房を自分に引き付けて話すことには、好感が持てました。

安倍公房の「砂の女」を読んだ!

 

世界で最も新しく、身近な文学・・・

ドナルド・キーン

安倍公房の文学の特徴は絶対さであり、あらゆる制限を乗り越えていく自由さにある。安倍氏は想像力を縛るようなものを一切認めず、写実的な材料を用いて超現実的な建築物を建てるのである。

安倍氏の作品は難解であると言う人がいる。確かにその小説や戯曲には常識に反するような出来事が起こることがある。だが、氏は人間という極めて複雑な存在を書いているので、読者はどのように理解しても差し支えなかろう。世界の各国で氏の文学は最も新しく、最も身近なものとして読まれている。

 

不自由で理不尽な社会で、心涼やかに生きるには?
自由に生きれば欠乏し、安定すれば窮屈だ。どうしようもなく希望や理想を持っては、様々な”壁”に阻まれる――。そんな私たち人間のジレンマを乗り越えるヒントは、戦後日本のカオスを生きた作家・安部公房にある!「マンガ家・ヤマザキマリ」に深い影響を与え、先の見えない現代にこそその先見性が煌めく作家の「観察の思考」を、著者の視点と体験から生き生きと描き出す!(NHKEテレ「100分de名著」2022年6月放送予定「安部公房 砂の女」に講師出演決定)

 

私たちは今、パンデミックと戦争という、

まさに百年前に近い不穏な世界情勢の只中に生きている。

だからこそ第二次世界大戦後の混乱のなかで、

あらゆる予定調和の崩壊、そしてあらゆる不条理と対峙しつつも、

表現という手段を武器に毅然として生き延びてきた

安倍公房という作家の作品は強い説得力を持つ。

彼の作品を軸に思索することで、今の時代を乗り越えるための

あらゆる示唆を感受できるのではないかと思う。

(「プロローグ」より)

 

安倍公房の似顔絵。サインもそっくりに。
ヤマザキマリ画

 

壁とともに生きる―私と「安倍公房」 

目次

  プロローグ 壁とともに生きる

  イタリアで出会った『砂の女』

  「これは私のことだ」

  不条理と向き合って生きる

  パンデミックという「壁」

  価値観の画期的な変化

第1章 「自由」の壁ー『砂の女』

  二十世紀文学の古典

  ある日砂丘で行方不明

  昆虫のように生きる女

  砂漠への憧れ

  満州での少年時代

  人はなぜアイデンティティに縛られるのか?

  何者かであろうとする虚しさ

  失踪の顛末

  『砂の女』をどう読むか?

  「女」の持つ独特の恐ろしさ

  すり鉢は日本の縮図

  砂漠の中の希望

  農耕民とノマド、定住と移動、正統と異端

  ファシズムとインテリ―究極の問い

第2章 「世間」の壁ー『壁』

  詩人と画家の極貧生活

  爆発的な創作活動

  『テルマエ・ロマエ』は「魔法のチョーク」で描かれた

  型破りな「弔辞」

  壁そのものへの変形―「S・カルマ氏の犯罪」

  生きることは楽しいことか

  社会での居場所を求めて

  ドストエフスキーの衝撃

  共産主義との決別

  「家族」という不条理

  古代ギリシャ・ローマと安倍公房

  「民主主義」の黒い側面

  人間の知性や能力が必ず直面する壁

  笑いながら、同時に怖い

  リアリズムの系列

第3章 「革命」の壁ー『飢餓同盟』

  悲惨でユーモラスな風刺小説

  「革命」のパロディ

  みすぼらしい人間のにおい

  「人間メーター」

  「ひもじい野郎」たちの承認欲求

  アレゴリック・リアリズム

  コンプレックスから来る闘志

  政治そのものへの懐疑

  安倍文学の終わり方

  正気も狂気も魂の属性に過ぎない

第4章 「生存」の壁ー『けものたちは故郷をめざす』

  随一の娯楽小説

  満州体験の集大成

  名前のない男

  「残酷な光景」

  即物的な描写力

  協調せずして共生する

  日本人からの拒絶

  空腹を感じる本

  自由であることの苛酷さ

  励みと諦観の文学

第5章 「他人」の壁ー『他人の顔』

  都市の孤独な人間

  仮面を通して自分を取り戻せるか―『他人の顔』

  仮面こそが素顔だった?

  社会的偏見への反逆

  仮説と想像力

  都市という砂漠―『燃えつきた地図』

  究極の失踪―『箱男』

  バラバラに共生する社会

  奇怪な悪夢の迷宮へ―『密会』

  「弱者への愛には、いつも殺意がこめられている―」

第6章 「国家」の壁ー『方舟さくら丸』

  「方舟」の乗船切符

  互いに干渉せずに生きる難しさ

  俯瞰とディテール

  国家とミニチュア

  実存と「ゴミ」

  なぜ方舟は「さくら丸」なのか

  「壁」の外に出ることが生き延びることなのか

  晩年の作家―原始的情動の発露

  絶望も希望も虚妄

 

ヤマザキマリ
漫画家、文筆家

 

ヤマザキマリ:

漫画家・エッセイスト。1967年生まれ。17歳のときに渡伊、国立フィレンツェ・アカデミア美術学院で油絵と美術史を専攻。エジプト、シリア、ポルトガル、米国を経て各地で活動したのち、現在はイタリアと日本を拠点に置く。1997年より漫画家として活動開始、2010年、『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン)で第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。ほかの主な漫画作品に『スティーブ・ジョブズ』(講談社)、『プリニウス』(とり・みきとの共作、新潮社)など。エッセイに『ヴィオラ母さん――私を育てた破天荒な母・リョウコ』(文藝春秋)のほか、『国境のない生き方――私をつくった本と旅』(小学館新書)、『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)など多数。2022年5月、安部公房の作品論『壁とともに生きる――わたしと「安部公房」』(NHK出版新書)を刊行。2015年度芸術選奨新人賞受賞、2019年、日本の漫画家として初めてイタリア共和国星勲章・コメンダトーレを受章。東京造形大学客員教授。

 

「砂の女」

新潮文庫

昭和56年2月25日発行

平成15年3月25日53刷改版

平成29年6月5日76刷

発行所:新潮社

 

「方舟さくら丸」

純文学書き下ろし特別作品

著者:安倍公房

1984年11月15日発行

1985年1月25日4刷

発行所:新潮社

 

過去の関連記事:

山口果林の「安部公房とわたし」を読んだ!

主要参考文献にこの本の名前が挙がっているが、

ヤマザキマリは山口果林のことには言及していない。


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